2012年9月 

 
Popular ALBUM Review

「ソウル・セッションズ Vol.2/ジョス・ストーン」(ワーナーミュージックジャパン:WPCR-1 4615)
 R&Bのカヴァー曲集「ソウル・セッションズ」(2003年)でデビューした16歳の'天才少女歌手'が25歳の女性に成長して放つその第2弾♪ 相変わらずあえてベタを避けた?選曲で驚かせもするが今回はカントリー系の「ゼン・ユー・キャン・テル・ミー・グッバイ」(曲:ドン・チェリー)をゆったり聴かせるなど積み重ねたキャリアから来る余裕をアピールするような面も見られる。当時37歳の熟女シルヴィアが吐息混じりに歌った究極のセクシー・ソウル「ピロー・トーク」(1973年:No.3)にも果敢にチャレンジしているがこれはあえてなのかどうか意外?にあっさり目。もう少し年齢を重ねれば'色香'が滲み出て来るのかも。肉厚な歌唱でヘヴィーに聴かせるシャイ・ライツの「ギヴ・モア・パワー・トゥ・ザ・ピープル」(1971年:No.26)はやはりジョスの真骨頂♪(上柴とおる

Popular ALBUM Review

「ブローン・アウェイ/キャリー・アンダーウッド」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-3564)
 ようやく、の日本デビューである。2005年に全米の大人気TVオーディション番組:アメリカン・アイドル第4シーズンに出場、その美貌と圧倒的歌唱力で見事優勝。同年デビュー、発表した過去3枚のアルバムの売り上げは全米だけで計1400万枚を超え、シングルもそのほとんどがカントリー・チャートNo.1に。グラミー賞はじめ、音楽賞も次々と受賞、今や押しも押されもせぬトップ・スターである。メイン・グラウンドはあくまでカントリーではあるが、今作ではもはやカントリー云々させないほどポップ/ロックしているナンバーもあり、より幅広い層にアピールできる作りとなっている。(森井 嘉浩)


Popular ALBUM Review




「ユー・ワー・オン・マイ・マインド/ウィ・ファイヴ」
(ユニバーサル ミュージック:UICY-75308)
「メイク・サムワン・ハッピー/ウィ・ファイヴ」
(ユニバーサル ミュージック:UICY-75309)
「リターン・オブ・ウィ・ファイヴ/ウィ・ファイヴ」
(ユニバーサル ミュージック:UICY-75310)
 A&Mレコードのアルバム再復刻(紙ジャケット&SHM-CD仕様)シリーズの一環として今度は1960年代のウィ・ファイヴの3枚が登場(3枚目は本邦初発売)。グループ名の通り5人組(サンフランシスコ出身)。日本ではきちんと認識されていないようだが米ロック・シーンにおける彼らの存在は決して小さくはない。ブレイクしたのは男女フォーク・デュオ、イアン&シルヴィアの楽曲のカヴァー「ユー・ワー・オン・マイ・マインド(恋がいっぱい)」の大ヒット(1965年:No.3)がきっかけだが同じ頃に世に出たザ・バーズ(ミスター・タンブリン・マン)と共に'フォーク・ロック'のパイオニアであり、また '愛と平和'を掲げたヒッピーの愛唱歌として当時スタンダードになっていた楽曲でヤングブラッズも取り上げて大きなヒット(1969年:No.5)になった「レッツ・ゲット・トゥゲザー」を最初にチャートに送り込んだ(1965年:No.31)のもウィ・ファイヴ。さらに女性をフロントに据えた編成スタイルも後々のシーンにおける男女混成グループのいわばひな形になったともいえようか。全盛期は短くて2作目が世に出た時にはグループはすでに活動をストップしており、女性シンガーがチェンジして出直しで制作されたのが3作目でシーンの流れと共に彼らのサウンドも変化して行った様子が伺える。ちなみに中心メンバーのマイク・スチュワートはキングストン・トリオのジョン・スチュワート(後にモンキーズの「デイドリーム・ビリーヴァー」を書く)の実弟で、ウィ・ファイヴをコントロールしプロデュースを手掛けていた(1作目&2作目)のもキングストン〜のマネージャーだったフランク・ワーバー。(上柴とおる)


