2011年11月 

 
Popular ALBUM Review

「SWETHEART OF THE SUN/BANGLES」(MODEL MUSIC GROUP/MMG-20412)*輸入盤
 再結成からすでに10年余り。ライヴ活動を続ける実力派女性ロック・バンド8年ぶりの新譜♪残念ながらベースのマイケル・スティールが抜けて3人編成にはなったけど60年代風のハモリのさわやかさ、フォーク・ロック的なサウンドの響きなど変わらぬ魅力でオリジナル作品のクォリティーも高く誠に充実した内容♪気になるカヴァーもさすがベタじゃない選曲眼を発揮して60年代の知る人ぞ知る楽曲が二つ。イギリスの名コンビ、ジョン・カーター&ケン・ルイス作の「SWEET AND TENDER ROMANCE」(1963)、そして何よりもNAZZ(トッド・ラングレンの4人組)1968年の「OPEN MY EYES」とはあまりにも嬉し過ぎカッコ良過ぎ!これやからいくつになってもバングルスは止められませんわ♪(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review



「ソー・ハッピー/ベルジッタ・ヴィクトール」(ヤマハミュージックアンドビジュアルズ/YMCP-10016)
 珍しくセーシェル諸島出身の女性シンガー/ソングライターが登場した。ベルジッタ・ヴィクトールという。セーシェルは海と空の美しい国として知られているが、モウリシャス、マダガスカルなどと同じくインド洋上に浮かぶ島国。人口8万6千余とはアフリカでもっとも人口の少ない小国だ。フランスとイギリスの統治下にあった。音楽もフレンチ・フォーク/ポップ、アフリカ、インドなどが混じりあう。現在ドイツを拠点にしているベルジッタだが、第2作はスイス録音。愛や日常の思いが歌われ、シンプルなアクースティック・サウンドは、フォーク、レゲ、アフリカンなどの入り混じったスタイルで、至極ナチュラル。ちょっと哀愁味を帯びた歌声も音楽からも爽やかな風が吹いてくる。(鈴木 道子)


Popular ALBUM Review

「ソングライター/ポール・サイモン」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-20340〜41)
「ライヴ・サイモン/ポール・サイモン」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-20344)
 10月13日に70歳になったポール・サイモン。「ソングライター」はその生誕70周年を記念してリリースされた2枚組のコンピレーション・アルバム。といってもただのベスト盤ではない。S&G時代から最新アルバムまでの全作品の中から、ポール自らが誇りに思う曲を集めたという自選の名曲集で、これを聞けば、ソングライターとしてやはり彼は天才だと感じられるはずだ。曲順も基本は年代を追っているが、必ずしもリリース順ではないし、ヒット曲でも外れていたりと、彼のこだわりが随所に感じられる。またS&G時代の作品については「サウンド・オブ・サイレンス」が未発表の2011年の最新ライヴ・テイク、「ボクサー」がセントラル・パークでのライヴ、「明日に架ける橋」に至ってはポールのヴァージョンではなく、S&Gと共に大ヒットしたアレサ・フランクリンのライヴ・ヴァージョンを収録しているのもユニークで話題を呼びそうだ。
 またこのアルバムと同時に、彼のカタログの権利がソニーに移ったのを機に一連の旧作も紙ジャケ仕様であらためて発売されることになったが、その中で注目したいのが「ライヴ・サイモン」。ウルバンバ、ジェシー・ディクソン・シンガーズを迎えてのソロ初期のツアーの模様を収めた1974年発売のリマスター盤だが、今回、始めて紙ジャケ仕様での発売が実現したファン待望の一枚で、新たにボーナス・トラックが2曲収録されているのも嬉しい。(滝上 よう子)


Popular ALBUM Review


「ロックン・ロール黄金時代/シャ・ナ・ナ」(クリンク/CRCD-3317)
 1970年前後のロックン・ロール・リバイバル現象の渦中にあった(&リードする存在でもあった)エンタテインメントなグループ、シャ・ナ・ナのアルバムで最も売れたのはこの1973年盤(当時はLPで2枚組。CDでは1枚に収まった♪)。1950年代後期〜1960年代前期(プレスリー以降〜ビートルズ以前)のいわゆる'オールディーズ・バット・グッディーズ'と呼ばれる全米ヒットの数々が全29曲。ロックン・ロール、R&B、ドゥー・ワップの名曲からインストの「急がば廻れ」まで一気に♪ライヴ・ステージの楽しさが真骨頂の彼らならではの魅力が全開♪全曲目紹介だけではなく当時のシーンの状況なども踏まえた詳細解説(手前味噌ご容赦!)も是非ご一読願えれば♪(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


