2012年12月 

 
Popular ALBUM Review

「クローズ・アップVol.3:ステイツ・オブ・ビーイング/スザンヌ・ヴェガ」
「クローズ・アップVol.4:ソングス・オブ・ファミリー/スザンヌ・ヴェガ」(インペリアル:TECI-26674〜5)
 デビュー25周年を期し過去の作品をテーマごとに仕分けをしてアコースティックなサウンド・スタイルでセルフ・リメイクをする企画も最新作のVol.4の発売で当初の目的を完遂。日本ではVol.3とのカップリングで限定2枚組スペシャル盤(¥2780)となったがVol.3には新曲(自ら主演したミュージカルの劇中歌)、そしてVol.4にも新曲に加えて未発表作が2曲。これはスザンヌがまだ10代の頃に書いていた作品で何とも瑞々しい。早くから才能の芽生えが見られたことを伺わせる'原点'の少女時代にまで遡ったところでこのシリーズが完結したというのは1985年のデビュー以降のスザンヌの魅力を再認識する上で意義深いものになったと思う。(上柴とおる

Popular ALBUM Review


「SASSAFRAS & MOONSHINE the songs of LAURA NYRO」(輸入盤/ace:CDCHD-1336)
 ピーター・ゴールウェイが1997年に制作したのは多彩な女性歌手がローラの楽曲を歌った追悼のオムニバス盤だったが今回の盤はこれまでに歌われたローラ作品のカヴァー曲集。フィフス・ディメンションやテルマ・ヒューストンなどでヒットしたお馴染みの曲もあるがステイプル・シンガーズが歌った「ストーンド・ソウル・ピクニック」やブロッサムズの「ストーニー・エンド」(1967年。これが最初?)、ボビー・ジェントリーの「ウェディング・ベル・ブルース」やフレンズ・オブ・ディスティンクションの「イーライズ・カミン」など普段(?)はなかなか聴く機会のないちょっと踏み込んだセレクションでなかなかに新鮮。中でもミュージカル女優のジュディ・キューンが2007年に出したローラの作品集からの「ブラックパッチ」が聴きもの。(上柴とおる)


Popular ALBUM Review

「GOLDEN☆BEST 伊藤銀次〜40th Anniversary Edition」(ソニー・ミュージック:MHCL-2177〜8)
 1972年に「留子ちゃんたら」(今回収録)で知られるグループ、ごまのはえでデビューした伊藤銀次の40周年記念2枚組。アルバム「ナイアガラ・トライアングルVol.1」(日本コロムビア)〜初ソロ・アルバム「Deadly Drive」(ワーナー・パイオニア)〜ポリスター時代のアルバム〜東芝EMI時代のアルバムとレーベルを超越した多くの音源から主要な楽曲をセレクト(選曲・監修:伊藤銀次&土橋一夫)。さらにボーナスとしてテレビ番組「笑っていいとも!」のテーマ曲「ウキウキWATCHING」(作/編曲:伊藤銀次)の作者ヴァージョン(新録音)や竹内まりやの「Crying All Night Long」(1981年/作曲:伊藤銀次)を銀次が黒沢秀樹(元L⇔R)と組んで活動中のユニット、uncle-jamで収録するなど魅力的なメロディ・メーカー、伊藤銀次のまさに通史ともいえる決定盤。(上柴とおる)

Popular DVD Review

DVD

Blu-ray

「ライヴ・キス2012/ポール・マッカートニー」(ヤマハ・ミュージック&ビジュアルス:YMBA−10373[DVD]、YMXB-10374[Blu-ray])
 ロックスターがスタンダード・ナンバーに挑戦する例は少なくない。いいノドを聞かせ、フルオーケストラで歌うことが殆どだ。ポール・マッカートニーも遂にスタンダード・アルバムを出した。そのDVDだ。一般とは異なり、ダイアナ・クラール、ジョン・ピザレリはじめ有名ジャズ・ミュージシャンと組んで、飄々とした味わいの軽妙な歌を聞かせている。私はポール・ファンではないので、初めはたいしてうまくないじゃないと思ったが、次第に引き込まれていく過程も面白かった。彼が謙虚で優しい人柄であることもにじみ出る。スタジオ風景とインタヴューで構成されているが、1曲1曲丁寧に見せているのもいい。ポールは制作に当たり、トミー・リピューマに相談し、ダイアナが要となっていることも知れた。子供の頃からなじんできた歌に加え、初めての隠れた名曲にも挑戦していて楽しめる。(鈴木道子)