Popular ALBUM Review

「ギグ・アンド・ドーン/ケイト・フラー」(インパートメント:AGIP3511)
 ケイト・フラーは、オーストラリア出身、米国へ渡りロスでティアニー・サットン等に師事して活躍、今は、英国に住んでいる新進歌手。英国出身のジャズ・シンガー、アニー・ロスの半生を描くワン・ウーマン・ショウをやると云う様な人だ。彼女の新作は、ロジャース・ハート、エリントン、チック・コリアからフランキー・ライモン&ザ・ティ—ンエイジャーズやジェームス・テイラーとヴァラエティに富んだ選曲の歌に彼女自身のオリジナルも交えて少女っぽいが芯の有る声で歌う。最初の「Beginning To See The Light」だけはジャズ・コンボをバックにスキャット等も交えて歌うが、後は、ギターかピアノ中心の伴奏で歌うエヴァ・キャシティを思わせるような歌だ。(高田敬三)

Popular ALBUM Review

「SUMMER HOLIDAY/JIMMY GRIFFIN」(輸入盤 : Real Gone Music / RGM-0068)
 のち1970年代前期にブレッドの一員(ギタリスト)として名を馳せるグリフィンがリプリーズから1963年に出したアルバムが50年近い歳月を経てようやく初CD化(LP盤は長らく筆者の愛好盤♪)。しかもシングルのみの貴重な音源を+9曲で全21曲というのが嬉しい。言うまでもなく表題曲はクリフ・リチャードの全英No.1ヒット(1963年)でそのアメリカ版を狙ったようだが全く当たらなかった。当時20歳。'アイドル歌手'ながら妙な甘さはなく「トゥー・ヤング」「砂に書いたラヴ・レター」「涙の口づけ」といったおなじみの曲もヤングなビート感覚でこなしており他の歌手とは一味違うものを感じさせるが何よりもアレンジ&指揮がジャック・ニッチェ(13曲分)というのがマニアの興味を引くところだろう。ビートルズの「オール・マイ・ラヴィング」も♪(上柴とおる)

Popular CONCERT Review

「プラチナ・ジャズ・オーケストラ presented by ラスマス・フェイバー」 6月8日 ビルボードライブ東京
 ラスマス・フェイバーはスウェーデン出身のプロデューサー/キーボード奏者。当初はハウス・ミュージックのフィールドで活躍していたが、大のジャズ・ファンでもあり、日本のアニメ・ソングをジャズ化したアルバム『プラチナ・ジャズ〜アニメ・スタンダード〜』がiTunesアルバム・チャート、Amazon Jazzチャート、ビルボード・ジャパン・ジャズアルバムチャートで首位を獲得して以来、我が国では“アニメをジャズ化する達人”として浸透している。この日は男女ヴォーカリストを含む計12人でのステージ。オーケストラと呼ぶにはやや小ぶりの編成とはいえ、サックス・セクションがフルートやクラリネットを兼用することで音使いに幅が生まれ、アコースティック・ピアノとオルガンが1曲の中に違和感なく同居しているあたりも耳を引いた。「はじめてのチュウ」、「銀河鉄道999」、「風の谷のナウシカ」等を粋なジャズに生まれ変わらせたラスマスの手腕は見事のひとこと。今度はこのオーケストラで彼自身のオリジナル曲をたっぷり聴いてみたい。(原田和典)