「ユー・アー・ザ・ワン/リーサ・ヴェリンデル」(スパイス・オブ・ライフ/PBCM-61044)
 ♪ジャズのようでもジャズではない、ポップスのようでもポップスではない、それは何かと訊ねたら♪。。。'ジャジー・ノット・ジャズ'(と言うんやそうですわ)。なるほどね。それ、言えてる。北欧スウェーデンはストックホルムの王立音楽院で声楽とアルト・サックスを勉強したリーサ・ヴェリンデルは女優としても国際的に活躍するキュートな女性。満を持してのこの歌手デビュー盤は気負わず、力まず、カッコ付けず。頬を撫でる風のようにさらりとしたヴォーカルで気分的にも安らげるし、本格的なジャズ・ヴォーカルのファンは物足りなさを感じるかも知れないけれど親しみやすい楽曲に誘われてついつい何度も聴き返してしまう。一日の仕事を終えて疲れた体に優しい1枚。(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


「NOSSA VERDADE/FUNDO DE QUINTAL」(Biscoito Fino /BF 379) * 輸入盤
 フンド・ヂ・キンタルの最新アルバム。裏庭のサンバあるいは普段着のサンバと形容されるバゴーヂで30年以上の楽歴をもつ元祖的な存在だ。80年代、それまでのサンバに新しい息吹を吹き込んだ立役者であると同時に、才能溢れる音楽家たちを輩出してきた老舗のグループでもある。ラテン・グラミー賞2012のサンバ部門にすでにノミネートされている本作はなんといっても熟達したメンバーによる安定感のある演奏と、そのことからくる親しみやすさが卓越している。ベッチ・カルヴァーリョが5曲目にスペシャル・ゲストとして参加しているのも嬉しい。
(三塚 博)

Popular ALBUM Review


「Sea Of Love/Raiatea Helm」(Raiatea Helm Records) *輸入盤
 グラミー賞ノミネート、ナホクハノハノ賞4部門受賞と、ハワイアン界で注目されている女性シンガーのひとり、ライアテア・ヘルム。しばしば来日して日本でももうすっかり顔なじみだ。本作品は、自らハワイアン・クラブミュージックと定義する50年代から60年代前半のスタイルにこだわった内容で、スチール・ギターやヴィブラフォン、パーカッションを配して当時の味わいを醸し出しながら、いつものさわやかで伸びのあるボーカルを聞かせてくれる。20代の彼女と、それを支えるミュージシャンたちの若さ、当時とは比べ物にならないほどの録音技術の向上などもあって当時のスタイルの中にもコンテンポラリーな感覚が自然と織り込まれてくる。そのことがかえってアルバム・コンセプトを際立たせているようだ。今日のハワイアン・ミュージックが変容しつつある中で、あえて50〜60年代のサウンドに目を向けていまの時代のリスナーたちとその魅力を共有しようという意図か明快で、すがすがしい。(三塚 博)

Popular ALBUM Review


「フラガンシア・デ・アルパ/ルシア塩満」(OFCINA ARPEGIO /LYSD-8 )
 
MPCJ音楽賞も受賞しているアルパの第一人者ルシア塩満は、パラグアイや南米に度々行き、フェスティバルやコンサート、また勉強にと努め、着実な演奏活動や大勢の弟子たちの教育など、常に前向きな明るさで多忙な生活をしているが、これは6年ぶりとなる新作だ。グレードが一段と上がった観がある。冒頭の「アスンシオンに咲く花」はフランスで活躍するアルパ奏者レディスマの現代風の曲だが、アルパにチェロ、ヴァイオリン、ベースを加え、音楽的に広がりと奥行きのある佳曲にしている。「碧色の瞳」「アグア・ドゥルセ」も同様で、アンデスの楽器だけでない現代的な色は合いがいい。ウーゴ・ブランコが彼女に贈った「パラ・ルシア」、華麗な「子供たちの遊戯」も聴きごたえがある。(鈴木 道子)

