2012年1月 

 
Popular ALBUM Review

「ソウル2/シール」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-14372)
 全米No.13のヒットになった3年前の「ソウル」に続くカヴァー特集の第2弾♪(全11曲)。今回は前作を手掛けたデヴィッド・フォスターとシールを世に送り出したトレヴァー・ホーンが共同制作。両者の持ち味がいい按配にブレンドされて素材の良さをより生かすような仕上がり。オリジナルに沿って味付けもシンプルに。前作で2曲歌ったアル・グリーンは代表作の「レッツ・ステイ・トゥゲザー」を、そしてマーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」などもあるが今回はオージェイズ、スピナーズ、メジャー・ハリス、テディ・ペンダーグラスといったフィリー・ソウルの楽曲やローズ・ロイス(2曲)にもチャレンジ(これがGood♪)。これってシリーズ化してくれるのかな? 一見ベタな選曲ながらも愛情を感じるしかなり楽しみになって来た。(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


ロンリー・サーファー


パリス・シスターズ・シング・エヴリシング・アンダー・ザ・サン!!!

≪Reprise ジャック・ニッチェ関連作 紙ジャケット・リイシュー・シリーズ≫
「ロンリー・サーファー/ジャック・ニッチェ」(FLY HIGH RECORDS 販売:ヴィヴィド・サウンド・コーポレーション/VSCD-1731)
「パリス・シスターズ・シング・エヴリシング・アンダー・ザ・サン!!!/パリス・シスターズ」(FLY HIGH RECORDS 販売:ヴィヴィド・サウンド・コーポレーション/VSCD-1732)
 新たなボックスまでが発売されるなど20世紀の大プロデューサー、フィル・スペクターの業績を再認識する動きが高まる中、スペクターの下で‘ウォール・オブ・サウンド’の構築に関わったアレンジャー、ジャック・ニッチェ関連の作品が2枚、日本初CD化で復刻された(SHM-CD:最新デジタル・リマスター音源使用)。いずれもスペクター・ファンにはパス出来ないアルバム♪
 当の本人ジャック・ニッチェが26歳の年(1963年)に発表した「ロンリー・サーファー」は1stソロ・アルバムで全編インストゥルメンタル。シングル・カットされた表題曲「ロンリー・サーファー」は全米No.39のヒットを記録。スペクターのレコーディングに関わったハル・ブレイン、トミー・テデスコ、レオン・ラッセルやデヴッド・ゲイツらのセッションによって「白い渚のブルース」「ひき潮」「荒野の七人」といったおなじみの楽曲もエレキ時代の感覚をベースにオーケストレーションの優雅さを纏って独特の味わいに。「バハ」(リー・ヘイゼルウッド作品)は同年アストロノウツ唯一の全米ヒット(No.94)にもなった曲(「サーフィンNo.1」)。制作はジミー・ボウエン。
 そのボウエンがジャックと共同で制作を手掛けたのが1950年代からのキャリアを誇る姉妹トリオ、パリス・シスターズ1967年のアルバム。後にシンガー・ソング・ライターとしても活動するプリシラ・パリスのオリジナル4作もなかなかに魅力的だがエレガントなサウンドを背景にけだるくてドリーミーな「涙のバースデイ・パーティ」(レスリー・ゴーアでおなじみ)やスペクター・サウンドを強く印象づけられる「シー・ザット・ボーイ」にはとりわけ惹かれた♪(上柴 とおる)


Popular ALBUM Review

「J.J-Standard II〜明日へ!スイング〜/Arrow Jazz Orchestra」(サウンドクリエーター/QACE-30002 販売:日本コロムビア)
 関西発の企画盤ながらも前回の第1弾はこれまでに4000枚売れたとか。J.JというのはJapan Jazzの略。要するに日本の大衆的なスタンダード・ヒットを関西の看板バンド、アロージャズオーケストラが奏でるスイング・ジャズのアレンジで楽しんでもらおうというもので今回の第2弾は「若いってすばらしい」や「夜明けのうた」「なんとなくなんとなく」(スパイダーズ)から「青葉城恋唄」「時代」「ふれあい」など60年代〜70年代の歌曲を12曲。若い頃は本格的なファンではなくともジャズを身近に感じていたという年輩の世代にとってはある種の癒しになるかも♪(私自身も自然に楽しめるし)。「上を向いて歩こう」は自身レパートリーにも取り入れているボビー・コールドウェルがアレンジを担当。(上柴 とおる)


