2011年 

 
Popular ALBUM Review


「レイヴ・オン・バディ・ホリー~バディ・ホリーへ捧ぐ/VA」(ユニバーサルミュージック/UCCO 1113)
 メガネをかけて、普通のセーターを着た、近所のお兄ちゃんみたいなロックンロール・スターとして、ビートルズやストーンズのメンバー、ボブ・ディランやエリック・クラプトンにも多大な影響と刺激を与えたバディ・ホリーへのトリビュート・アルバム。生誕75周年にタイミングをあわせ、ホリー自作曲の著作権を管理しているマッカートニー・パブリシング・リミテッドが企画したものだ。「イッツ・ソー・イージー」をサカリのついた思春期の青年のように歌うポール、シーロー・グリーン、パティ・スミス、ルー・リード、キッド・ロック、カレン・エルソン、ジェニー・オーなど、年齢もジャンルも知名度も異なる19組のアーティストが参加。それぞれがまったく自由な解釈でホリーの名曲に取り組んでいるのだが、尺はほぼオリジナルにあわせているようだ。ほとんどが2分前後で終わってしまい、それがまた、なかなかいい感じ。(大友 博)

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「プレイング・フォー・ザ・チェンジ/ソングス・アラウンド・ザ・ワールド2/VA」(ユニバーサルミュージック/UCCO 3026)
 音楽には国境はない、そんなことをダイレクトに伝えてくれるマーク・ジョンソン・チャリティ・プロジェクト作品の第2弾。このプロジェクトは世界の子供たちに音楽教育、楽器を提供している。CD&DVDの本作は「ギミ・シェルター」「ハイアー・グラウンド」「イマジン」「ドック・オブ・ザ・ベイ」などのナンバーを多くのミュージシャンがリレー演奏。15カ国、150人以上のミュージシャンが参加。ジョン・レノンもDVDに登場する。日本からはChar、東儀秀樹 、上妻宏光、はたけやま裕らがパフォーマンス。(Mike M. Koshitani)


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「LP1/ジョス・ストーン」(ビクターエンタテインメント/VICP-64985)
 通算5枚目(すでに!)で2年ぶりとなる新作はEMIを離れて自ら設立したレーベルStone'd Records(名称がこれまた!自分の名前+関係のあるストーンズがらみ!?)からのリリース。ミック・ジャガーやデイヴ・スチュワートらとのバンド、スーパーヘヴィ(アルバムは9/21:ユニバーサル)の一員となった24歳の若きホワイト・ソウル・シンガーが改めてパワーを全開♪とはいえことさら昔のR&B風をあれするのではなく特に4曲目〜7曲目にかけての流れからは音楽的にも横に幅が出て来たような印象でこれは今回プロデュースに参画したデイヴ・スチュワートの持つ優れたポップ・センスの賜物かと。シーンではアレサやジャニスを引き合いに出して語られるけれど今回の新譜を聴いた私のあれではむしろティナ・ターナーですよ。(上柴 とおる)


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「ロックン・ロール・ジョー/チップ・テイラー」(BSMF RECORDS/BSMF-2233)
 1960年代に「ワイルド・シング」や「朝の天使」などを書きソングライターとして名を上げるもシンガーとしては知る人ぞ知る存在のまま今日に至る(そこがまたよろし♪)御年71歳、大ベテランの嬉しい新譜!ヴァン・モリソンのギタリストだったジョン・プラタニア、若い女流フィドル奏者(&VO)ケンデル・カーソンと組んで'A Tribute To Unsung Heroes of Rock N' Roll'という趣旨でカントリー風味をまぶしながらのロックン・ロールを中心に1970年代前期っぽい雰囲気を漂わせながらしかし何とも生き生きと♪以前にもセルフ・カヴァーした往年の名作「アイ・キャント・レット・ゴー」(リードはケンデル)も今回はシンプルな作りで(リンダ・ロンシュタット版に近い!?)新たなときめきを呼び起こしてくれる。1950年代風?のジャケットもカッコよろし♪(上柴 とおる)