Popular CONCERT Review

「第91回 リクライニング・コンサート 打楽器の日」 7月27日 富ヶ谷Hakuju Hall
 加藤訓子はロッテルダム音楽院卒業の打楽器奏者。2000年には米国パーカッシヴ・アートソサエティが選ぶ「世界35人のマリンバ奏者」にランクインしている。武満徹、スティーヴ・ライヒ等、数多くの鬼才と交流し、2011年にはアルバム『クニコ・プレイズ・ライヒ』を発表したばかり。ぼくはHakuju Hallの名物企画“リクライニング・コンサート”に数十回は通っているが、これほど冒険的かつ意欲的なプログラムは、かつてなかったような気がする。沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」、アントニオ・カルロス・ジョビン「イパネマの娘」、J.S.バッハ「マタイ受難曲よりコラール」、はたまたアルメニア民謡までが一同に会し、アーティスト独自の感性で再生されるさまは、実に壮観だ。あらためて加藤の持つとんでもない柔軟性、そしてマリンバの持つ奥深さに酔わされた。通常1時間ほどで終了するリクライニング・コンサートだが、この日は90分近い展開。パフォーマンスは曲が進むごとに熱を帯び、ライヒが書いた「シックス・マリンバ・カウンターポイント」では、事前に多重録音された“5人の加藤”に、“リアルタイムの加藤”が目の前で音を重ねながら、実に興味深いアンサンブルを創出した。(原田和典)


Popular CONCERT Review

「T&P Tokyo Presents 〜POP SONG 2 U」 7月29日 西麻布eleven
 西麻布「YELLOW」をご記憶だろうか。我が国にアシッド・ジャズ〜クラブ・ミュージックを根付かせたといっていい、いまや伝説のクラブである。その跡地に開店した「eleven」で2月から、月一回のペースでひたすら熱いイベントが繰り広げられている。3人組ユニット、Tomato n' Pine(通称トマパイ)が主宰する「POP SONG 2 U」だ。ジャンルもカテゴリーも無用、ただひたすら「今」を感じさせるミュージシャンやDJをフィーチャーした内容は音楽ファンの探究心に訴え、観客動員数も増加の一方だ。第6回目となるこの日はライヴ・アーティストに住所不定無職、ライムベリーを迎えたステージ。アルバム『PS4U』のリリースを3日後に控えたトマパイはラストに登場し、至高の名曲「なないろ☆ナミダ」からグルーヴ極まる「ワナダンス!」まで全9曲を一気呵成に駆け抜けた。体調が十分ではなかったメンバーもいたときくが、現在のトマパイにはすべてを大きなプラスに転じるパワーと結束力がある。プロフェッショナルの凄みを見せつけられたライヴだった。ちなみに次回の「POP SONG 2 U」 は9月2日開催。『PS4U』(新宿タワーレコードで売り上げ第1位を獲得)を聴きながら、西麻布で再会できる日を心待ちにしたい。(原田和典)


Popular CONCERT Review

「ソナーポケット“ソナポケイズムSPECIAL 〜夏の陣〜 in 日本武道館”」 8月3日 日本武道館
 ラブ・ソング命。そう全身に彫り物がしてあるのではないかと思うほど、様々な愛の形を歌い続けているユニットがソナーポケットだ。2008年に「Promise」でメジャー・デビューを果たし、「ラブレター。〜いつだって逢いたくて〜」、「365日のラブストーリー。」、「好きだよ。〜100回の後悔〜」など数多くのナンバーを発表してきた。彼らの歌詞はとにかくききとりやすく、メロディ・ラインも一度聴いたら直ちに口ずさめてしまいそうなほど親しみやすい。そして基本的に打ち込みであるにもかかわらず響きが生楽器っぽい。いいかえればサウンドに潤いがある。それは武道館という巨大な空間の中でも変わらなかった。ko-dai の丸みのある声とeyeronの高く張った声がコントラストを描き、それをmattyのバックトラックがサポートする(曲によってはギターも弾いた)。途中、メンバーが花道を走ったり、客席のファンを舞台に上げたり、キッズダンサーを登場させたり等の演出もあったが、それがなかったとしても当日会場につめかけたファンは誰もが満足して家路についたに違いない。(原田和典)