Popular ALBUM Review

通常SHM-CD

SACD〜SHM-CD

DVD付限定盤

「ブレイク・ジ・アイス/ハクエイ・キム」(ユニバーサル ミュージック/通常SHM-CD:UCCJ-2094, SACD〜SHM-CD:UCCJ-9003, DVD付限定盤:UCCJ-9125)
 新鋭ジャズ・ピアニスト/ハクエイ・キム初のソロ・ピアノ・アルバムは、スタンウェイ・フルコンサートを日本屈指の調律師である辻秀夫氏に依頼し、録音システムはSACD用にDSD録音、通常SHM-CD用に192k/24bit録音とK2HDマスタリングを施し、加えてマイクからケーブルに至るまで徹底的に音質にこだわり貫き、演奏の鮮度を100%保った作品となった。その結果、「ギヴ・アス・ザ・サン」では、どこまでも響き渡る倍音に驚かされ、オリジナル曲は勿論のこと、ハクエイのフィルターを通して新世紀のナンバーに変身した「枯葉」等のスタンダード・ナンバーも躍動感に溢れ、ピアノの音色は美しさの極みに達する。この作品により、ハクエイというピアニストの底知れぬ魅力とピアノという楽器の恐ろしいまでのポテンシャルを改めて知ることとなるだろう。SACD仕様は、通常SHM-CD仕様に比べ、一段と音の重厚感と深みが増すので、聴き比べても面白い。ただし、このCDはやわなシステムでは歯が立たない。ハクエイはピアニストとして素晴らしいテクニックと感性そしてコンポーザーとしての才能を持っていて、癪な話ルックスも良くこれからが楽しみなナイスガイである。(上田 和秀)

Popular ALBUM Review


「BAMBOO GRASS thank you, stand by me/ジョー山中」(江戸屋・TEAM/EDCE-1011)
 1966年に491(フォー・ナイン・エース)でデビューしたのちフラワー・トラヴェリン・バンドでワールドワイドに活動。ソロとしても「人間の証明」を大ヒットさせたことで知られる彼の公式メモリアル・ベスト・アルバム。昨年、ようやくワーナー時代のソロ3作が復刻されたが、レコード会社各社へとまたがる活動とその権利関係の問題などもあって、その作品は容易に入手できる状況ではなかった。しかし今回、メーカーの枠を超え、ご遺族の意思もこもった形での作品としての発売である。ロック、レゲエのみならず幅広いジャンルの音楽性を示すものの、そこは“3オクターヴの声”を備えた個性によって統一されており、収録された年代の違いも感じさせない圧倒的な力がある。ライヴでの定番曲でベン・E・キングのカヴァー「Stand By Me」の収録こそ諸般の事情で見送られたが(その想いはタイトルに込められている)、日本が世界に誇るべき稀代のヴォーカリストの足跡を俯瞰できるアルバムであり、同時に今後のカタログの整備を期待したい想いにかられた。(山田 順一)

Popular DVD Review


「アメリカン・クラシック/トニー・ベネット」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SIBP-192)
 今もかくしゃくとして歌い続けるトニー・ベネットは生誕85周年で沸いている。『グレイテスト・ヒッツ』『MTVアンプラグド』とともに同時リリースされたのが、このDVDだ、これは5年前、80歳を記念して作られたもの。大ヒットとなった『デュエッツ:アメリカン・クラシック』を下敷きにしながら、彼のキャリアをトレースしている。デュエット相手もバーブラ・ストライサンド初めスティーヴィー・ワンダーやエルトン・ジョンから若手のクリスティーナ・アギレラまで多彩。ナレーションもスター揃いだ。エルトンやマイケル・ブーブレのシーンはラスヴェガス風にTVスタジオにこったセットを組んで華麗。みな歌はうまいし、トニーの人柄とともに多彩な場面転換で、大いに楽しめる。(鈴木 道子)