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「バーン・ドアーズ・アンド・コンクリート・フロアーズ/イスラエル・ナッシュ・グリプカ」(BSMF RECORDS/BSMF-2234)
 こんな味のある骨太なシンガーが居たとは知らなんだ。耳ヘンに心で恥ずかしい。。。N.Y.の出身で歌声は時に若い頃のミック・ジャガーを思わせたりもするしそれに出て来る音がこれまた次から次へとインパクトある楽曲の連続で全11曲、ルーツ的でありながらもポップなメロディー感覚に満ちていてアーシーな音楽には普段あまり縁のない人でも彼の世界へとお持ち帰りされてしまいそう♪1970年代のストーンズ、ザ・バンド、ヴァン・モリソン、ロッド・スチュワートあたりを知る人には通じるものがあるかと。プロデュース&ドラム担当がN.Y.出身ソニック・ユースのスティーヴ・シェリーと知って「そういうことか♪」。(上柴 とおる)

 恥ずかしながら、彼のことは今まで全く知らなかった。引っ掛かったキーワードは“『メイン・ストリートのならず者』の現代版”という売り文句だったが、この手の前振りにはがっかりさせられることもしばしば。しかし本作は違った。土臭い香りに響き渡るギターとハープ。ミック・ジャガーやヴァン・モリスンを彷彿させる粘っこいヴォーカル。プロデュースはソニック・ユースのスティーヴ・シェリーで、様々な制約を嫌い山小屋で合宿同然の共同生活を行いながら録音されたものだという。グリプカはミズーリー洲の田舎で牧師の息子として育ったというが、社会をドロップアウトしそうになりつつも人種差別や社会問題を歌うカントリー・シンガーが“オルタナティヴ”と出会うとストーンズ的なサウンドになるというのも実に興味深い。これにはシェーリーの手腕も大きいだろうが、本作が素晴らしいのはグリプカのソングライターとしての才気が随所に光っているからに他ならない。いや〜参った。こいつは相当な逸材だ。(犬伏 功)

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「ベースメント・セッション/ウルフ・メイル」 (BSMF RECORDS/BSMF-2229)
 “ブルース・ロック”とはなんとも懐かしい響きだが、このウルフ・メイルというギタリストにはその香りが漂う。だから彼が奏でるフレディ・キングやジョン・リー・フッカーといった“本物”達のナンバーもどこか英国経由(ジミ・ヘンドリクスも実は英国アーティストなのである)の“ロックな”響きを持っている。かつてオジー・オズボーンに誘われながらも自身の音楽性を求める道を選んだという彼のサウンドはブルースでも、ハード・ロックでもなく、やはりブルース・ロックという言葉がピッタリはまるのである。通算4作目となる本作は過去3作収録のオリジナルを中心に新たなカヴァーにも挑んだスタジオ・ライヴ・アルバムで、彼の魅力を知るには絶好の1枚となっている。8月には再来日も決定、本作を聴いたあとは、是非“生”で極上のブルース・ロックを体験して欲しい。*詳細はhttp://www.bsmf.jp/live.htm をご覧ください。(犬伏 功)

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「スカイ・フル・オブ・ホールズ/ファウンテインズ・オブ・ウェイン」(ワーナーミュージック・ジャパ/WPCR-14133)
 うわっやられた〜♪日本盤ボーナス曲にな〜んとムーディー・ブルースの「愛のストーリー」(1971年:米No.23)のカヴァーが!当時よくラジオでかかってたし(オリコンNo.87)まさに日本向け!?のサーヴィスかも♪別段アレンジもしてなくて素直な作りなれどその選曲のセンスだけでもう充分満足(心から「おおきに♪」と言いたい気持ち)。アダム・シュレンジャーとクリス・コリングウッドを軸とするN.Y.出身4人組(デビューしてはや15年)の約4年ぶりの新作(通算5枚目)はこの1曲だけでも強烈に印象づけられてしまいそうだが全体的にはさりげなく小粋でポップな小品集といった趣でほんわかとした幸せな気分にさせてくれる楽曲揃い。(上柴 とおる)

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「刺青の男/ザ・ローリング・ストーンズ」(ユニバーサルミュージック/UIGY9073)
「ダーティ・ワーク/ザ・ローリング・ストーンズ」(ユニバーサルミュージック/UIGY9074