 アルパの第一人者ルシア塩満の最新CD。前作『グラシアス・パラ・トドス』から6年ぶり。パラグアイの、そして南米の空気感がひしひしと伝わってくる好作品だ。一音一音の粒立ちのよさは彼女ならではの緻密な技巧に裏打ちされたものであることは言うまでもない。厳選された名曲のひとつひとつに聴き入るうちにいつのまにかルシア・ワールドに引き込まれていく。アルバム全体を聴きとおしてみるととても映像的で叙情的、芳しい安堵感が漂ってくる。ウーゴ・ブランコが彼女にささげた「Para Lucia」、恩師エンリケ・サマニエゴの「牛追い少年」、自身の作品「母のぬくもり」、チコ本間の「愛犬ペ」など13曲を収録。(三塚 博)

Popular ALBUM Review


「秋休み/秋休み」(プロダクション・デシネ/PDCD-068 配給=ヴィヴィドサウンド/VSCD-9399)
 韓国にこんなステキな音楽があるとは♪今どきのアイドルだらけの'K-POP'てなベタなあれとはまるで違うシャレた'コリアン・ポップス'のリリースを開始した神戸のプロダクション・デシネの第1弾は'コリアン・インディ・ポップの純真'(帯コピーより。まさしくそんな印象♪)という若い男女デュオ「秋休み」のアルバムはシンプルながら音楽的なクォリティーの高さ、確かさを実感させてくれる仕上がり。女性(Vo担当)ゲピのちょっとはかない感じの歌声の可憐な魅力、男性(G担当)バビの作る楽曲のとっつきやすさ(耳に覚えのあるようなメロディーが多い。2曲目「同居」は竹内まりやの「元気を出して」を思い出す♪)が'カワイイ'♪渋谷系、ソフト・ロック、シティ・ポップ、AOR等のファンには特に推奨♪(上柴 とおる)

Popular BOOK Review


「ジャズ・ヒップホップ・マイルス/中山康樹・著」(NTT出版ライブラリーレゾナント)
 著者の多作ぶり、内容の面白さには今さら驚かないつもりであったが、この“濃さ”はただことではない。ページをめくるのが本当に楽しくてしょうがなかった。ビ・バップ、アフロ・キューバン・ジャズ、ヒップホップ、20世紀アメリカ黒人社会史について、これほど縦横無尽に筆を走らせた日本人ライターの本を僕は他に知らない。たしかに多くの場面でマイルス・デイヴィスが水先案内人のように登場するが、実際の主語は「著者」である。ジャズ・プロパーには浮かびもしないであろう視点が、わかりやすい文章で歯切れよく展開されているのが快い。「なるほど」と思うところ、「よく言ってくれた」と思うところ、「そういう考えもあるのか」と思うところが、どの読者にもあるだろう。とにかく示唆を与えてくれる著作だ。これをきっかけとしてビ・バップに入門するヒップホップのファン(無論、その逆も)は激増するのではなかろうか。(原田 和典)

Popular CONCERT Review

「DMS」 9月12日 Billboard Live TOKYO
 《東京JAZZ 2011》最終日のラスト・ステージを飾ったDMSが、単独で六本木のクラブに出演。ジョージ・デューク(key)、マーカス・ミラー(b)、デヴィッド・サンボーン(as)というフュージョン界の大御所が結成したスーパー・ユニットだけに、見どころが満載に違いなく、個人的にはどのように3人のバランスに配慮した選曲になるのか、がポイントだった。「ラン・フォー・カヴァー」で始まると、一気に80年代へとタイム・スリップ。当時のサンボーン・バンドはマーカスがベーシスト&プロデューサーとして活躍した間柄だ。「ストレート・トゥ・ザ・ハート」がそれに続くと、完全にあの頃の空気に支配され、ファンには堪らない。さらに追い討ちをかけるように「シカゴ・ソング」が飛び出すと、最高の同窓会が現出。デュークは「ブラジリアン・ラヴ・アフェアー」でショルダー・キーボードを弾き、「スイート・ベイビー」を熱唱するサービスぶりだった。(杉田 宏樹)
写真:acane


