2010年3月 

ジミ・ヘンドリックス 奇跡のニュー・アルバム登場・・・細川真平
「ヴァリーズ・オブ・ネプチューン/ジミ・ヘンドリックス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2662)

 ジミ・ヘンドリックスの没後40周年を迎える今年。レコード会社がソニーに変わり、大規模な旧譜再発が始まるのと同時に、なんと新作もリリースとなる。
 ボックス・セット『ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス』や、エクスペリエンス・ヘンドリックス(ヘンドリックスの家族が経営する会社)が運営するダガー・レコーズからの作品などによって、彼の音源は発掘され尽くした感があったが、とんでもなかった。『ヴァリーズ・オブ・ネプチューン』は、12曲もの完全未発表スタジオ音源がから成るニュー・アルバムだ。まったく、どこにこんな音源が、こんなピカピカの状態で眠っていたのか?(ただし、2曲のみ、'87年にミッチ・ミッチェルとノエル・レディングがオーヴァーダビングを施した音源が使われている)

 中でも、タイトル・ナンバー「ヴァリーズ・オブ・ネプチューン」は、ファンの間では昔から“幻の音源”として名高いものだった。それがこうして完全な形で(しかもアルバム・タイトルにまでなって)世に出る日が来るとは思わなかった。
 もちろん、それ以外もすべてがレア中のレア音源だ。「ストーン・フリー」は、'66年12月にリリースされた、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのデビュー・シングル「ヘイ・ジョー」のB面曲だが、ここには'69年4月になってそのリメイクを試みたヴァージョンが収録されている(熱心なファンの方々は、アラン・ダグラスによって編集/オーヴァーダビングを施されたアルバム、『クラッシュ・ランディング』に収録された「ストーン・フリー・アゲイン」を思い出されるかもしれないが、それはもう忘れていただいてよさそうだ)。

 クリームのカヴァー、「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」は、ライヴで演奏していたのはもちろん知っていたが、スタジオ・ヴァージョンの存在には驚かされた。ほぼ同時期('69年2月)に録られた「レッド・ハウス」、「ファイア」、「ラヴァー・マン」も強力だ。これらは、ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴを控えたエクスペリエンスが、ロンドンに戻って来て、スタジオ入りしたときのもの。このとき、バンド内の人間関係は最悪な状態になっていたと言われているが、そんなことをいっさい思わせない演奏ぶりだ。
 明らかにまだ完成してはいなかったと思われるが、オリジナル・ナンバーの「シップス・パッシング・スルー・ザ・ナイト」、「ララバイ・フォー・ザ・サマー」も貴重だ。また、エルモア・ジェイムズのカヴァー、「ブリーディング・ハート」は、ベーシストに旧友であるビリー・コックスを迎えた、超初期の音源だ。「ヒア・マイ・トレイン・ア・カミン」はウッドストックでも演奏されたが、スタジオ・ヴァージョンが世に出るのは、もちろんこれが初めて。ジミはまだ完成にいたっていないと判断していたというが、かなりの出来映えだ。

 このように、聴きどころ満載のアルバムとなっている。上にも少し書いたように、未完成と思われる曲も交じっているため、徹頭徹尾、最高とは言わない。だが、録音されてからこれまで、約40年に渡って死蔵されていた音源集であることを思えば、これはもうほとんど奇跡的な内容だと言っていいだろう。

※下記タイトルも同時に再発となる。


「アー・ユー・エクスペリエンスト?/ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2636)
 '67年作品。記念すべきデビュー・アルバム。初期3枚のシングルA/B面を追加収録した完全盤だ。貴重なドキュメンタリーDVD付き。デジパック仕様/完全生産限定盤。

「アクシス:ボールド・アズ・ラヴ/ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2638)
 '67年作品。トータル性を重視し、表現力の幅を広げたセカンド・アルバム。貴重なドキュメンタリーDVD付き。デジパック仕様/完全生産限定盤。

「スマッシュ・ヒッツ/ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2640)
 '68年作品。ジミの生前にリリースされた唯一のベスト・アルバム。