Popular CONCERT Review

「ボニー・J・ジェンセン&グラハム・ジェッシ」 10月9日 東京TUC
 ニュージーランド出身、オーストラリアで活躍するボニー・ジェンセンは、CD「ブルー・ジョイ」が日本でも出ていて来日は5度目になる。今回、モンゴルのジャズ・フェスティバルにテナーとフルートのグラハム・ジェッシと出演した帰りに日本に立ち寄った折に彼女を聴く会が催された。ピアノの弾き語りをする彼女にグラハムがテナーとフルートで絡んで行くユニークなステージ。ファースト・セットは、コール・ポーターの「All Of You」から始まり、グラハムのアルト・フルートで歌う彼女の自作の「Tokyo Skies」、「The Sapphire Tree」を交えて10曲。少し重くなるボサ・ノヴァ・ナンバーよりオリジナルに彼女の真価が感じられた。又、「You Stepped Out Of My Dream」の彼女のピアノは、印象的だった。セカンド・セットは、「Teach Me Tonight」から始まりスペイン語と英語で歌う「Besame Mucho」等11曲。最後の自作曲「Without A Word」は、彼女が3.11の大震災の報を聞いて日本の友を想って打ち拉がれた気持ちで書き上げたという。家族がNZのクライストチャーチの地震の被害にあっているという彼女の感情の籠った素晴らしい歌だった。アンコールは、「No More Blues」をポルトガル語と英語で歌った。気持ちの通じ合った二人の良いコンビネーションによる素晴らしいライヴだった。(高田敬三)
撮影:松岡ゆかり


Popular CONCERT Review

「アバ-ジャズ」 10月17日 ビルボードライブ東京
 スウェーデン・ポップス史上、最も世界的な成功を収めたABBAのジャズ・カヴァー集をリリースしたばかりのトリオが来日。同国のアンデッシュ・ヴィーク(p)、スヴァンテ・ヘンリソン(b)と、フュージョン・ドラムの第一人者であるスティーヴ・ガッドの合体は、一見企画物のイメージが強い。しかし同作のガッドがお仕事モードではなく、本気度が伝わってきたこともあって、ライヴにも期待が高まっていた。そしてガッドの好演は期待を裏切らなかった。「ダンシング・クイーン」ではヴィークが故リチャード・ティーを想起させるプレイで、ガッドとの抜群の相性をアピール。管弦楽団の首席コントラバス奏者でもあるヘンリソンのチェロ演奏曲では、日本では無名ながら実力者ぶりを明らかに。ポップス界でも経験豊富なガッドの、楽しげな姿が印象的だった。(杉田宏樹)
撮影:Masanori Naruse


Popular CONCERT Review

「さくら学院祭☆2012」 10月28日 恵比寿ガーデンホール
 さくら学院はメ成長期限定ユニットモを標榜するガール・グループ。2010年に結成され、現在までシングル5作、アルバム2作を発表している。この日のステージは5月に横浜で行なわれた単独ライヴ「さくら学院 2012年度 転入式」以来、久々の大規模なもの。そのときファンの前で初めて紹介された野津友那乃、大賀咲希、杉本愛莉鈴も現在ではすっかり板につき、2代目生徒会長に就任した中元すず香、生徒会副会長の堀内まり菜、生徒会副々会長の飯田來麗も貫禄すら感じさせるパフォーマンスを届けてくれたのだから、本当にこの年代の成長の速さには目を見張るしかない。昼夜二回公演のうち、僕は昼の部を見たのだが、さくら学院本体による最新ナンバー「WONDERFUL JOURNEY」、不朽の名曲「FRIENDS」等に加え、ピックアップ・メンバーによる部活動(クッキング部・ミニパティ、科学部・科学究明機構ロヂカ?)のレパートリーも聴くことができた。ロヂカ?は、さくら学院史上初といえるテクノ・ポップ調楽曲「サイエンスガール ▽ サイレンスボーイ」を、CDリリースに約1ヶ月先駆けて披露。8月に発足したテニス部・Pastel windも評判を呼んでおり、今後いっそう、さくら学院に対する注目は高まることだろう。(原田和典)