 
ファンを震撼させたローリング・ストーンズ・レーベル時代の≪SA-CD〜SHM仕≫にいよいよ1980年代作品が加わることになった。81年発売の『刺青の男』は過去の未完成トラックをブラッシュ・アップし完成させたものだが、彼ら自身が“ストーンズらしさとは何か”を再認識するきっかけとなった、それまでのストーンズ作品中最も売れたアルバムとなった重要作。ボブ・クリアマウンテンの手腕が光る素晴らしいサウンドはオリジナル・アナログ盤があまりに優秀だっただけにどれだけの優位性があるか聴くまで不安もあったが、流石にオリジナル・マスターの鮮度は抜群でアナログにも負けてはいない。むしろアナログ盤特有の内周部の歪みがない分、トータルで考えると圧勝といえるだろう。一方のミック・ジャガーとキース・リチャーズの関係が最悪な時期に制作された85年作『ダーティ・ワーク』は、制作を主導したキースの「仕上がりには100%満足している」という発言に思わず頷いてしまうほどの素晴らしさ。マスターはこんなに凄い音だったのかと驚かされるばかりか、自分の中での本作の評価を根底から覆えるほどのインパクトをこの≪SA-CD 〜SHM仕様≫は持っている。80年代サウンドに焦点を当てた寺田正典氏のライナーノーツも素晴らしい。氏曰く本作は『刺青〜』や『スティル・ライフ』以上に過激なものだった、ということがこの≪SA-CD〜SHM仕様≫を聴けば実に良く分かるのである。(犬伏 功)

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「Circle Scale/ichiro」(Moccasin Red/CPMR-200725)
 1990年代初頭からジャパニーズ・ロック・シーンを闊歩するギタリスト、ichiro。20周年を迎えた節目の2011年に久々のソロ・アルバムをリリース。収録されている11曲は、90年代から今日まで彼が書きためてきたナンバーの中からセレクションされた自信作。セルフ・カヴァーも登場。ブルースを愛し、しっかりとロックするそのパワフルなギター・ワーク。そこにイングリッシュ、ジャパニーズの歌詞がしっかりと合致、ichiroらしいダイナミックなサウンド・ワールドが展開していく。インスト・チューンも泣かせる。カヴァー「When It All Comes Down」にも注目、B.B.キングでおなじみだが(ジョー・サンプル作品)、ichiroはマット・スコフィールドを彷彿とさせるアレンジで纏め上げた。ichiroはこの夏、新作をひっさげてジャパン・ツアー。(Mike M. Koshitani)

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「リオ/ジョイス・モレーノ」(オーマガトキ/OMCX-1252)
 ジョイスはブラジリアン・ミュージックの重鎮として長年君臨している。もう還暦を過ぎたというが、相変わらずの健在ぶり。日本へも毎年のように来ている。今回は初めて彼女のギター1本をバックに、カリオカ(リオ生れ)らしく、リオにまつわる曲ばかりを歌っている。リオはサッカーのワールド・カップ(14年)やオリンピック(16年)など話題の町ではある。「イパネマの娘」「コルコヴァード」などはすでにレコーディングしているので、ここではサンバの名曲が中心。それだけにギターの弾き語りということもあって、ブラジリアン・フォークといった趣もありやや渋いながら、ジョイスの気概がうかがえる。14歳の処女作「私のリオ」は佳曲だし、ボーナス「カリオカの午後」もいい。8月来日予定。(鈴木 道子)

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「Hula/ROBERT CAZIMERO 」(Mountain Apple/MACD 2160)*輸入盤(US)
 ロバート・カジメロのニューアルバム「Hula」がリリースされた。今回は「ザ・ブラザーズ・カジメロ」ではなく、ロバート・カジメロのソロアルバム。ピアノの弾き語りで、他の楽器、コーラスなど入っていない実にシンプルで潔い作品。日本でよく見せてくれるピアノだけのステージがそのままCDになっている。ハーラウ・ナーカマレイやロバート氏お気に入りの女性ダンサーが踊っている場面が甦るサウンドと選曲になっている。このCDは、最初さりげない作品に感じられるが聞き込むととても深い作品だとわかる。ロバート・カジメロの集大成と言っても良いのではないだろうか。(鈴木 修一)