「エレクトリック・レディランド/ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2641)
 '68年作品。ジミの代表作にして、ロック史に残る傑作。彼の自由な魂を感じてほしい。貴重なドキュメンタリーDVD付き。デジパック仕様/完全生産限定盤。

「バンド・オブ・ジプシーズ/ジミ・ヘンドリックス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2643)
 '70年作品。エスペリエンス解散後に組んだ、バンド・オブ・ジプシーズのライヴ・アルバム。ジミ生前唯一のライヴ盤にして、生前最後のリリース作。デジパック仕様/完全生産限定盤。

「ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン/ジミ・ヘンドリックス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2644)
 '97年作品。ジミがニュー・アルバムのために残した音源を、当時のエンジニア、エディ・クレイマーが彼の意図を尊重して編集。貴重なドキュメンタリーDVD付き。デジパック仕様/完全生産限定盤。

「エクスペリエンス・ヘンドリックス〜ベスト/ジミ・ヘンドリックス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2646)
 '98年作品。ジミ・ヘンドリックスの栄光の軌跡を1枚にまとめたベスト・アルバム。

ミュージカル「キャバレー」を観て・・・本田浩子
 1月13日、ミュージカル「キャバレー」を観に、日生劇場に行く。とても寒い、冬だから当然だが、風の冷たさが身に染みる。「キャバレー」は、1930年前後のドイツ・ベルリンが舞台、ヒットラー時代に入って時代そのものが冬の寒々しさの中で、退廃的な雰囲気が漂う街のキャバレー「キット・カット・クラブ」を舞台に繰り広げられるミュージカル。1966年ブロードウェイでジョン・カンダー作曲、フレッド・エブ作詞でオープン、1967年度のトニー賞で、作詞作曲賞、作品賞など8部門で受賞して、カンターとエブはブロードウェイでの評価を勝ち取り、この後、「シカゴ」「蜘蛛女のキス」「カーテンズ」などを発表したゴールデン・カップル。今では割と一般的な手法になっているが、カンダーとエブの発案でキャバレーのMC役として登場させた狂言廻しの設定は、当時としてはとても斬新で、その舞台作りも大きな話題となり、MCは当時の猥雑なベルリンの風俗から政治的世相まで皮肉ったりと舞台進行上で大きな役割を占める、重要な役どころとなった。

 ブロードウェイ初演のMC役で喝采を浴び、トニー賞助演男優賞を受賞したジョエル・グレイはその演技が認められて1972年にライザ・ミネリ主演で映画化された時に、同じくMC役として出演している。因みに、この映画作品でライザはアカデミー主演女優賞、ジョエルはアカデミー助演男優賞を受賞している。このミュージカルは1998年にブロードウェイで再々演されトニー賞ベスト再演作品賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞している。写真は98年ブロードウェイ版でコミカルに歌い踊る男性三人、真ん中は主役のMC役でトニー賞主演男優賞のアラン・カミング。

 今回の日生劇場版は小池修一郎演出で、このMC役を光GENJIlのメンバーだった諸星和己が演じ、主役の歌手サリー・ボウルズを2009年に「ドロウジー・シャペロン」でミュージカル・デビューを果たした藤原紀香が演ずるというので、どんな感じになるかと期待と不安半々で劇場に足を運んだ。このミュージカルの成功の鍵は舞台が開くと同時に登場するMCが「Willkommen, Bienvenu, Welcome! 紳士、淑女の皆様、キャバレーにようこそ!」と歌い出した瞬間に、観客をどこまで引っ張り込めるかにかかっていると思っているが、ここで諸星MCはしっかり観客を掴まえ、続いて登場の藤原サリーもキャバレーの人気歌姫になりきっていた。

 原作は、アメリカ人作家の目を通して当時のベルリンが描かれた芝居の「私はカメラ(I am a Camera)」(1951 同名映画は1955年)。ミュージカル版のサリーと恋に落ちるこのアメリカ人作家、クリフォード役を阿部力が好演、ナチスの影を体現するエルンスト役を戸井勝海が骨っぽく熱演している。