Popular CONCERT Review

「ニッキ・パロット」 10月30日 コットン・クラブ(ファースト・ステージ)
 オーストラリア出身、今はアメリカで活躍するベーシストでシンガーのニッキ・パロットは、今年は、季節に因んだ曲を歌うアルバムを、「春」、「夏」、「秋」と出してきてもうすぐ「冬」の作品が発表になる。彼女の親しみ易い人柄とセンスの良い歌は、日本での彼女の人気を高めてきているようだ。開幕と同時にひとりでステージに登場した彼女は、レイ・ブラウンの使っていたベースを弾きながらスインギーに「Come Rain Or Come Shine」を独唱する。ピアノのジョン・デ・マルチーノを呼んで彼の「Falling In Love With Love」を見事なベース・ワークでサポートする。続いてデンマークからのギタリスト、ヤコブ・フィッシャーを入れて彼をフィーチャーした「Tea For Two」を演奏、トリオで歌う彼女の好きなペギー・リー・ナンバー「I Don't Know Enough About You」を歌い、カルテットの最後のメンバー、ドラムのティム・ホーナーのドラムをフィーチャーしたモンクの「Green Chimneys」としゃれた幕開けだ。ベースを離れピアノとデュオのバラードで入り、ギター、ドラムスも入りスロー・ボサに変える「Bewitched」、ポルトガル語と英語でテンポ良く歌った「Brazil」等全12曲の大変面白い構成で楽しい舞台だった。アンコールでは、ベースを離れてジョンにもマイクを向けてスキャットをさせたりするピアノだけがバックの「Bei Mir Bist Du Schon」からメドレーで全員参加で「September In The Rain」を歌いの大喝采を受けていた。(高田敬三)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久


Popular CONCERT Review

「ザ・デュークス・オブ・セプテンバー・リズム・レヴュー」 11月2日 パシフィコ横浜
 70年代後半から80年代前半にかけ全世界を興奮の渦に巻き込んだAORの世界。その中でも大ヒットを飛ばし続けた代表であるボズ・スキャッグス、マイケル・マクドナルド、ドナルド・フェーゲンの3人による21世紀版AORユニットが、ザ・デュークス・オブ・セプテンバー・リズム・レヴューだ。嫌になる程のセンスとノリの良さで、オーディエンスを圧倒する。しわがれ声でぶっきらぼうなドナルドのMCはご愛敬だが、さすがに個別のヒット曲では、会場の盛り上がり方が違う。心配されたボズの声も良く出ているし、ドゥービー・ブラザーズに加入した当時は許せなかったマイケルのヴォーカルも年を経て図太くなり、何となくではあるが今は許せる。何と言っても一番の盛り上がりは、ドナルドによるスティーリー・ダンの「PEG」だろう。この一癖も二癖もある3人のバックを務めるメンバーもあらゆるナンバーをこなす腕利き達であり、女性コーラスの二人もバック・コーラスに留まらず、メイン・ヴォーカリストとして非常に優れたポテンシャルを披露し、会場を沸かせた。全く古さを感じさせない3人のミュージシャンに脱帽の素晴らしい一時であった。(上田 和秀)
撮影:Kentaro Kambe

Popular CONCERT Review

「オマー・アヴィタル」 11月3日 南青山・ボディ&ソウル
 イスラエル出身、ニューヨーク近郊を拠点に活動しているベーシストがオマー・アヴィタルだ。近年はめっきり来日回数も増え、日本での人気や知名度も定着した感がある。この日のステージは、ニューヨークの演奏仲間であるジェイソン・リンドナー(ピアノ)、ダニエル・フリードマン(ドラムス)とのトリオ編成。アヴィタルというと、管楽器入りのグループでガンガン演奏を引っ張っていくイメージが個人的にはあるのだが、トリオでプレイしているときの彼も力強くて豪快。彼がつまびく生々しい音色は、ウッド・ベースが木製の楽器であるという事実を改めて知らしめてくれる。演目は殆どがアヴィタルの自作。ファースト・セット、セカンド・セットあわせて2時間は演奏したと思うが、曲想はバラエティに富み、しかもメロディアス。まったく飽きることがなかった。ベース・ソロの中に「ゲット・アップ、スタンド・アップ」のメロディを盛り込んだのは、ボブ・マーリーを敬愛するアヴィタルならでは、といったところだ。(原田和典)