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「Ka Hoku Li’ili’/ジェフ・ピーターソン」(バウンディ/ATS-033)
 このアルバムは、オフィース・オーガスタに所属するスキマスイッチ、元ちとせ、山崎まさよし、スガシカオ、杏子、秦基博の楽曲をハワイのスラック・キー・ギターリスト・コンポーザー、ジェフ・ピーターソンのプロデュースでリアレンジした作品。16曲が収録されていて、4曲が歌モノになっている。ヴォーカリストは、なんとテレサ・ブライト&ネイサン・アヴェウの豪華メンバー。歌詞もテレサ・ブライトがハワイ語に訳している。はっきり言って、過去にもJ-POPをハワイアンにする企画モノは多くあったが、ろくなモノはなかった。このアルバムはそのような企画モノと明らかにレベルが違っていた。拾いモノと言っては失礼だが・・・私にとって、この夏のヘビーローテーションになる1枚だ。日本の優れたメロディー・メーカーとハワイの今を奏でるミュージシャンの出会いは幸福な出会いとなった。(鈴木 修一)

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「tell me once again/Carol Kidd」( LINN/AKD 377) *輸入盤
 
中国、韓国、シンガポール等でも人気のあるスコットランドのベテラン・シンガー、キャロル・キッドの最新盤は、ニゲル・クラークのアクースティック・ギターとのデュオでスタンダード・ナンバーを中心にスティーヴィー・ワンダー、バート・バカラック等の歌も交えて12曲をしっとりとしたムードで歌う説得力のあるバラード集。アルバム制作の動機となったという「Moon River」や選曲に一曲だけ交えた亡き夫を歌った自作のタイトル曲が素晴らしい。以前に比べると声に多少の歳は感じられるが、数ある彼女のアルバムの中でも代表作の一枚に数えたい作品。(高田 敬三)

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「ニューヨーク・アティチュード/寺久保エレナ」(キングレコード /KICJ-615)
 まだ10代の高校生ながら、天才少女サックス・プレイヤーが北海道にいるという噂は聞いていた。それが寺久保エレナだった。第2作にあたる新作を聴く。エレナはバークリー音楽院の夏期講座に参加しているが、今回選ばれた人のみが与えられる名誉のプレジデンシャル・スカラーシップを得て本格的に入学するという。チャーリー・パーカーの影響が大きく、古典も研究しているが、ケニー・バロン、ロン・カーターの超ベテランにリー・ピアソンを配した布陣は、エレナの音楽性にぴたり。臆せず伸びやかに豊かで王道を行きながら颯爽たる新鮮さが何んともいい。「ボディ・アンド・ソウル」は詩情に満ちて美しい。ゲストのドミニク・ファリナッチも、アルバムによき生彩を与えている。(鈴木 道子)

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「ここにいたこと/AKB48」(キングレコード/ KIZC-117)
 過熱人気はどこまで続くのだろう。テレビ、ラジオはもちろん、牛丼屋にいけば彼女たちの歌がかかっているし、電車の中吊り広告まで占領されている。しかしオリジナル・アルバムの発表は、この『ここにいたこと』が初めて。以前の作品はコンピレーションだった。全16曲入り。オープニングから1980年代中ごろ、アイドル・ブーム全盛の頃にタイムスリップしたようなサウンドが耳に飛び込む。懐かしいなと思い、そして「ああ、こういう音はCDよりもアナログ盤で聴きたいなあ」とも感じるけれど、考えてみればメンバーは当時、生まれてもいないのだ。そして彼女たちを応援する大部分のファンも当時のことは知らないだろう。むしろ新鮮味すら覚えているのかもしれない。後半の「チームB推し」あたりからテンションが高まり、「ポニーテールとシュシュ」、「ヘビーローテーション」等のシングル・ヒットが続くと、こんな僕でも踊り出したくなる。別に好きになるつもりはないのに、なんだか好きになってきたではないか。きくところによると本作、早々とミリオン・セラーに認定されたという。(原田 和典)

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「鼓動の秘密/東京女子流」 (エイベックス・エンタテインメント/AVCD-38247)
 東京女子流は2010年に結成された5人組。ぼくは今年1月に初めて彼女たちのイベントを見たが、曲によってはSPEEDの残像を追い求めているところがあり、個人的には“中途半端に古い音だ”と思った。しかし「おんなじキモチ」というナンバーがやけに良かったので、またそれを聴こうと5月のワンマン・ライヴに足を運んだのだが、このライヴが予想以上によかった。新鮮でポップでキャッチーで、しかもファンキーな16ビート歌謡をたっぷり聴かせてくれたのだ。このファースト・アルバムも、ライヴさながらの勢いある仕上がりになっている。「頑張って いつだって 信じてる」にセリフが入っていないのは残念だが(あれはライヴ限定とのこと)、「おんなじキモチ」、「鼓動の秘密」等、心のひだに訴えかけてくるような名曲がどっさり。“いい旋律、いい声、いいアレンジ”の3拍子が1枚のCDに美しくパッケージされている。土方隆行が音作りに関わっており、彼の歯切れよいギター・カッティングがいたるところで楽しめるのもポイントだ。(原田 和典)