Popular DVD Review


「THE LOVE YOU MAKE/ポール・マッカートニー」(ヤマハミュージックアンドビジュアルズ/YMBA-10304)
 9.11にまつわるイヴェントは様々あるが、事件後いち早く10月に行われた「コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ」は記憶されるべきものだった。提唱者はポール・マッカートニー。このDVDは全編彼を執拗に追い、コンサートに至る経緯が描かれている。群衆に取り囲まれるポール、コンサートの準備、リハーサル風景、消防士たちや、当日ステージ裏での有名人たちとの会話等々。特に終曲「レット・イット・ビー」の後に新曲「フリーダム」を加えたいとするポールの熱意が印象的だ。豪華出演者たちによるステージが細切れで、もっとゆっくり見たい感じがするし、あまりにもポールを追いすぎて、ごちゃごちゃした印象だが、貴重な映像であることは間違いない。巨匠アルバート・メイスルズ監督作品。モノクロ、カラー混合。(鈴木 道子)

Popular CONCERT Review

「ケニー・ギャレット」 11月9日 丸の内コットンクラブ
 世紀の名盤『トリオロジー』から早いもので17年。僕はケニー・ギャレットの来日公演にできる限り足を運んでいるが、一度たりとも『トリオロジー』を超えるどころか迫ったこともない。つまりそれほど『トリオロジー』がすごすぎた、奇跡的な作品だったということだ。しかし彼は常に優れた若手サイドメンを連れてきてくれる。今回はベニート・ゴンサレス(ピアノ)、ホルト・コーコラン(ベース)、マーク・ホイットフィールドJr.(ドラムス。ギター奏者マーク・ホイットフィールドの息子)というラインナップ。僕はドラマーのすごさに耳を奪われた。ギャレットはかつてクリス・デイヴを帯同してファンの耳を釘付けにしたが、マークはクリスと並ぶ逸材かもしれない。各両手両足が単独でポリリズム状態を生み出し、それが猛烈な速度でシンバルやタムを駆け巡りながらすさまじいウネリを生み出すのだ。ギャレット自身のプレイは1曲目の急速モード・ナンバーが最高、あとのフュージョン風や演歌風は“実力の持ち腐れ”という感じがした。(原田 和典)
写真提供/COTTON CLUB
撮影/米田泰久


Popular CONCERT Review

「アーマ・トーマス」 12月1日 六本木ビルボードライブ東京
 まさかアーマ・トーマスのライヴが日本にいながらにして楽しめるとは思わなかった。なんと20年ぶりの来日だそうである。いずれニューオリンズに行って聴かなければなあ、と思っていた矢先の出来事だったからだ。アーマは1941年生まれだから今年で70歳。しかし若々しく、肌の艶もよく、声はよく出るし、観客を盛り上げるのも実にうまい。オーティス・レディング「ペイン・イン・マイ・ハート」の元歌である「ルーラー・オブ・マイ・ハート」を筆頭に、次々と名曲を披露してくれた。ベーシストを入れず、シンセサイザー奏者がすべてのベース・ラインを担当していたのには驚かされたが、バンド全体のサウンドは非常に暖かみのあるものであった。この来日を機に、アーマはもちろん、ニューオリンズR&Bへの再評価が高まることを心から願う。(原田 和典)
撮影/宇山ケンジュ