Popular CONCERT Review

「西藤ヒロノブ」  9月18日 六本木STB139
 「Hiro Jazz Tour 2011/みどりの星へのオマージュ」と題されたツアーの千秋楽は、西藤ヒロノブ・ニューヨーク・カルテットとフレンドシップに溢れたスペシャル・ゲストによる魅力満載なライヴとなった。西藤のトレード・マークの一つギタレレのソロから始まり、鉄壁なリズム隊のマルコ・パナシア(B)、ジョン・ランプキン(Dr)、才能溢れる若きピアニスト/ミルトン・フレチャーのサポートを受け、西藤の代表曲に加え「カントリー・ロード」、「ヒール・ザ・ワールド」等ツアー・テーマに沿ったヒット曲も素晴らしいアレンジで演奏された。「Tasogare」では、トニー・カッピーが神秘的な響きのスティールパンで魅了し、「ジャングル」では、Soil &“Pimp”Sessionsの元晴が登場しアルトサックスを炸裂させ、アンコールではTOKUが、フリューゲル・ホーンによる波を感じさせる特殊な演奏と美しい響きに加え、セクシーなヴォーカルを聴かせてくれた。若き画家のエイミーも、西藤のパフォーマンスに触発され、官能的なライヴ・ペインティングを披露してくれた。この日のライヴは、西藤ヒロノブというギタリスト/コンポーザーの進歩と限りなく広がる可能性を感じさせてくれた。(上田 和秀)


Popular CONCERT Review

「ベニー・グッドマン・オーケストラ」 9月25日 よこすか芸術劇場
 現代のクラリネットの第一人者、ケン・ぺプロウスキ—の率いるベニー・グッドマン・オーケストラの公演。オープニング・テ—マの「レッツ・ダンス」から始まる第一部は、フレッチャー・ヘンダ—ソンなどによる編曲のBGナンバーをジョン・エリック・ケルソ—(tp)、ジョン・オールレッド(tb)、ビル・イ—ズリー(ts)等のソロも交えてグッドマンの世界を再現する。ケン・ぺプロウスキ—と腕達者な若手ピアニスト、エ—フド・アシェリーとのデュオによる「チャイナ・ボーイ」や今回の日本公演の爲に特別に覚えたという鈴木章治で有名な「鈴懸の径」をリズム隊とのクインテットで演奏、クラリネットのヴァ—チュオ—ソの真価をみせる。第二部は、スモール・コンボでの演奏の後、歌手でピアニストのキャロル・ウエルスマンが登場、ケンと「メモリーズ・オブ・ユー」をデュエットでしっとりと歌い、続いてペギー・リーのナンバー3曲をケンが抜けた彼女のカルテットで歌う。再び、オーケストラが登場して2曲、アンコールは、キャロルがオーケストラと歌う「ムーン・グロウ」そして、おおいに盛り上がった「シング・シング・シング」で終わった。誰もが楽しめる変化のある楽しい構成で藝術劇場を満員にした聴衆もスイング・ジャズを充分に楽しんでいた。(高田 敬三)

Popular CONCERT Review

「カート・ローゼンウィンケル」 9月27日 COTTON CLUB
 90年代以降にあらわれた最高峰のジャズ・ギタリストのひとりであろうカート・ローゼンウィンケルの公演がおこなわれた。先年「ヴィレッジ・ヴァンガード」で見たときはギターとピアノを半々で演奏して退屈だったが、この日はギターに専念。やっぱり彼はギターに限る。演目はセロニアス・モンクの「ルビー、マイ・ディア」、ジョー・ヘンダーソンの「パンジャブ」、ベニー・ゴルソンの「アロング・ケイム・ベティ」等、いわゆるモダン・ジャズの曲ばかり。共演者にブランフォード・マルサリス・カルテットからエリック・リーヴス(ベース)、ジャスティン・フォークナー(ドラムス)を迎えたのも、レパートリーを考えれば正解だろう。カートは例によってエフェクターを存分に踏み込み、リヴァーブをたっぷり利かせながらのプレイ。せっかく古典をやるのだから、1曲ぐらいはエフェクターなし、アンプ直結でバリバリ弾きまくってほしかった。そうすれば、もっと演奏にヴァリエーションがついたことだろう。(原田 和典) 
写真提供:COTTON CLUB
写真:米田泰久