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「ダッ!ダッ!脱・原発の歌/制服向上委員会」(アイドル・ジャパン・レコード/IJRC-0022)
 タイトルを見ずに一聴した感じでは、無邪気な歌声が楽しい80年代アイドル風ポップス。しかし、タイトルにもズバリとある通り、これはシリアスな歌詞を持った反原発ソングだ。アイドルがこのような内容の歌詞を歌う事については、当然賛否両論があるだろうが、あえて行動に出た勇気に対しては素直に拍手を送りたい。8月10日には日比谷野音にて、彼女達自身のプロデュースによる反原発イベントも開催。レーベルメイトである頭脳警察のPANTAも出演する。(町井 ハジメ)

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「バトル アンド ロマンス/ももいろクローバーZ 」(キングレコード/KICS-1678)
 怒涛の勢いで快進撃を続けるグループが、ももいろクローバーZだ。2008年結成というから今年で活動4年目を迎える。キャッチフレーズは「今、会えるアイドル」なのでメンバー自身は自分たちがアイドルだと思っているのかもしれないが、僕が想起するのは「ジョニー・バーネット・トリオのスピード感」、「MC5の持つ、やかましいまでの音圧」、「晩年のジョン・コルトレーンのライヴにおける度を越えた肉体燃焼具合」である。先日も2時間超のライヴを3セット連続で行ない、鉄人ぶりを証明したばかりだが、超絶的なパフォーマンスが話題になるのに比べて音楽に対する評価はいささか低めかもしれない。しかしそんな状況も本ファースト・アルバムが出たことで改善されるはずだ。曲作りやアレンジは言うまでもなくしっかりしているし、各メンバーの声が持つキャラクターの違いを際立たせるようなミキシングも見事だ。視覚面を別にしても、ももクロは超一級のグループであることが、ここに明確に証明されたのである。オープニングを飾る「Z伝説〜終わりなき革命〜」では、いきなり立木文彦のナレーションがフィーチャーされるが、本人たちの声より先にオッサンの語りが飛び出すアイドルのCDは前代未聞だと思う。(原田 和典)

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「硬派ジャズの名盤50/中山康樹・著」(祥伝社新書)
 世界最古のジャズ誌「ダウンビート」の人気投票が発表された。気鋭・精鋭がずらりと並び、なんだかんだいってもアメリカは見識があるなあと思った。日本ではあいかわらず「ジャズ風の味付けがされた癒し音楽」と「懐メロ・フュージョン」が全盛だ。モノホンのジャズなんて、よほど努力しなければ(自分から情報を収集しなければ)聴けやしねえ。著者もそういう風潮に疑問を感じていたのだろう、「癒しなどクソ食らえ」的、会心の1冊を上梓した。しかし人選や盤選は一筋縄ではいかない。ゲイリー・マクファーランドやラロ・シフリン、はてはベニー・グッドマンさえ紹介されている。この辺の面々を「硬派ジャズ」という視点で切り取った本はこれまで存在しなかっただろう。著者がこれらをどう「硬派ジャズ」と位置づけて、論考しているかは、読んでのお楽しみだ。ジョン・クレマー『ネクサス』など、「知らない人は知らないが、一度きいたら必ず驚くに違いない作品」がしっかり登場するのも嬉しいではないか。(原田 和典)

Popular BOOK Review

「ロック・ギター・トリビュート 特集キース・リチャーズの50年」(シンコーミュージック・ムック)
 ローリング・ストーンズのキース・リチャーズ、ミック・ジャガーとともにグループの屋台骨になっていることは周知の通り。4歳の時に砂場で知り合った幼友達が、10代になって再会し1962年にストーンズの一員として活動を始める。レコード・デビューは翌年。創始者はブライアン・ジョーンズだが、グループの中心はミックへと移行。そんな中でキースは彼とどんどんと名作を作り上げていく。そして、ローリング・ストーンズにいちばん執着しているのはキース。そんな彼の魅力を、もちろんギタリストとしての姿もしっかりフィーチャーしながら纏め上げたのが本書。キース、ストーンズのファンはもちろん、若いロック・フリークにじっくり味わって欲しい。(Mike M. Koshitani)