Popular CONCERT Review

「我がニッポンのうた」 12月14日 会津若松市文化センター
 ジャズ・コーラス・グループ「ブリーズ」と嶋田陽子ラテン・リズムによる東日本大震災復興チャリティー・クリスマス・コンサートは、主に福島県大熊町から会津へ避難して来ている人々に囲まれて行われた。ブリーズは、2009年のオランダのブレダ・ジャズ・フェスティバルをはじめ多くの海外公演も行っている男女二人ずつのグループだ。「サンバ・ブラジル」や「ある恋の物語」で中南米のリズムを紹介した後、今回は、珍しく日本語による「こきりこ節」、「木曽節」、「八木節」など日本各地の民謡を野口久和の主にサンバ・リズムをベースにしたアレンジによる綺麗なハーモニーで歌い、最後の「会津磐梯山」では会場の大喝采を得ていた。アンコールに応えてマイク無しのアカペラで歌った「見あげてごらん」は、会場に大きな感銘を与え涙を誘った。最後は、リクエストに応え再び「会津磐梯山」でおおいに盛り上がっていた。(高田 敬三)

Popular CONCERT Review

「オリジナル・リバティ・ジャズ・バンド」 12月18日 早稲田大学大隈講堂
 ニューオルリンズからやってきたオリジナル・リバティ・ジャズ・バンド(マイケル・ホワイト・クインテット)を聴いた。早稲田大学ニューオルリンズジャズクラブが50回目のリサイタルを記念してゲストとして招聘したものだ。リーダーのマイケル・ホワイトはニューオルリンズ・ジャズの担い手として、また当代きってのクラリネット奏者として位置づけされている。このことはウィントン・マルサリスをはじめ多くのミュージシャンたちのレコーディングに参加していることからも明らかだ。彼の率いるこのグループは地元の音楽遺産を継承することを使命として結成(1981年)されただけに、飾り気がなく実に正統性を感じさせる演奏を聞かせてくれた。けっして押し付けがましい演奏ではなく、5人ともに「まあ、よかったら聴いていって」くらいのノリだから観客との距離感がない。フレンチ・クォーターがぐんと近くなったような気分にさせてくれる。レオン・ブラウン(tp)のボーカルを交えた「I Want a Little Girl」、ジャズ・フューネラル「Lily of The Valley」、古謡さくらさくらの一篇を織り込んだ「Summer Time」といつまでも聴いていたくなるようなステージだった。(三塚 博)

Popular INFORMATION

「YES」
 YESとしては、9年振りとなる待望の来日公演が決定した。来日予定メンバーは、クリス・スクワイア(b) スティーヴ・ハウ(g) アラン・ホワイト(ds)、ジェフ・ダウンズ(key)、ベノワ・デイヴィッド(vo)というYESとASIAを足して2で割った感が否めない気もするが、プログレッシヴ・ロック・ファンとしては、心躍るライヴになる事は間違いない。加えて、新ヴォーカリスト、ベノワ・デイヴィッドの実力が如何なるものか、そして、YESの名曲の数々をどこまで自分流に歌いこなすのかも興味津々である。(UK)

* 4月18日、19日 渋谷公会堂
* 4月21日 アルカイックホール

お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

Popular INFORMATION

「スティーヴ・ルカサー」
 今年再結成によりファンを驚かせたTOTOのフロントマンであり、第2世代3大ギタリストの一角である天才スティーヴ・ルカサーの3年半振りとなるソロ来日公演が決定した。ギタリストしては勿論のこと、コンポーザーとしてもヴォーカリストとしても高い評価を得ているスティーヴ・ルカサーのエキサイティングでハイ・パフォーマンスなライヴに注目したい。(UK)

* 4月10日、11日 赤坂ブリッツ
* 4月12日 松下IMPホール

お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

Popular INFORMATION

「イル・ディーヴォ」
 世界的に大成功を収めたスーパー・ヴォーカル・グループ/イル・ディーヴォの3年振りとなる待望の来日公演が決定した。最新アルバム『ウィキッド・ゲーム』では、映画やCMに使用された「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を収録するなど、新境地に挑んだイル・ディーヴォの究極に美しいコーラスによる感動のライヴが待ち遠しい。(UK)

* 3月6日 日本ガイシホール
* 3月7日、8日 大阪城ホール
* 3月10日 広島サンプラザホール
* 3月12日、13日、15日 日本武道館

お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

このページのトップへ