Popular CONCERT Review

「TOTO」 9月29日パシフィコ横浜
 バンドのアンサンブルを重視し、バッキングを中心に演奏するスティーヴ・ルカサー、あらゆるパターンのキーボードを弾きこなすデヴィッド・ペイチ、ここ一番にいかしたフレーズを奏でるスティーヴ・ポーカロ、何とも優等生なリズム隊のネイザン・イーストとサイモン・フィリップス、そしてメイン・ヴォーカルのジョセフ・ウィリアムスにより、再結成されたTOTO。このメンバーにより演奏された「アフリカ」、「ロザーナ」、「ホールド・ザ・ライン」等の大ヒット曲の数々と25年振りの来日となるスティーヴ・ポーカロの感動的なメッセージの後演奏されたマイケル・ジャクソンの名曲「ヒューマン・ネイチャー」は、良き80年代を懐かしむかのように横浜に集ったファンを圧倒した。この日のライヴは、TOTOと言うバンドは決してスーパー・ヴォーカリストは存在しないが、その楽曲の素晴らしさと優れた演奏能力を兼ね備えた比類稀なスーパー・バンドであることを証明してくれた。(上田 和秀) 
写真:森リョータ


Popular CONCERT Review

「三橋りえ コンサート」 9月30日 昭和音大ユリホール
 ジャズ・シンガーで昭和音大の講師を務める三橋りえが、昨年に続いてスタンダード・ポップスを若い世代に繋いでいこうという企画で、今回は第一部を「ドリス・デイ特集」と銘打っての意欲的なステージとなり、ドリス・デイのLP等の解説を多く書いてきた川上博がMCとして参加した。袴塚淳のピアノ、佐藤正のベース、稲垣貴庸のドラムスの軽快なリズムに乗せて「Lullaby Of Broadway」の演奏で始まり、三橋りえが「With A Song In My Heart」「Tea For Two」をリズミカルに歌い上げて会場は爽やかな雰囲気に包まれる。MCのA Girl Next Door (隣の家の娘)と親しまれたドリス・デイの話などを挟んで、第一部は「Sentimental Journey」「It's Magic」、「Teacher's Pet」「Secret Love」「Que Sera, Sera」など懐かしいヒット・ソングが続き、MCが1984年7月にカーメルの自宅を訪問した際には、スクリーンで見たそのままの温かい笑顔で迎えてくれた話など、ドリス・デイが身近に感じられるコンサートとなった。第二部は「What Is This Thing Called Love」「Stella By Starlight」「The Days Of Wine And Roses」「What A wonderful World」など全10曲、三橋りえの明るくのびやかな歌声と息のあったピアノ・トリオで楽しい一夜となった。(本田 浩子)
写真: 佐藤順彦


Popular CONCERT Review

「ジューサ」 10月2日 COTTON CLUB
 キューバ出身、現在はアルゼンチンを拠点に活動するジューサが久々に来日した。もともとヴォーカルとエレクトリック・ベースには定評のあった彼女だが、今回のステージがそれに加えてアコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、カホン(スペインの打楽器)も演奏。スペイン語だけではなく英語のナンバーもおりまぜ、さらにスケールアップした姿を披露した。バック・バンドの編成はギター、ベース、ドラムス。キーボードがないので、ジューサの卓越したリズム・カッティング、うねるようなベースがくっきりと浮かび上がる。初期の音作りに比べると明らかにラテン・テイストが後退し、いわゆるロック風のサウンドに接近しているのも興味深かった。かつて「キューバのトレイシー・チャップマン」と呼ばれたこともあるジューサ。今の彼女は誰とも比較できない域に達している。(原田 和典)