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「西藤ヒロノブ」 11月4日 六本木スイートベイジルSTB139
 新作『アルフィー』の発売記念ライヴの千秋楽となったこの日は、鉄壁のメンバーをバックに従え、伸び伸びとした演奏を聴かせてくれた。トレード・マークのThe Seaギターのみならず、お得意の6弦ギタレレやエレアコに加え、今回はデビュー当時に使用していたギブソンのセミアコも披露し、ギタリストとしてそのポテンシャルの高さを表現した。新作『アルフィー』で、初めてカバー作品に挑戦したが、ライヴでも問題無くこなしていく。しかし、この日のハイライトは、何と言っても変則リズムの「トラベラー」だろう。The Seaを弾きまくる姿は、ミュージシャンとして自信に充ち溢れていた。アンコールでは、人気・実力共にトップ・ギタリストであり、友人の小沼ようすけとの楽しいコラボも披露し、観客を沸かせた。ギタリスト兼コンポーザーとして、西藤ヒロノブのこれからの活躍に一段と期待したい。(上田 和秀)
撮影:Tsukasa Furukawa

Popular CONCERT Review

「TAO×JUNKO KOSHINO マスコミ記者懇親会」 11月5日 南青山・JUNKO KOSHINO Boutique
 DRUM TAOは九州を拠点とするドラム・アート・パフォーマンス集団。1993年の結成以来、17国・約500都市で公演をおこない、動員数は550 万人を誇る。彼らは今夏に行なわれたBLITZ公演で初めて、コシノジュンコのデザインによる衣装を身につけて演奏した。和太鼓とコシノ・デザインは一見、不思議な結びつきのようにも思えるが、「私は岸和田のだんじりで育った。和太鼓を聴くと血が騒ぐ」とコシノは依頼を快諾し、TAOのメンバーも「とても動きやすく、演奏しやすい衣装だった」と再度のコラボレーションを望んだ。そして12月9日と10日に渋谷のBunkamuraオーチャード・ホールで行なわれる最新作「火の鳥」で、TAOは約130着ものコシノ作品に身を包む。この日の記者会見では、選抜メンバー5人が入魂のパフォーマンスを披露。切れ味鋭いパーカッションの響き、激しいアクションとコシノの衣装が鮮やかなハーモニーを描いた。「和太鼓=はっぴというイメージにはしたくなかった」と語るコシノの世界は、Bunkamura公演でさらに広がりを見せることだろう。(原田和典)

Popular CONCERT Review
「ノラ・ジョーンズ」 11月8日 日本武道館
 オカッパ頭のノラ・ジョーンズ登場!!! 正しく、今回のライヴは彼女に癒しを求めるのはお門違いだと言う事を証明するものとなった。彼女は決して甘い歌声だけのジャズ・シンガーではなく、ピアノとギターを弾きこなし、力強い歌声でオーディエンスを圧倒するカントリー・ガールであり、ロックンローラーなのだ。美しい歌声とチャーミングなルックスを兼ね備える女性版ニール・ヤングとでも言いたいところだ。特に、最新アルバム『リトル・ブロークン・ハーツ』は、リアルな彼女を表現した力作であり、『リトル・ブロークン・ハーツ』からの楽曲と代表曲の数々は、自由に音楽の世界を羽ばたくノラ・ジョーンズの真髄を見せてくれた。彼女のライヴを経験した事を機会に、彼女を目標とする女性ギタリスト兼シンガー・ソングライターが増える事を心から期待したい。(上田 和秀)

Popular CONCERT Review

「メドウ」 11月9日 吉祥寺・スターパインズカフェ
 英国ジャズ・ピアノ界の重鎮、ジョン・テイラーが、北欧屈指のミュージシャンであるトーレ・ブリュンボルグ(テナー・サックス)、トーマス・ストレーネン(ドラムス)と組んだトリオが“メドウ”だ。2011年に出したアルバム『Blissful Ignorance』が評判を呼んでいただけに、実にいいタイミングで来日が実現したといえるだろう。ステージにはマイクも、モニター・スピーカーもない。完全な生音によるライヴで、曲によってはかなりの部分が譜面に書かれていたようだが、演奏の展開は各人のアイ・コンタクトに任されていたと思しい。スティック、ブラッシュから、割り箸のような細い棒まで使ってデリケートなニュアンスを表出するトーマス、テナーとは思えないような高音で滑らかに吹くトーレのプレイにも感嘆させられたが、目玉はやはりテイラーだろう。とにかく音がよく通り、タッチの粒立ちが美しい。60年代から第一線を歩み続ける巨星の壮大な“ピアノ人生”、その一端に触れたような気がした。(原田和典)

