|
内田裕也の「ロックがヤレルコト」。
39th New Years World RockFestival開催。・・・池野 徹
|
内田裕也が、年末に一度のロックフェスティバルをやる理由は、イロイロあるだろう。単純に歌の放送イベントNHKの紅白歌合戦をロックでぶっ飛ばすという事。日本のロックミュージックが一つのパワーで聴衆に認知させる事。ロックを目指す若者たちをバックアップする事。何よりも、裕也自身ロックに対する盲愛がある事だろう。そして、日本からロックを世界へ発信するリーダーとなる事。そんなロックへの執念的志向がここまで支えて来たのだ。ロックミュージック・ライヴイベントとしては、ギネスものの39回目を迎えたのだ。2012年には、大台の40回目に到達する。
それにしても2011年は、世界の暴君が倒されたり自滅したりして、と言うか日本にとっても空前絶後の災難の年になった。ロックフェスにとっても、裕也の片腕ジョー山中がガンで逝き、原田芳雄と、柳ジョージと出演した仲間たちがステージから消えてしまった。裕也は、その追悼を込めてロックフェスを進行させたのである。そして東日本震災被災地のロックグループを登場させた。ミュージックは、ロックは、あらゆるジャンルの歌と共に人々の心に届かせるべく動いた。「ロックがヤレルコト」は一部かもしれないが。
渋谷、浅草、新宿、下北沢と放浪して来たロックフェスも、このところ銀座は博品館で開催されている。浅草の芸人的匂いのあるところが似合う裕也のロックフェスとも云えるが、ロックも洗練されて21世紀ミュージックを目指すとしたら、日本のセンター銀座も、はまるかもしれない。1980年から、毎年恒例で写真を通しての付き合いである自分にとっては、人生の一部になってしまってる事を痛感するものである。内田裕也の芸能人的、クリエイター的、プロデューサー的、カリスマ的ロックンローラーの全てを備えた、破綻を含めて人間的面白さは、言葉に語り尽くせないが、そのロック・スピリット&フィオジカルで、2012年、ここまで来たのはまぎれもない事実である。
39thの出演者は、列強のシーナ&ロケッツ、桑名正博、白竜、カイキゲッショク。此処に安岡力也がいないのは寂しいが、ジョー山中追悼のFTBの石間秀機、篠原信彦中心の丹波博幸、永本忠、斎藤昇、樋口昌之等のRemind Joe、タップのHIDEBOH、ジャポネスクの氏神一番、上田秀一郎、炸裂のBILLY、AURA、石橋勳バンド、ME-ISM、naoshin、The DEAD P★P STARS。そしてStand Up Japanの東北からのUnder the yaku cedarそして、内田裕也とトルーマン・カポーティR&R BANDであった。世界へは、イギリス・ロンドンで、中国・上海で、アメリカ・ロサンジェルス、韓国・ソウルで20バンドの俊なロックンローラーが出演して盛り上げたのである。
1回目からの桑名正博が、ジョー山中のララバイ・オブ・ユーを熱唱、ベテラン白竜が締め、トリにシーナ&ロケッツがNo Satisfactionで会場を興奮の渦に巻き込んだ。内田裕也がジョー山中の写真を、ステージ上に置きスポットライトのもとで歌ったのは、まさに印象的なシーンだった。カウントダウンも終わり新しき年を迎え、白みかけた銀座の夜明けは、爽快なけだるさが残っていた。
|
|
ミュージカル「I Got Merman」25周年記念に乾杯!!!・・・本田浩子
|
宮本亜門の演出家デビュー作「I Got Merman」の25周年記念として上演されている、オリジナル・キャストの(写真左から)田中利花、諏訪マリー、中島啓江の舞台を観に、年が明けた1月6日、シアタークリエに足を運ぶ。実は初演時の1987年4月にたった3日間、築地ブディスト・ホールで上演された折に、大先輩の音楽・演劇評論家(故)野口久光氏にお誘い頂き、大変幸運にも今や伝説となったこの作品の誕生に出会っている。
