2014年2月 

  

Popular ALBUM Review


「バック・トゥ・ブルックリン/バーブラ・ストライサンド」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-30429)
 ショウビズ界の女王バーブラが、6年ぶりにツアーを行った。生れ故郷でもあり、彼女の原点でもある町に立ち戻っての『バック・トゥ・ブルックリン』。昨年10月、バークレー・センターでのライヴだ。私はカナダ公演をみた。子供時代から初期の映像もふんだんに出てくるが、アット・ホームな雰囲気で、70歳の女王は美しく、衰えを知らぬ歌声は素晴らしい。初期の彼女は演劇的な曲の解釈と表現が特徴だったが、今回はドラマチックな演唱が目立つている。朋友マーヴィン・ハムリッシュ、ジュール・シュタインといった名作曲家へのトリビュート・コーナーでの「追憶」「パレードに雨は降らさないで」などが特に見事。説得力にみちた演唱だ。ゲストの人気トランペッター、クリス・ボッティも好演で、10代のイタリアン・ボーイ3人組イル・ヴォッロの伸びやかなテノールも瑞々しい。一人息子ジェイソン・グールドもバーブラに似た魅力的な歌声を聞かせる。日本ではCDだけでDVD付きは輸入盤のみだが、おしゃべりにものぞくバーブラの前向きな姿勢ともども、聴き応え、魅力満載で、ファンは聞き逃せない。(鈴木道子)


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「スピーク・ア・リトル・ラウダー/ダイアン・バーチ」(ワーナーミュージック・ジャパン:WPCR-14967)
 5年前にデビュー。当ペンクラブ主催の音楽賞で「新人賞」を獲得した若手の実力派シンガー・ソング・ライター。世代を超えてファン層を広げて来たダイアンが満を持して発表したセカンド・アルバムはR&Bっぽいキャロル・キングといった印象もあった前作とはガラリと趣を変えて別世界に足を踏み入れたような。サウンド自体もアコースティックな響きから厚みのあるエレクトリックなものになり、曲調も変わった。コスチュームも大胆にチェンジ。26歳だった彼女も31歳になったが、見方を変えればヴィンテージな感触から逆に'若々しく'なったようにも感じる。そんな中で日本盤のボーナス曲の一つである12曲目「PUSH」の極上のキャッチーさがひときわ映える(これ最高にポップ♪)。3月下旬に2度目の来日公演がビルボードライブ(東京、大阪)で。絶対、観に行く♪(上柴とおる)


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「青春のゴールデンポップス〜17才の頃」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-3942〜3)
 時代も変わって近年はもうこの類の'オールディーズ・オムニバス'を見かけなくなったなぁと思っていたら。。。タイトルも選曲もいわばベタそのもの(ただし2枚組全40曲で2625円とお得)。ジャニス・イアンの「17才の頃」(1975年:米3位)が昨年ソフトバンクのCMに使われたのを機に企画されたとのことで原題に'GOLDEN POPS IN SHOWA 40S'とあるように「昭和40年代、日本で流行した洋楽ヒット全集!」が趣旨なれど30年代や50年代に掛かる楽曲が6曲もあるし(主題曲「17才の頃」からして昭和50年)、ボブ・ディランの「天国への扉」やシルヴィ・バルタンの「恋はみずいろ」といった「なんでこの曲?」なものも含まれてはいるが(重箱の隅つつきが好きなもので♪)、このジャケットとリマスタリングされた音質の良さが好印象。普段CDなどもう買わなくなったような昭和40年代当時の一般的な洋楽リスナー(今、50代〜60代)の方々への贈答品としてもいけるかと。(上柴とおる)


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「A Group Called Smith/Minus-Plus/SMITH」(BSMF RECORDS:BSMF-7506)
 1960年代後期に登場したエモーショナルな女性ロック・シンガーとして、ジャニス・ジョプリンやグレース・スリック(ジェファーソン・エアプレイン)だけではなく、5人組スミスの紅一点ゲイル・マコーミックも是非、改めて評価してもらいたい(いや、するべきだ)。悲しいかな、日本ではその名前すら上がらないのはCD化も為されていないせいか?「ベイビー・イッツ・ユー」(1969年:米5位)は当時こちらでもかなりオン・エアされてもいたのだが、所属のダンヒル・レーベルのポップなイメージもあってか真っ当に扱われていなかったように思う。アルバムを聴けば一目(一耳?)瞭然。ストーンズやゾンビーズ、そしてR&B等のカヴァーをパンチのある歌唱で歌い上げるゲイルにはもう、惚れ惚れするしかない♪おまけにブロンドの美女(実はこれがかえってアダに?)。今回、帯付きで国内配給されることになった2in1のCDを契機に少しでも彼女の存在に気づいてもらえればと切に願う。(上柴とおる)