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「パブロ・シーグレル・ミーツ・トーキョー・ジャズ・タンゴ・アンサンブル2012」 11月9日 浜離宮朝日ホール
 複雑に絡みあう調性と変幻自在なリズム。思わず譜面を覗き込みたくなるような衝動に駆られる。凄まじい情念を描いた映画でも観ているかのような錯覚に陥ってしまう。アルゼンチン出身でニューヨークを拠点に活動するピアニスト、パブロ・シーグレルがトーキョー・ジャズ・タンゴ・アンサンブルと共演した昨年に続く2度目のコンサート。日本側は鬼怒無月(G)、北村聡(Bandoneon)、西嶋徹(B)というおなじみの顔ぶれだ。第1部はピアソラの「ミケランジェロ70」に始まり、自身の作品とピアソラのナンバーを織り交ぜながらスリリングな中にも安定感のある演奏を聞かせてくれた。第2部は鬼怒無月(G)とのデュオで幕を開けた。ピアノとギターが急速に音を紡いでゆくそのスピード感には思わず息を潜めたくなるような迫力がある。中盤にゲストとして登場した梅津和時がソプラノサックスとクラリネットを持ち替えながら,パワー全開で即興演奏に加わる。これがステージをさらに迫力あるものにした。昨年とは一味もふた味も違った鮮やかな印象として残るコンサートだった。(三塚 博)

Popular CONCERT Review

「ジノ・ヴァネリ」 11月15日 コットン・クラブ(ファースト・ステージ
 カナダ生まれのジノ・ヴァネリは1970年代末から'80年代にかけて活躍したAOR系のシンガー。この頃のスター達の多くが今なお健在なのは嬉しい限りだが、当時から30年以上も経った今では、その声や風貌にある程度の衰えが見られるのは多くの場合、こちらも織り込み済みだ。ところが、ジノ・ヴァネリはその予想を見事に裏切ってくれた。パワフルな声も引き締まった身体つきもまるで全盛期そのもの。乗りのいい曲は決めポーズを作りながら全身で歌い上げ、大ヒットした「アイ・ジャスト・ワナ・ストップ」「リヴィング・インサイド・マイセルフ」のようなロック・バラードでは説得力のある熱唱で会場を魅了。バックも手慣れたミュージシャンばかりで意気の合った演奏を繰り広げ、会場を一つにまとめ上げていた。但し、ご本人は日本人の控え目な反応に物足りなさを感じているようで、しきりに気にしていたが、心配はご無用。詰めかけた観客達は手応えを持って受け止めていたし、最後には立ちあがる人まで出て、誰もが大きな拍手を送っていたのだから。ジノ・ヴァネリ、まだまだイケルぞ。(滝上よう子)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久

Popular CONCERT Review

「モーニング娘。誕生15周年記念コンサートツアー2012秋 〜カラフルキャラクター〜」11月18日 中野サンプラザ
 アイドル・ブームがこのような盛り上がりをみせるずっと前から、このグループはトップを走っていた。モーニング娘。、結成15周年ツアーは例によって大盛況だ。現メンバーはリーダーの道重さゆみを筆頭とする11人。当然ながら創設期のメンバーは誰もいないし、過去の当たり曲をやるわけではない。なのにちゃんと“モーニング娘。感”があるのは実に不思議であり興味深い。演目はニュー・アルバム『⑬カラフルキャラクター』からのレパートリーが中心。のっけから「One・Two・Three」、「The 摩天楼ショー」、「What's Up? 愛はどうなのよ〜」といったアグレッシヴなダンス・ナンバーが次々と飛び出し、エレクトロ・ファンクというべき世界に引きずりこむ。もちろん僕はこうした曲をCDでも聴いている。が、見事な統制のとれた振りつきを見ながら聴くとダイナミズム倍増。リーダーのテクノ調ソロ曲「ラララのピピピ」の破壊力にも恐れ入った。中盤、田中れいなが来年春でモー娘。を卒業するとの報告が。あと数ヶ月で道重との2トップが見られなくなるのが残念だが、新たにバンドを組んで活躍するという。モー娘。とその関連人物の世界は、まだまだ広がり続ける。(原田和典)