Popular CONCERT Review

「Jack, Char & Gota“Absolute Live Japan!!”」 8月3日 ビルボードライブ東京
 元クリームのジャック・ブルースと、クリームのエリック・クラプトンに憧れるギター少年だったCharが、ついに共演を果たした。'03年に両者は、元フリーのドラマー、サイモン・カークを加えたトリオで武道館公演を行う予定だったが、ジャックの病気のためにキャンセル。それから9年、シンプリー・レッド等で活躍した屋敷豪太をドラマーに迎えた今回の共演は、ファンよりも誰よりもChar本人が最も待ち望んだものだったに違いない。
 演奏されたのは、オープニング・ジャムを除けば全てがクリームのナンバー。「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」、「バッヂ」、「ポリティシャン」、「ホワイト・ルーム」など、ロック・シーンに燦然と輝く名曲が、オリジネイターであるジャックと、エリックのDNAを受け継いだCharによって演奏される。それは間違いなく、日本のロックの歴史における、ひとつの記念すべき瞬間になったと思う。(細川 真平)

Popular CONCERT Review

「マーカス・ミラー」 8月14日 ビルボードライブ東京
 昨年のマイルス・デイヴィス追悼作とは共演者を刷新した、若手中心の新作『ルネッサンス』を発表。そのレコーディング・メンバーを率いた6人編成のバンドで、マーカスが六本木の人気店に帰ってきた。これまでのリーダー作における一貫したバンド・コンセプトはそのままに、ステージでの見せ方に工夫を加えていた.点が見逃せない。ソロ・リレーで繋いだ後に、場面転換があってメドレーなのかなと思いきや、またテーマに戻るという曲構成は、ホール・コンサートとは異なる約80分のステージを観客に対して立体的に提示する効果的なアイデアなのだなと感じた。期待通りにチョッパー・ベースがサウンドをリードする中、アコースティック派のショーン・ジョーンズ(tp)とクリス・バワーズ(p,key)がリーダーの意図に沿った演奏によって、新味を表出してくれたのも特筆したい。(杉田宏樹)
撮影:Masanori Naruse

Popular CONCERT Review

「ジャッキー・エヴァンコ “ミュージック・オブ・ザ・ムーヴィーズ”ジャパン・ツアー2012」 8月 19日 オーチャードホール
 天使の歌声と呼ばれる歌手は、アート・ガーファンクルだけではない。少女歌手ジャッキー・エヴァンコも清々しい声を持った素晴らしい天才歌手だ。デヴィッド・フォスター&フレンズでも来日しているが、本格的なリサイタルは今回が初めて。映画主題歌を中心としたレパートリーで、愛らしい仕草ながら、これが12歳の少女とは思えぬほどの成熟した美声と端正な歌唱で、会場に嘆息があふれる。東フィルの演奏による「エデンの東」に続いて登場したジャッキーは、スケールの大きな素晴らしい歌声で、「魅惑の夜」「マイ・ハート・ゴー・オン」などを好唱。特に「主の祈り」ではまさに天使の歌声。ちょっと古めかしい編曲でドラマ性を抑えたオーケストラ伴奏も懐かしさを誘い、「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」は特に後半盛り上げて圧巻。アンコールではアカペラで「荒城の月」を立派に歌って大拍手だった。(鈴木道子)
撮影:山路ゆか

Popular INFORMATION

『カントリーゴールド2012」
 熊本在住のカントリー・シンガー、チャーリー永谷氏が主宰する国際音楽フェスティヴァル。第24回目となる今回は米国より3組(リック・トレヴィーノ、デイル・ワトソン、ジョーゼット・ジョーンズ)、国内より3組(チャーリー永谷&キャノンボール、ワイルドウッド・ロウゼス、ブルーグラス・カーネルズ)が出演。(YM)

*10月21日 熊本県野外劇場≪アスペクタ≫
http://www.countrygold.net/

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