 パワフルでよく通る美しい声。天性のリズム感。キューバ出身のジューサの歌声には抜群の安定感がある。その音楽性もエスニックな枠にとどまらず、曲によってラテン、ボサ・ノヴァ、ジャズ、ロックと様々な要素が盛り込まれていて、しなやかでヴァーサタイルな魅力に溢れている。しかも彼女のレパートリーは殆どが自ら書き下ろしたオリジナルばかり。曲調もアップ・テンポの乗りのいいナンバーでは観客を鼓舞し、会場を熱く盛り上げたかと思うと、バラードでは持ち前の歌心でしっとりと歌い上げる。そして、その合間には歌ばかりでなく、ベースやギター、パーカッションの見事な腕前まで披露する多才な人でもある。きっとジューサはミュージシャンになるべくして生まれたのだろう。その圧倒的なパフォーマンスを見ながら、思わずそんなことを考えていた。(滝上 よう子)    
写真提供:COTTON CLUB
写真:米田泰久


Popular CONCERT Review

「ソフィー・ミルマン」 10月16日 Blue Note TOKYO
 ロシア生まれ、幼少期をイスラエルで過ごし、カナダへ移住してシンガーとしてデビューという変わった経歴のソフィー・ミルマンは、今回が9度目の来日だという。当夜は、その人気を示すように殆ど満員の盛況。バンドより一足遅れてステージに立った彼女は、マイクを舐めるように近づけて、親指と人差し指で輪を作るようにして左手を振る彼女独特のスタイルで最新作「イン・ザ・ムーンライト」の中の「スピーク・ロウ」から入る。新作からの歌が続き結局7曲を新作から、そしてアンコールの「おいしい水」を含めて前作3枚から7曲をいつものピアニスト、ポウル・シュロフとギターを含むカルテットで歌った。「I Can't Give You Anything But Love」では笑いが止まらなくなり、歌えなくなる場面もあった。やや鼻に掛った声の彼女は、ディクションが多少不明瞭なところが気になるが、彼女の大ファン、ヨ—コにといって歌ったフランス語の「La Vie En Rose」は、素晴らしかった。伴奏陣は、レコードのジェラルド・クレイトン(p)ジュリアン・レイジ(g)ルイス・ナッシュ(ds)を聞いた耳には物足りなさを感じた。人気に胡坐をかいているわけではないだろうが、全般に前回来日時に比べ覇気が感じられないステージと云う印象だった。(高田 敬三)
写真:佐藤 拓央


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「ボビー・ウ—マック
 伝説のソウルマン、多くのR&Bファン、ロック・ファンから愛されているボビー・ウ—マックが久々に来日する。1960年代から活躍、数多くのヒットを発表。ストーンズはじめ英国ロック・ミュージシャンから熱い視線を浴びせられていたことはよく知られる。マニアの間でも早くも大きな話題を集めている。ソウルフルでファンキーなステージに大拍手を送ろう、楽しみだ。(MH)
*2月22日 23日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/


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「テデスキ・トラックス・バンド
 デュアン・オールマンの意思を受け継ぎ、世界最高峰のスライド・ギター奏者であり、若き天才ギタリストとして君臨するデレク・トラックスとその妻で実力派ブルース・シンガー/ギタリストのスーザン・テデスキの二人が率いる、総勢11名からなる超絶技巧集団テデスキ・トラックス・バンドによる初の単独来日公演が決定した。サザン・ロックの域を超えたテデスキ・トラックス・バンドの熱きライヴに期待が高まる。(UK)
* 2月5日 名古屋クラブクアトロ
* 2月7日 大阪メルパルクホール
* 2月8日、9日 渋谷公会堂
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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「ブライアン・アダムス /ブライアン・アダムス公演
 世界中で記録的な大ヒットとなった映画『ロビン・フット』のテーマソング「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」を始め、「ヘヴン」「オール・フォー・ラヴ」等のヒット曲で知られるカナダ出身のマルチ・プレーヤー/コンポーザーであるブライアン・アダムスの7年振りとなる待望の来日公演が決定した。デビュー以来30年を過ぎても自身のロック・スピリットを貫き続ける彼の音楽に対する姿勢に、感銘を受けるファンは多い。キース・スコット(G)、ミッキー・カリー(Dr)、ノーム・フィッシャー(B)、ガリー・ブレイト(Key)と言った息の合ったメンバーと共に、熱いステージを披露してくれることは必至だ。(UK)
* 2月13日 大阪城ホール
* 2月 14日 日本ガイシホール
* 2月15日、16日 日本武道館
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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