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「2CELLOS」
 今や世界中で人気の実力派イケメン・チェリスト2人組2CELLOSのジャパン・ツアーが決定した。驚異的なテクニックとその甘いルックスで、多くのファンを虜にして止まないルカ・スーリッチとステファン・ハウザーの二人は、祖国クロアチアで人気ロック・バンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズとの共演や国民的人気歌手オリヴァー・ドラゴエヴィチとのコラボレーション・アルバムをリリースするなど、躍進を続けている。そんな2CELLOSの二人が、どんな演奏で日本のファンを驚かせてくれるのか本当に楽しみだ。(UK)

* 2月15日 オーチャードホール
* 2月16日 メルパルクホール大阪
* 2月18日 金沢市文化ホール
* 2月19日 広島アステールプラザ大ホール
* 2月20日 Zepp Nagoya
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

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「植草ひろみ Graceful チェロ 〜美しき日の思い出〜」
 ジャンルを越え世界中で活躍するチェリスト植草ひろみのコンサート「Graceful チェロ 〜美しき日の思い出〜」は、ピアニスト徳川眞弓と新日本フィルメンバーによるチェロ・バス・アンサンブル(チェロ:弘田徹、矢野晶子、多田麗王、コントラバス:城満太郎)をバックに従え、アンドレ・ギャニオンから送られた「あなたに惹かれて」、ホセ・ブラガード編曲によるピアソラの「アディオス・ノニーノ」等今まで誰も経験していない演奏にチャレンジする。チェリスト植草ひろみの魅力を全て詰め込んだ貴重なコンサートを心から堪能して欲しい。(UK)

* 2月23日 東京文化会館小ホール
お問い合せ:東京労音 (03)3204-9933

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『ジャーニー」
 80年代前半に、『エスケープ』、『フロンティアーズ』と大ヒット・アルバムを世に送り出し、ロッカバラードの名曲「クライ・ナウ」、「オープン・アームズ」、「フェイスフリー」に加え、大ヒット曲「セパレイト・ウェイズ」等でアメリカン・ロックの頂点に立ったジャーニーの4年振りとなる来日公演が決定した。メンバーは前回同様、ニール・ショーン(g)、ジョナサン・ケイン(key)、ロス・ヴァロリー(b)、ディーン・カストロノヴォ(ds)、アーネル・ピネダ(vo)と最強の布陣だ。ジャーニーの名曲の数々が甦る鉄壁のライヴが、心から待ち遠しい。(UK)

* 3月11日 日本武道館
* 3月12日 グランキューブ大阪
* 3月14日 広島文化学園HBGホール(広島市文化交流会館)
* 3月15日 名古屋市公会堂
* 3月17日 金沢歌劇座
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

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『サンタナ」
 ラテン系ロックの雄サンタナの10年振りとなる単独ジャパン・ツアーが決定した。勿論サンタナを率いるのは、情熱のギタリスト・カルロス・サンタナだ。早いもので伝説となった初来日公演(名作ライヴ盤『ロータスの伝説』として有名)から40年の歳月が流れたが、最近ではグラミー賞の常連にしてヒット・メーカーとしても注目されるバンドとなり、最もメジャーなロック・バンドの一角となった。日本に春の訪れを告げてくれるであろう、心から体を揺さぶるサンタナの熱いライヴを一人のロック・ファンとして心待ちにしたい。(UK)
撮影:(c) Mary Anne Bilham

* 3月11日 大阪城ホール
* 3月12日 日本武道館
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

Popular INFORMATION
 
『ルーファス・ウェインライト」
 1998年のデビュー・アルバムが注目を浴び、ローリングストーン誌がその年の「ベスト・ニュー・アーティスト」に選ぶなどデビュー依頼快進撃を続けるルーファス・ウェインライトの全編ピアノ弾き語りによるジャパン・ツアーが決定した。ショーン・レノンとツアーを組んだり、オペラへ興味を示したり、CM出演に続き映画出演、映画音楽にも挑戦するなど多方面で活躍するルーファス・ウェインライトの魅力が満載のライヴを楽しみにして欲しい。(UK)

* 3月18日 松下IMPホール
* 3月19日 渋谷公会堂
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

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