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「サイドウェイズ/ローレン・デスバーグ」(P-Vine RECORDS:PCD-17657)
 柔らかな声質はとても耳に心地よい。LA生まれ、バークリー音楽院卒業後はNYCを中心に活動しているジャズ・ヴォーカルの新人だ。20歳そこそこの若さ、今後の活躍ぶりには大いに期待が持てる。正統的なジャズ・ヴォーカル・スタイルを消化しつつも、どことなくポップス的な香りのある歌唱にはコンテンポラリー感が漂う。プロデューサーのグレチェン・パーラトに少なからぬ影響を受けていることは明らかだ。「You Go To My Head」「Spring Is Here」など地味な選曲のようにも思えるのだがバックアップ・メンバーの職人的な技を得て、グルーヴ感たっぷりな仕上がりになっている。本作は5曲入りEP盤だが年内にはアルバムも発売されるという。(三塚 博)


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「ふたりのボサ・ノヴァ〜ビートルズ・ノヴァ/Grazyna Auguscik & Paulinho Garcia」(MUZAK:MZCF-1282)
 シカゴ在住のブラジル出身、ポリ—ニョ・ガルシア(vo,g,perc)とポーランド出身のグラジエーナ・アウグスチク(vo)に曲により、サックス、パーカッション、ベースが加わるこの作品、よく聞きなれたビートルズ・ナンバーをポリーニョのブランジリアン・ティストのアレンジで歌う心地良く親しみやすいアルバムだ。シカゴ・トリビューンで「シカゴの宝」と云われたブラジル音楽の権威、ポリーニョとアヴァンギャルドからボサ・ノヴァまで幅広く活躍のグラジエーナの既に25年に亘る個性的な二人のコンビネーションは、通常のビートルズ・カヴァー集とは一味違う素晴らしい作品を生み出した。(高田敬三)


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「マリア・シュナイダー・オーケストラ」 12月17日 ブルーノート東京
 ようやく実現した前回の初来日公演が大きな反響を呼んだ現代最高峰のジャズ・ビッグバンドが、1年ぶりに東京へ帰ってきた。今春リリースしたソプラノ歌手ドーン・アップショウとの共同名義作が、グラミー賞クラシック部門ノミネートの吉報が届いたばかりのタイミングだ。「マジカルで雄大で美しい」を特徴とするマリア・サウンドの秘密は、当夜も随所で発見できた。オープニング曲の「コンサート・イン・ザ・ガーデン」は、4人のみの静かな演奏で始まり、徐々に色を加えてゆく編曲。また来年レコーディング予定の新作からの「ホーム」は、ピアノ&アコーディオンのデュオを皮切りに、テナーサックスが最後までソロを務める構成で、ビッグバンドのセオリーにとらわれていないのが、感動を呼ぶオリジナリティの源なのだと体感。初期曲「グンバ・ブルー」は躍動感に溢れ、マイク・ロドリゲス(tp)とマーシャル・ジルキス(tb)も好演。異例に多くのプロ・ミュージシャンが来場したことを含めて、音楽に対する感度の高い人々を魅了するステージだった。(杉田宏樹)
撮影:Yuka Yamaji


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「PASSPO☆ First Class Flight」 12月28日 SHIBUYA-AX
 果たしてアイドル・グループと形容していいのだろうか、と思うほどロックなのが今のPASSPO☆だ。彼女たちのライヴはバック・トラック(カラオケ)を使ったものと生バンド“THE GROUND CREW”を従えたものに分かれるが、この日の第二部は後者、つまりFirst Class Flight仕様のステージ。いつもはツイン・ギターだが、この日はトリプル・ギターでさらにサウンドが分厚くなり、ベースやドラムスの響きも骨太で、しかも爆音だ。これほどの音圧をバックに8ビート・ナンバーを次々と歌い踊るためには並外れたスタミナが必要なはず。しかしPASSPO☆の面々は最後までバテずに荒々しいユニゾン、シャウト満載のソロ・パート、鮮やかなフォーメーション・ダンスで3時間近くを駆け抜けた。途中、寸劇「ダムダム物語〜final〜」では頭上に巨大な金だらいが落ちるという、往年のドリフターズへのリスペクトを感じさせる場面も登場した。3月には新曲発売、さらにグループを“バンド化”する(つまり、メンバーの何人かが楽器を演奏するようになる)PASSPO☆。今後の彼女たちはさらにアイドル、ロック双方のかっこよさを究めていくことだろう。(原田和典)


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「Hello! Project 2014 WINTER 〜DE-HA MiX〜/〜GOiSU MODE〜」 1月5日 中野サンプラザ
 モーニング娘。'14、Berryz工房、℃-ute、スマイレージ、Juice=Juice、ハロプロ研修生らが一同に会する大イベント、通称ハロコンが今年も開催された。〜DE-HA MiX〜は各グループの選抜メンバーの共演セッションやソロ曲を中心としたステージ。個人的には嗣永桃子の「通学ベクトル」、竹内朱莉「愛の弾丸」に感銘を受けた。後半はモー娘。「笑顔の君は太陽さ」、J=J「初めてを経験中」、℃「愛ってもっと斬新」などの近作が次々と登場。ベリは2月発売の「1億3千万総ダイエット王国」をいち早く披露し、どこかマイルス・デイヴィス『ビッチェズ・ブリュー』を髣髴とさせる音世界で観客を唖然とさせた。〜GOiSU MODE〜は各ユニットの魅力をたっぷり味わってもらおうという内容。その間に中島早貴「笑顔に涙〜THANK YOU! DEAR MY FRIENDS〜」、道重さゆみ「My Days for You」など、この日この場所でしか聴けないソロ・ナンバーが入る。もちろんいうまでもなくすべてが生歌、しかも振り付けがすこぶるリズミカルでかっこいい。アイドル界にはさまざまな“派”がある。が、ハロプロとそれに関連する面々、たとえばアップアップガールズ(仮)などに僕は最もプロフェッショナリズムを感じる。エンタテインメントにかける気合いと根性が、あまりにも圧倒的なのだ。(原田和典)