 サイド・ストーリーとなる下宿屋のマダム、元宝塚の杜けあき演ずるフローライン・シュナイダーと初老の下宿人を演ずる木場勝己のヘル・シュルツとの甘く切ないラブー・シーンは素晴らしく、ブロードウェイで1998年に再々演されトニー賞ベスト再演作品賞に輝いた時の印象的なシーンにも負けない気がした。同じく宝塚出身の高嶺ふぶきが娼婦のフロイライン・コストとして舞台にしっかりとメリハリをつけ、良いアクセントとなっていた。

 幕間(まくあい)にミュージカル「ファニー・ガール」に出演している田中利花さんに出会い、これは客席でお酒を飲みながら見たいとの話になった。そういえば、98年のリバイバル公演はその年にブロードウェイのStudio 54に移り、確か二階席で見た記憶があるが、そこには小さなテーブルのようなものがあり、幕間で買ったワインを持ち込んで、キャバレー気分を楽しみながらの観劇だったことを懐かしく思い出した。

写真提供: Cabaret 1998/Joan Marcus キャバレー/ホリプロ

ミュージカル「ウーマン・イン・ホワイト」を観て・・・本田浩子
 1月23日、久々のアンドリュー・ロイド・ウェバー作品のミュージカル「ウーマン・イン・ホワイト」を観に、青山劇場に足を運ぶ。ロイド・ウェバーと言えば、「オペラ座の怪人」「エビータ」「キャッツ」「ジーザス・クライスト・スーパースター」と数々のヒット・ミュージカル作品を送り出してきたが、この「ウーマン・イン・ホワイト」は、英国のウィルキー・コリンズの同名小説(1859)を原作にしたロイド・ウェバーの近年の作品で、2004年にロンドンで初演、続いて2005年にブロードウェイで初演されている。日本では2007年に初演され、ミュージカル「ピーターパン」で主役デビューしている笹本玲奈が、大人の女性としての主役で本作品に出演、高い評価を得て、読売演劇大賞杉村春子賞(新人賞)に輝き、その笹本玲奈主演での再演とあって、観る前から期待は高まる。

 舞台は19世紀、ヴィクトリア女王時代の英国、タイトルから何やらミステリアスな雰囲気が漂うが、舞台はタイトル以上にミステリアス。白い衣装のまるで幻のような女性、和音美桜演ずるアン・キャスリックの重い過去をめぐる物語を軸に話が進んでいく。裕福な地主の娘、笹本玲奈のマリアン・ハルカムと異母妹、大和田美帆のローラ・フェアリーの絵の家庭教師としてやってきた貧乏画家ウォルター・ハートライトを、ミュージカル「マルグリット」の主役デビューで高い評価を得たオペラ界出身の田代万里生が、白衣の女の謎に巻き込まれながら、身分違いの恋に苦しむ青年画家を熱演している。

 韓国のミュージカル界で活躍、日本でも「エリザベート」ルドルフ皇太子役で注目を集めたパク・トンハが、ローラの婚約者のパーシヴァル男爵で初めての悪役に挑戦、悪の共謀者フォスコ伯爵を数々のミュージカルで活躍を続ける岡幸二郎が陽気なイタリア人に扮して適役、この二人がいやが上にも話をしっかりと盛り上げている。そして大ベテランの光枝明彦が頑固な老人役で登場するや、いかにもヴィクトリア時代を感じさせ舞台を見事に引き締めている。

 ミュージカルは何といっても楽曲の良さ、そして演者の力量にそのすべてがかかっているが、今回の舞台はその全てをクリアしていて、殺人まであって暗いストーリーながら、満足度の高い舞台に仕上がっている。窮地に追い込まれた笹本玲奈マリアン、大和田美帆ローラ、和音美桜アンの三人が、力を合わせて立ち上がろうと歌う「今日から三人」は観客の涙を誘う。

 メリハリの利いた演出は松本祐子、そして音楽監督・指揮はその華やかで楽しい指揮でいつも舞台を盛り上げる塩田明弘、おまけに主役級の佐山陽規がコーラスの一員としてしっかりと支えているという贅沢なミュージカルを満喫しての一夜だった。