メリー・マーティンと並んで、ブロードウェイ・ミュージカルの女王と謳われた個性的な女優エセル・マーマンの生涯を、三人の女優で描き出すという、いささか無謀にも思えるこの初演舞台を観るまでは、どうなるのか少し心配で落ち着かなかった。
1962年から5年ニューヨークに住んだ私は、週末になるとブロードウェイの劇場街に足を運ぶのが楽しみだった。ミュージカルに夢中だった私にとって、当時リンカーン・センター内の劇場でリバイバルの名作品が上演される状況もとても嬉しいことだった。そして1966年の5月末から7月初めには同劇場で「アニーよ銃をとれ(Annie Get Your Gun)」が上演された。1946年にブロードウェイで初演されたこの作品は、実在した射撃の名手アニー・オークリーをエセル・マーマンが演じて伝説的な名舞台と言われているが、そのミュージカルをエセル・マーマン主演で見られるというので、観る前からワクワク・ドキドキしていたのを昨日のことのように覚えている。ところが、舞台に出てきたマーマンは、役柄上は若い娘の筈が、たっぷりと太った中年の女性で、私自身はがっかりすると同時にとても戸惑ってしまった。一方客席は、マーマンが登場しただけで、もう場内は沸きに沸いて、そんな経験は初めてだった私は彼女の存在の大きさをそこで知ることとなった。そして、マーマンが歌い始めると、不思議なことに生き生きとした若い娘に見えてきたのには驚いた。映画のDVD或いはCD・レコード等で聞くと、独特のコブシを効かせた張りのある歌声はクセが強過ぎる感じがぬぐえないが、舞台でのそんな歌声は芝居を良く盛り上げて、リズム感抜群で圧倒的な魅力に溢れ、マーマンの再演で書き加えられた、「オールド・ファッション・ウェディング(Old Fashioned Wedding)」は、豊かな美声で知られるバリトンのブルース・ヤーネル(Bruce Yarnell) 演ずるフランク・バトラー役に、気の毒な位の迫力と魅力に満ちていて、(”Show Stopping Number” という言葉は知っていたが) 本当に拍手が鳴りやまずに舞台の進行が止まったのを初めて体験した。
5年間滞在中に数えきれないミュージカルの名舞台を観る機会に恵まれたが、エセル・マーマンの舞台は独特の魅力故に未だにありありと覚えている。それだけに、日本人の作・演出による三人の女優の競演で「エセル・マーマン」を描き切れるのか、不安と楽しみが半々だった。
しかし、そんな懸念は全くの杞憂に過ぎず、大場公之の適切かつ闊達な訳詩の力も大きく、個性的かつ実力派のミュージカル界若手の諏訪マリー、田中利花に加え元々はオペラ出身の中島啓江の三人が、我こそはマーマンと言わんばかりに、歌い踊るその舞台は活気と魅力に溢れていて、マーマンの伝説的な活躍を充分に客席に伝えていて、正に画期的で衝撃的だった。舞台が終わると、野口氏は「凄い舞台ね、三人のキャスティングが抜群で、あんなに若い青年(当時29歳)がこんな見事な舞台を作るとは、何だか口惜しい気がする。」とご自身アーティスト(美大出身の画家)だけに、感動冷めやらぬご様子だった。勿論私自身も、新しいミュージカル形態の誕生に立ち会えた喜びは大きかった。
その後、同作品は再演を重ねて、10年前にはオリジナル・キャストの他にシルビア・グラブ、浦嶋りんこ等の新しいキャスト版も上演されて話題になったが、今回は25周年とあって、オリジナル・キャスト版の他に、(写真左から) 浦嶋りんこ、シルビア・グラブ、エリアンナのファビュラス・キャスト版、加えて(写真左から) 樹里咲穂、西国原礼子、Mizのニュー・キャスト版の競演という華麗な試みに期待感は増すばかりだが、まずはオリジナル・キャストを楽しませて頂く。
舞台に25年前の色合いとデザインが殆ど変らぬ衣装の諏訪マリーが登場して歌い始めると、たちまち25年の歳月は吹き飛んでしまった。続く田中利花の衣装もミニ・スカートの丈が膝下になった位で個性的な髪型も昔と変わらず、太めの中島啓江が登場すると、もうそこは懐かしい三人の独壇場となった。歳月を考えてか、コンサート形式と聞いていたが、実際には初演時と殆ど変らぬエクサイティングな舞台になっていた。二台のピアノ演奏の一台は、25年前に編曲を担当した深沢桂子自身の演奏というのも嬉しく、三人のベテラン女優は歳月がタッチしていないかのような若さとパワーで宮本亜門入魂の演出に見事に応えて観客を魅了し、客席は手拍子が絶えない熱気に溢れていた。