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「エドマール・カスタネーダ&ゴンサロ・ルバルカバ」 1月12日 ブルーノート東京
 エドマール・カスタネーダは1978年コロンビア出身のアルパ(南米のハープ)奏者。楽器の形状はいわゆるハープよりかなり小型で、椅子に座らずに立ち、楽器を手前に引き寄せるように弾く。音程を調整する部分(ギターやベースではペグにあたる)は楽器の上部についている。エフェクターやアンプも用いるが、元の音がわからなくなるほど加工することはない。今回の来日は、2012年のアルバム『ダブル・ポーション』でも共演したゴンサロ・ルバルカバとのステージ。ゴンサロについて説明は不要だろう。キューバが生んだ超絶技巧のベテラン・ピアニストだ。エドマールは右手でメロディを奏でながら、左手ではもっぱらベース・ラインを弾く。楽器の構造上、コード進行の細かいナンバーは演奏しないようだが、ゆるやかなコードの上を漂う音色には心安らぐものがある。ラストにはアストル・ピアソラの「リベルタンゴ」を演奏。エドマール、ゴンサロ双方の気迫がぶつかりあう圧巻の出来となった。(原田和典)
撮影:Takuo Sato


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「Frankie Valli & The Four Seasons Japan Tour 2013[振替公演]」 1月18日 日比谷公会堂
 ビートルズ以前の1960年代初期から70年代末まで、ドゥワップ・スタイルやソフト・ロック、バラードなどのヒットを続出したフランキー・ヴァリ&ザ・フォーシーズンズ。『ジャージー・ボーイズ』としてミュージカル化され、間もなく映画化もされる。ヴァリはいま現在79歳。これが最初で最後の来日公演になるとの思いから駆け付けた熱烈なオールド・ファンで日比谷公会堂は超満員だった。No.1ヒット「グリース」、「悲しき朝焼け」と歌いだしたが、PAの未調整もあり、ホーン・セクションとパーカッションが強く、肝心の歌声がよく聞こえない。小柄な往年のスターは、もう懐かしいだけの存在かと思われたくらいだったが、それからが本番。声もよく出て、中段の「ステイ」からは「シェリー」はじめヒット・メドレーなどトレードマークのファルセット・ヴォイスも健在ふりを発揮し、会場は大喜びだ。若手で揃えたフォー・シーズンズは、振りも昔の動きでバックを務める。バラード、ロックン・ロールと緩急の配列もよく、いずれも懐メロ。会場全体で唱和する曲もあり、60年代にタイムスリップしたような1時間45分。皆「よかった」「楽しかった」を連発しながら家路についた。それにしてもトニー・ベネットを筆頭に、ポール・マッカートニーや70代、80代の大スターたちの健在ぶりは、近頃の若手を凌ぐものがある。(鈴木道子)
撮影:Michiko Yamamoto


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「ボブ・ディラン」
 日本のファンのみに与えられた神様ボブ・ディランからの贈り物は、ライヴハウスのみの日本限定特別公演だ。1962年のデビュー以来生きる伝説として、数々の名曲・名盤を世に送り出し、活動全てに全世界が注目してきたボブ・ディランが、4年振りに約1ヶ月14公演に及ぶジャパン・ツアーを行う。時代・世代を超えるだけに留まらず、ノーベル文学賞候補になるなど音楽の世界も飛び越えたディランの奇跡のライヴを経験せずに、音楽を語ることなかれ!!!(UK)

* 3月31日、4月1、3、4、7、8日 Zepp DiverCity
* 4月13、14日 Zepp Sapporo
* 4月1、18日 Zepp Nagoya
* 4月19日 Zepp Fukuoka
* 4月21、22、23日 Zepp Namba
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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「ブライアン・セッツァー・オーケストラ」
 スウィング・ロックの頂点ブライアン・セッツァー・オーケストラの5年振りとなる日本公演が決定した。80年代にネオ・ロカビリー・ブームの代表である伝説のバンド、ストレイ・キャッツのメンバーとしてヒット曲を量産しただけでなく、ギタリストとしても高い評価を得たブライアン・セッツァーが率いるオーケストラのライヴは、迫力満点で心からファンを楽しませてくれるものだ。さあ、ロックンロールで盛り上がろう!!!(UK)

* 5月12日 なんばHatch
* 5月13日 広島アステールプラザ大ホール
* 5月15日 名古屋市公会堂
* 5月16、19、20日 渋谷公会堂
* 5月22日 東京エレクトロンホール宮城
* 5月24日 ニトリ文化ホール
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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