写真提供: ホリプロ

ミュージカル「蜘蛛女のキス」再演!・・・本田浩子
 1月26日、ミュージカル「蜘蛛女のキス」を観に、東京芸術劇場に向かう。ミュージカル「シカゴ」「キャバレー」の作詞・作曲家コンビのフレッド・エッブとジョン・カンダーの作品で、ラテン・アメリカの作家マヌエル・ブイグのいささかカルト的なベスト・セラー小説が原作なだけに、舞台は現実と幻想の世界をいったりきたりと煩雑な面があるが、観る者を引っ張る力も大きい作品。1992年にトロント発、ロンドンで初演され、1993年にはブロードウェイでオープン、同年のトニー賞で作品賞はじめ7部門で受賞している

 今回も2007年に日本で初演された時の荻田浩一氏の演出で好評だった、ゲイのモリーナ役の石井一孝と政治犯のヴァレンティン役の浦井健治というキャスティングに加え、モリーナが彼女のようになりたいと憧れ続ける銀幕のスター、オーロラを韓国出身の歌唱力抜群の金志賢(キム・ジーヒョン)が演ずるというので、観る前から期待は大きく、早々に劇場入りして、プログラムに目を通す。

 舞台は南米のどこかの国、わいせつ罪で刑務所に捕まっている石井モリーナが登場するが、発散する雰囲気はすっかり女性になりきっている。ついこの間、同じ芸術劇場でミュージカル「オペラ・ド・マランドロ(ならず者のオペラ)」で、ならず者の首領マックス(別所哲也)と渡り合う凄腕の刑事タイガー(写真参照)を演じた当人とはとても思えない。そんなモリーナの独房に政治犯の浦井ヴァレンティンが連れて来られる。かなり痛めつけられた様子のヴァレンティンに母性本能?を発揮したモリーナは世話を焼くが、気持ち悪がられすっかり嫌われるが、モリーナはおかまいなく、彼の憧れの映画スター、オーロラの話を始め、落ち込んでいるヴァレンティンを慰めようとする。モリーナがオーロラの話を始めると、その度に牢獄内に派手な衣装のオーロラが現れるが、金志賢の存在感は予想以上で、オーラを舞台一杯に溢れさせ、モリーナの幻想を視覚的にしっかりと印象づけ。蜘蛛女の衣装で現れた時は、モリーナが「あの時のオーロラは怖かった」と言う通り、妖艶さも加わり見事としかいいようがない。世の中に怒りをぶつけるヴァレンティンを浦井健治は全身全霊で演じきって素晴らしく、常に世間から差別されているモリーナと友情が育つのも自然で、観る者の胸を打つ。

 ヴァレンティンの恋人を宝塚出身の朝澄けいが清楚に演じ、「ベルサイユのばら」で初代マリー・アントワネットを演じ、近年は「エリザベート」のゾフィー皇太后役で知られる初風諄がモリーナの母親役を好演、彼女の歌う「あなたは私を辱めはしない(You Could Never Shame Me)」と愛する息子を思って歌う一曲は思わず涙を誘う。
名倉加代子、平山素子の振付も牢獄の荒れるシーン、そしてオーロラの出現する幻想シーンを見事に表現していて、刑務所長役の今井朋彦はじめ縄田晋、辻本知彦ら男性陣が舞台を盛り上げている。現実と幻想と入り組んだストーリーながら、演出の切れの良さに支えられて、見応えのある舞台だった。

写真: 蜘蛛女のキス/出合コウ介

ミュージカル「コエラカントゥス」初演!・・・ 本田浩子
 2月6日、ミュージカル「コエラカントゥス」初演を、シアター・サンモールで観る機会に恵まれた。作、演出、音楽を全て担う浅井さやか率いるオリジナル・ミュージカル劇団One on One による新作とチラシにあるので、ブロードウェイ・ミュージカルとはひと味違った魅力があるかもしれないと新宿に向かう。

 劇場の明かりが落ちると、海の底を思わせるような音楽が流れ、舞台には海中で黒装束の人々と波にもまれる男が浮かぶ。場面は変わり、かつて世界を脅かして20年前に沈み、引き上げられた海賊船コエラカントゥス号の傍に学者と海から助けられた青年がいる。二人は残虐非道で無敵だった海賊船が何故沈んでしまったのか、その謎解きに挑戦していく。