こんなに素晴らしいオリジナル・キャスト版に続く、ファビュラス・キャスト版の三人、そしてニュー・キャスト版の三人は、常に新しさを求める宮本演出によってどんな舞台を繰り広げるのか、益々期待感が膨らんでくる。
まずは、オリジナル・キャストの三人に「とびきり楽しいひと時に感謝の乾杯を!!!」
写真提供:東宝
|
|
アジアの巨人・CAVが満を持して導入する2種の大型フロア型システム・・・大橋伸太郎
|
CAVは広州に本拠を構え中国国内のシネコンへ業務機の高い納入実績シェアを誇るスピーカーメーカーである。近年CAVジャパンの設計による管球式プリメインアンプが日本で好評を博しているが、中国のCAV本体が設計した家庭用大型フロア型システム二機種(DX-8/MD-Ⅵ)がこのほど日本に導入された。
CAVジャパンはパイオニアやTADで数々のスピーカーシステムやアンプの設計に携わった技術者が中枢を占める。そのCAVジャパンが自信をもって導入を決めた二機種(DX-8/MD-Ⅵ)に注目したい。
オーソドックスかつ入念な設計が素材のよさを引き出す旗艦機種DX-8
CAV家庭用システムのフラグシップDX‐8はペアで¥2,940,000。3ウェイ4スピーカーのリアバスレフ方式で、バス(25cmコーン×2 パラレル駆動)独etone(イートン)社のハニカムドライバー、ミッド(16cmコーン)とハイ(3cmドーム)にはやはり独Acutone(アキュトーン)社のセラミックコーンで構成される。板厚100mmの前面バッフルを刳り抜いて以上のユニット群を頑強に固定している。
近年の動向として音源(振動源)をフローティングマウントする手法が増えているが、本機はその逆を行くオーソドックスでリジッドな手法を採る。エンクロージャー内部は5層の補強材で剛性を上げ、内部音圧による振動の悪影響を抑止している。外装仕上げに全面ウォールナットバール(胡桃根元の木目の入り組んだ部分)の突き板を使用している。
前面バッフルの幅をバスドライバーの口径に可能な限り近づけたスリムなエンクロージャーで、しかも単純なレクタンギュラー型(箱型)でなく非常に手の込んだ面構成である。内容積を稼いで中低音を朗々と鳴らそうとしたらこういうエンクロージャー形状にはならない。もちろん回析が位相に及ぼす悪影響を排することが目的で、音質最優先の理詰めの設計から本機が生まれたことが分る。見た目の豪華さと音の量感以上に高忠実度を最優先したことが伝わってくる。
下位機のMD-Ⅵと音調は異なる。MD-Ⅵは低域を厚くたっぷりと響かせる大らかで大陸的な鳴りっぷり(後記)だが、本機は解像力豊かな中高域と節度を持った低域がバランスした端整で引き締まった澄明な音質である。余計な色付けがなく情報量も豊かである。
箱鳴りを活用せず低域の遅れと音の曇りがなくドイツ製高品位ドライバーの音の持ち味をエンクロージャーの剛体設計が素直に引き出している。
ワイドレンジと素直な帯域バランスを生かし、試聴室前方にオーケストラやコンサートグランド(ピアノ)が生々しいスケール感を伴って出現する。音場表現力もなかなかのものである。水平方向の広がり感と密度ばかりでなく前後の奥行きのデプスも十分で、聴き手を音楽に没入させるオーディオ製品としての力がある。
中国国内の一般的な嗜好に迎合せずハイエンドスピーカーシステムとしてグローバルに通用するニュートラルな高音質を目的にした製品であることが理解された。本機に関してCAVジャパンが日本の厳しいオーディオファイルの耳に適うよう時間をかけて音の詰めを行ったと聴く。オーソドックスな設計による素性のよさがこのファインチューニングでさらに引き出されている。