Popular BOOK Review

「日本盤 オールディーズ・シングル図鑑 1954〜1964」(シンコーミュージック・エンタテイメント)
 ロックンロール誕生期から英国勢が世界に進出する直前までの時代に日本でリリースされたシングル・レコード4000枚を掲載した図鑑、もちろんジャケット写真がカラ—登場する、このショットが僕らジイサン・ファンにはたまらない。といいながらも僕自身は60年代に入ってからエルヴィス・プレスリーの「アイ・フィール・ソー・バッド」をはじめポールとポーラ、フォー・シーズンズ、ビーチ・ボーイズ・・・などを購入していた年代なので、50年代のシングルには初めてお目にかかるものもあったりして興奮しっぱなし。60年代からだったろうか、当時ビクターから登場していたジューク・ボックス・ジャケットも懐かしい。ソロモン・バークやジェリー・ビーンズのシングルは何故か持っているんだけど、レイレッツのシングルが発売されていたなんて、驚き。いろいろ新しい発見が出来る・・・。そして、この時代については後追いの若い研究者、コレクターも多いときく。彼らにとっても貴重なバイブルになるだろう。(Mike M. Koshitani)

Popular CONCERT Review

「HAPA」 6月4日 COTTON CLUB
 HAPAのメンバーが代わった。ギターのバリー・フラナガンとロン・クアラアウのコンビになった。ひとことで言えば・・・まだ手探り状態!本番を重ねて作り上げようといったところか。悪くはないが・・・どちらも思い切ってやる!状態ではないようだ。バリーがギターを弾ききるところもなかったし、ロンの本領が発揮されたところも見あたらない。しかし、HAPAの曲をやればしっかりHAPAになっているところはさすが。新生HAPAが目立って変わったところは、バリーがウクレレを弾くようになったこと。昨年の日本ツアーでも会場によっては弾いたようだが、私が見たときはウクレレはセッティングされていたが、弾くことはなかった。今回はオープニングの「LOVE」(ジョン・レノン)から、トゥイン・ウクレレでスタートし驚かされた。バリーがパートナーとして選んだロンの実力はさすが。後は時間が必用だ。今までの2人とまるで違うタイプのパートナーであるだけに、これからのケミストリーが楽しみ。次回・・・完成度が高まり、新しいハーモニーが出来上がったHAPAを聴きたいと切に思った。 (鈴木 修一)
写真提供:COTTON CLUB  撮影:Yasuhisa Yoneda


Popular CONCERT Review

「アキコ・グレース A.G.T.C.」  7月1日 モーション・ブルー・ヨコハマ
 デビュー10周年を迎えた国内を代表する人気女性ジャズ・ピアニストのアキコ・グレースが、非常にテクニカルなドラマー岩瀬立飛と新鋭ベーシスト木村将之と共に、新トリオ・プロジェクトA.G.T.C.を結成し、初となるライヴを開催した。ファースト・ステージは、アキコ・グレースらしいモード・ジャズorフリー・ジャズ、ロック的にはプログレと言った幻想的な曲が中心に演奏された。クールにそして感情の赴くままに弾きまくるアキコのピアノに、クラシック出身の木村将之が5弦ウッド・ベースで爽やかに絡み、変幻自在にスティックやブラシを使いこなし、パーカッションの様に多彩な音のドラミングで曲を盛り上げる岩瀬立飛の3人で、あたかも『ケルン・コンサート』を彷彿させるかのような緊張感高まる演奏であった。一転してセカンド・ステージは、テーマのしっかりしたメロディアスな曲を中心に演奏した。ゲストのフリーライター兼作詞家の立花裕人さんを迎えてのトークでは、東日本大震災の被災地に「色」を届けるプロジェクト「ひまわりワルツ・プロジェクト」の説明があり、立花裕人さんの詩の朗読の後、アキコ・グレースのオリジナル「ひまわりワルツ」が演奏された。この「ひまわりワルツ」に立花裕人さんの詩を重ね、子供達の合唱団と一緒にレコーディングされる。このA.G.T.C.は、楽曲的にも演奏能力的にも今後、最も活躍が期待されるプロジェクトだが、プロとしてのキャリアが始まったばかりの木村将之に、良い意味でベーシストとしての自我が芽生えるともっと面白いバンドとなるだろう。今後のA.G.T.C.に注目して欲しい。(上田 和秀)