 20年前のコエラカントゥス号は、心温かな先代船長ライズ(岩崎雄一)の後を継いだ女船長ユーリ(黒瀬千鶴子)が海賊達を束ねていた。世間の噂とはまるで違い、この海賊船はむやみに人を殺めない、苦しんでいる者は無条件で助けるなど変わった掟を守る集団で、他の海賊船に痛めつけられた人を助けたり、漂流者を救ったりしながら、何にも縛られない自由を謳歌する集団だった。

 そんな彼らだったが、漂流する青年カイリ(内藤大希)に続いて、国の士官シオン(小野賢章)とその部下の女性、カグラ(荻野恵理)を助けたことから、とんでもない事件に巻き込まれていく。以前コエラカントゥス号に助けられ、医師として仲間になっているアオイ(武津美奈子)の口から国が開発した化学兵器となるウィルスがあって、それを根絶やしにしなければとんでもないことになると分かる。

 海賊達はそのウィルスを奪って大勢の人々を救おうと、ユーリ船長の指揮で実験所のある島に向かう。いささか破天荒なストーリーだが、船のセットも照明も良く、何より出演者全員の熱気が舞台に溢れ、曲も良い上に、演者全員の歌唱力も見事で、いつの間にか引き込まれて海賊の一人になった気分。

 どの歌の歌詞にも作者の思い、海賊らしく海の上にこそ自由があると言いながら、世の中から戦いがなくなって欲しい、慈しみあう思いやりが大事というメッセージが自然体で流れていて心地よい。コックのトーヤ(大津裕哉)が歌う「おいしいと言って笑ってほしい」は、死に行く恋人に歌うだけに切ないラブソングに仕上がり、胸を打つ。海賊の仲間、井村タカオ、田宮華苗、土倉有貴、美木マサオ、梶雅人、本橋徹郎他の若い団員達全員、本と作詞、作曲、演出を一人で手がけた浅井さやかと「熱い男の話をやりたい」という彼女の熱い夢をかなえたプロデューサーの下泉さやかに惜しみない拍手!!!

写真提供: ネルケプランニング

ケンウッド・トワイライトイベント MPCJスペシャル VOL.9
新世代ジャズ・シンガー 彩花―iroha―スペシャル・・・三塚 博

 2月18日(木)のショールームは、連日の厳しい寒さを吹き飛ばすようなホットな雰囲気に包まれた。Mike Koshitaniの第一声で、彩花-iroha-が登場。オープニングに彼女が選んだのは「You've Got A Friend」。キャロル・キングのまったりとした歌唱とは対照的で、ジャズ風な装いの軽快でスピード感のある曲仕立てだ。2曲目が「Moon Dance」、ヴァン・モリソンのナンバーで、マイケル・ブーブレなど最近の歌手が好んでとりあげる楽曲のひとつだ。のっけから“新世代ジャズ・シンガー”を髣髴させる。

 京都出身の彩花-iroha-は、高校時代クラブ活動でソウル・ミュージックやR&B、ヒップホップ・ダンスを楽しむ、いまどきの普通の女の子。日ごろ慣れ親しんでいる音楽のルーツを求めて行ったらジャズにたどり着いたという。もっぱらエラ・フィッツジェラルドやダイアン・リーヴスを好んで聴いていたが、これからはマドンナやビヨンセといったポップスの王道を行くアーティストにも触れたいと意欲的に語った。

 3曲目に選んだのが「Rehab」。エイミー・ワインハウスが歌って第50回グラミー賞最優秀楽曲賞を受賞したナンバーだ。ショールームという彼女にとって、おそらくはいつもとは違う雰囲気に、最初の1〜2曲目では戸惑いもあったのではないかと思われたが、このあたりから彼女らしい“ノリ”で、会場の外にまで溢れた観客を歌で巻き込んでゆく。4曲目の「Smooth」は彼女のオリジナルでソングライターとしての片鱗も感じさせてくれた。