中国製品というと物量の利が真っ先に連想されるが、本機はそれをこれ見よがしに鳴り響かせるのでなく、逆に色付きのない高忠実度再生に昇華した製品である。一度聴く価値がある。なおDX-8は89dBと比較的能率が高いため、プリメインアンプで十分ドライブ可能だが、本機の素性のよさを引き出すため色付きの少ないハイスピードなアンプと組み合わせたい。一台119kgもあるから床を強化するかオーディオボードを併用すること。
朗々と鳴りファンの溜飲を下げさせる本格的フロア型システム MD-Ⅵ
DX-8と同時に日本に導入されたもう一つの家庭用大型フロア型システムがMD-Ⅵである。DX-8同様に日本企画ではなく、中国のCAV本体が設計した製品である。価格はペアで¥1,575,000。某雑誌社のオーディオ試聴室でMD-Ⅵの試聴を行った。一台が90.5kg!もあるので、TADのアンプ設計がパイオニアでの最後の仕事だったという長身痩躯のS氏も手を貸し同社の担当メンバーが総がかりでヨイショとセッティングする。
3ウェイ4スピーカーのバスレフ方式で、バス(20cmコーン×2 パラレル)独etonのヘキサコーン(ハニカム)ドライバー、ミッド(12cmコーン)にはスキャンスピークのやはりヘキサコーン・セラミック素材ドライバー、ハイ(2.5cmドーム)には高価な圧延ベリリウム製ドライバーを奢っている。これらのユニット群が上位機種同様に厚さ50mmの重量級ブロック形状バッフル板に深々とリジッドに固定される。
一言で表現すれば、剛体設計の正しさと物量の投入が反映され、共振を排除し切った堂々としたスケール感豊かで雄大な音である。音のにじみ、滞留がない。グリップ感が高く、波動を淀みなく正確に脈々と生み出している。帯域の広さ、特に低域の伸びと分厚さは申し分がなく、朗々と流れ出る量感は改めて「劇場育ち」を思わせる。
ピアノ音楽を再生すると試聴室前方にコンサートグランドが堂々と出現する。試聴室の天井高に余裕がなかったために、録音現場の「高さ」まで表現し切れないのが残念だが、水平方向の広がり感と密度、前後の奥行きの深さも十分で暫し時間を忘れて暫し聴き入った。音の厳しいリアリズム、高忠実性という点ではDX-8に一歩を譲る。MD-Ⅵはあくまでおおらかで外向的、DX-8は内省表現も加わったスピーカーシステムと性格付け出来よう。
中国が国土の豊かさと人件費の有利を生かした「世界の工場」であった時代は終わった。未来への確信に満ちたパワーが渦巻く大国だから生み出すことの出来る、屈折せずに朗々と歌う力強い音楽再生がここにある。アメリカや日本のスピーカーもかつてはそうでなかったか。オーディオの初心を気付かせるCAVの大型フロア型スピーカーシステム二機種との出会いであった。
[SPEC]
DX-8
■ 使用ユニット:
25cmウーファー×2、16cmセラミックコーンミッドレンジ、3cmセラミック逆ドーム型トゥイーター×1
■再生周波数特性:28Hz〜40kHz
■クロスオーバー:190Hz/2.2kHz
■出力音圧レベル:89dB
■入力インピーダンス:4Ω
■外形寸法:455W×1,375H×715Dmm
■質量:119kg(1台)
■価格:¥2,940,000(税込)
■問い合わせ先:CAVジャパン(株)
http://www.cav-japan.co.jp/product/index.php?product=dx8
MD-Ⅵ
■ 使用ユニット:
20cmウーファー×2、12cmセラミックコーンミッドレンジ、2.5cmベリリウムトゥイーター×1
■再生周波数特性:30Hz〜40kHz
■クロスオーバー:240Hz/3.2kHz
■出力音圧レベル:88dB
■入力インピーダンス:4Ω
■外形寸法:392W×1,258H×536Dmm
■質量:90.5kg
■価格:¥1,575,000(税込)
■問い合わせ先:CAVジャパン(株)
http://www.cav-japan.co.jp/product/index.php?product=md6 |
|