Popular CONCERT Review


「ブライアン・ジョーンズ追悼 東京Jajouka(ジャジューカ) デビュー LIVE!」 7月3日 原宿La Donna
 ローリング・ストーンズの創設者であり初期リーダーでもあるブライアン・ジョーンズの42回目の命日に当たるこの日、彼を信奉するミュージシャン、片山健雄(ブライアソ健雄ジョーソス)によるニュー・グループ、“東京Jajouka”のデビュー・ライヴ。60年代にはGS“カーナビーツ”で既に活動していたポール岡田がヴォーカル、ベースはストーンズ・トリビュート・バンド、ザ・ベガーズのトビール・ワイマン、ギターがルシールのMIHO、ドラムスがドレンチ・スカンクのTAKA、メンバーも実力派を揃えた。意表を突いたオープニング「Everybody Needs Somebody To Love〜Pain In My Heart」からアンコールの「(I Can't Get No)Satisfaction」まで全17曲、高いテンションが途切れることなく終了。満員の場内を沸かせた。ブライアンさながらに、曲によって楽器を持ち替える片山は、この日もギターはもちろん、シタール、ダルシマー、ブルース・ハープと全てにおいて卓越したパフォーマンスを披露したが、中でも「ICan't Be Satisfied」で聴かせた火の出るようなスライド・ギターは圧巻だった。次回の公演も非常に楽しみだ。(町井 ハジメ)
写真:加藤仁史

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「オスカー・カストロ・ネヴィス&小野リサ」 7月9日 Billboard Live TOKYO
 ブラジル音楽界の重鎮オスカー・カストロ・ネヴィスが日本のボサノヴァ・クイーン、小野リサとジョイントした。今年71歳になるオスカーは16歳のときからミュージシャンとして活動している。ゆったりと弾くギターからは想像できないくらい、豊かな音色があふれ出し会場を圧倒する。スタートから5曲オスカーだけでのステージ。歌はお世辞にもうまいとは言えないが、その味のある声に徐々に引き込まれていく。「黒いオルフェ」には感動。6曲目からは小野リサが登場。1曲だけギターを弾くが後は歌に専念。サンバ、ボサノヴァ、アメリカのスタンダードとヴァリエーションに富んだ構成で楽しませてくれた。小野リサも相変わらず良い。心地よい声の中に多くのニュアンスが感じ取れる。親子のように気のあった演奏はブラジルの乾いた風を感じさせてくれた。(鈴木 修一)


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「ヒラリー・コール」 7月22日 COTTON CLUB
 ハンク・ジョーンズ、ディブ・ブルーベック等トップ・ピアニストとの共演で話題を呼んだ前作に続き、今度は、ドン・セべスキーやアラン・ブロードベンド等の名編曲者を使った『モーメント・ライク・ジス』を発表して3作ですっかり大物に成った感じのヒラリー・コールの4日間の公演。ダン・ローゼンガ—ド(p)ジョン・ハート(g)ポール・ギル(b)カーメン・イントーレ(ds)のカルテットをバックに1曲目の「あなたと夜と音楽と」から快調に歌う。新作からの「モーメント・ライク・ジス」、ビートルズの「アンド・アイ・ラヴ・ハ—(ヒム)」と続く、ジョン・ハートとのデュオによる「イフ・アイ・ハッド・ユー」、珍しくヴァースから歌った「キャント・ウィー・ビー・フレンズ」、意外にもスロー・テンポで歌う「カム・バック・トゥ・ミー」等緩急をつけたステージで楽しませた。開放的で明るく人懐こい人柄と大衆受けする分かり易い歌という彼女の魅力は、ダイアナ・クラールに一脈通じるものを感じさせた。次のCDは、ビッグ・バンドとの共演を考えているという。期待したい。(高田 敬三)
写真提供:COTTON CLUB 撮影:Yasuhisa Yoneda