 『Simple』『Dear Souls』と1年間に2枚のアルバムを立て続けに発表するという制作意欲旺盛な彼女は、いま乗りにのっている女性歌手のひとりといってよいだろう。トーク・ゲストとしてプログラムの中盤に登場した岩浪洋三さんは彼女のよき理解者だ。スイングジャール誌ジャズディスク大賞選考委員長を務める岩浪さんは「不景気な世の中、暗い世相を吹き飛ばすパンチの効いた歌唱が求められていますけれど、彼女はまさにそれを持っていますね。今回のディスク大賞では『Dear Souls』が最優秀録音賞を受賞したけれど、ぼくはね、ジャズ・ヴォーカル賞の候補にしろと言ったんですよ。録音賞の受賞は大変結構な事で、そりゃ〜レコード会社は喜ぶでしょうよ。でも歌手にとってはヴォーカル賞が一番でしょ」と意気軒昂。さらに「現代の歌からジャズ・ソングまで自然に抵抗なく選ぶ。ジャズだからR&Bだからロックだから、ということではない。新しいジャズ・シンガーの形がここにある」と賛辞を贈った。

 スタンダード曲の「Misty」を情感たっぷりに歌い上げた後の「It's Your World」では、飛び入りで、Soil and Pimp Sessionsのアルト奏者、元晴がステージに登場。打ち合わせもないままに、掛け合いでエネルギッシュなアルト・プレイを聞かせてくれた。会場の熱気も上がり、アンコールは彼女のアカペラで「What a Wonderful World」(ここでも元晴がジョイント)。最後に「I Am Free」(NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのテーマ曲)で締めくくった。

 オリジナル楽曲が6〜7曲ほど書きためてあるので、次回作はオリジナル中心のアルバムに挑戦したいという。irohaもみじの色づくころ彼女のさらに成長した姿に会えることを期待したい。



写真:轟 美津子

=MPCJ会員からの声=(アイウエオ順)

今回のMPCJスペシャルは、アルバム・レコーディング時に比べ一段と上手くなったと岩浪洋三氏も絶賛した彩花のライヴに加え、岩浪氏の鋭い質問に彩花が答える形となった大変興味深い対談。圧巻だったのは彩花とソイル&ピンプ・セッションズのアルトサックス・プレーヤー元晴君のサプライズとなったセッション。とても内容の濃い、大満足のイベントとなった。(上田 和秀)

国籍など関係ない若手アーティストが次々に現れとても楽しい。彩花さんもその一人。16歳からクラブを中心に活動していたそうで、今という時代のフレーバーが身体中からあふれ出ている。ジャズ、ソウル、R&Bなどの区別は彼女にとって無意味なようで、キャロル・キングの「You've Got A Friend」もエイミー・ワインハウスの「Rehab」も彩花の音として聞かせてくれる。岩波さんも旨くなっているとほめていらした。彼女のような実力のあるアーティストにもっと売れてもらいたい。公式ホームページも面白く、彼女のレパートリーを見てみるのも興味深い。  http://www.iroha168.net/  (鈴木 修一)

相変わらず満員の盛況、聴衆は≪ジャズ・シンガー≫に魅かれたのか中年の男性が多かった。乗りの良いこの人の歌は、酒の入った所で聴く方がより盛り上がるだろう。岩浪さんのインタビューも楽しかった。次の作品は、オリジナル楽曲を考えていると言っていたが、正解かもしれない。ジャズに拘泥せずに彼女自身の特性を生かした方向に行くのが良いのではという感じがした。(高田敬 三)

若さの中に、成熟が仄見えている……そんな印象を持った。ジャズ・スタンダードのみにこだわらず、ポピュラー・ソングやオリジナルをどんどんやっていく姿勢を応援したい。もっとR&Bっぽくなってもかまわないと思う。彼女なら、何をやっても「これが彩花流ジャズだ」と言い張れるはずだ。(細川 真平)

ジャズ・シンガーの彩花-iroha-の魂のこもった歌声とファンキーなパフォーマンスは、とてもクラブ&ディスコ寄りで親近感を抱きました。その理由は「昔は、よく(踊る方の)クラブに行ってました」と、いう彼女の告白で判明。岩浪洋三さんも絶賛の丸の内の≪夜のひと時≫、終演後は無性にビールが飲みたくなりました。(松本 みつぐ)



アルバム「Dear Souls/彩花」(ティートックレコーズ)

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