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「J.D.サウザー
 5月にカーラ・ボノフと共に来日する予定であったが延期になり、J.D.サウザー単独のライヴとなった。AOR、ウエスト・コースト・サウンド好きには堪らない公演だ。6月には3年ぶりのアルバム『ナチュラル・ヒストリー』をリリースしている。イーグルスやリンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウンなどと深い関係にありソロ・デビュー前にはグレン・フライとデュオを組んでいたこともある。79年に「ユア・オンリー・ロンリー」がヒットし、L.Aミュージック・シーンを代表するソングライターとなった。ハートフルで男のロマン漂うステージを期待している。(SS)
*8月15日 16日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/
*8月18日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/


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「ラウル・ミドン
 3月公演が中止になったが、改めて来日が決まった。スティーヴィー・ワンダー、ジェフ・ベック、ハービー・ハンコックらと共演し、絶賛された盲目のミュージシャン、ラウル・ミドン。2005年にスティーヴィー・ワンダーが参加したデビューアルバム『ステイト・オブ・マインド』は驚異的なギター・テクニックと感性豊かなヴォーカルで世界を驚かせた。アコースティック・ギターをパーカッションのように打ち鳴らし、マウストランペットなどのテクニックを駆使したヴォーカルは個性的だ。しかし、彼の魅力は、技巧によるものではなく彼が生み出す感情と感性のグルーヴだ。R&B、ジャズ、ソウル、ラテンなど様々なフレーバーが混ざり合った彼のサウンドは私たちに風景を見せてくれる。(SS)
*8月30日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/
*8月31日 9月1日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/


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「東京JAZZ2011
 10回目を迎える≪東京JAZZ2011≫が9月2日〜4日まで東京国際フォーラム ホールAで開催される。海外からの著名アーティス達はもちろん、日本を代表するジャズ界の気鋭のミュージシャン、そしてロックな布袋寅泰、大ベテランのデイヴィッド・T・ウォーカーも参加するのだ。まさに国境を超え、世代を超えてのビッグ・ミュージック・フェスティバル!今回も大いに盛り上がりたい!!(YK)
http://www.tokyo-jazz.com/


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「マキシ・プリースト&ビッグ・マウンテン
 UKとUSのベテラン・レゲエ・ミュージシャンが競演する。マキシ・プリーストはジャマイカ系イギリス人。84年にシングル「ヘイ・リトル・ガール」でデビューし85年にはジャマイカのチャートで1位を記録した。そして90年にリリースしたシングル「クロース・トゥ・ユー」はビルボードで1位を記録し一躍人気者となる。日本では織田裕二にドラマ『踊る大捜査線』の主題歌「ラブ・サムバディー」を提供し名前を知られた。ビッグ・マウンテンは80年代半ばにサンディエゴで活動をはじめ、ピーター・フランプトンのカバー曲「ベイビー・アイ・ラヴ・ユア・ウェイ」が世界的にヒットした。どちらも、ポップ・レゲエ・サウンドの心地よさを持ち味としている。どんなコラボを聞かせてくれるのか、モヒートを飲みながら楽しみたい。夏の暑さが残る都会にはピッタリ。(SS)
*9月12日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合せ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/
*9月13日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合せ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/


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「デフ・レパード来日公演
 6月7日のアイルランドでの公演を皮切りに、ワールド・ツアーをスタートさせたデフ・ レパードの3年振りとなる来日公演が決定した。7月20日には、デビュー32年目にして初のライヴ・アルバム『ミラー・ボー ル』もリリースされる。今回のワールド・ツアーは、結成以来どんなに大きな困難もメンバーの努力と協力で克服し、現在もHR/HM界のモンスターとして君臨するデフ・ レパードにとって集大成のライヴになることは必至だ。デフ・ レパード・ファンのみならず、ロック・ファン必聴の熱きライヴであることは間違いない。(UK)
*11月5日 グランキューブ大阪
*11月 7日 東京国際フォーラム ホールA
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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「エアロスミス来日公演
 今やアメリカン・ロック・バンドの枠を超え、ロックの殿堂入りを果たし、世界最強のロック・バンドとして地位を確立したエアロスミスの7年振りとなる来日公演が決定した。紆余曲折の上、オリジナル・メンバーにより復活し大成功を収め、現在も尚多くのファンを虜にして止まないエアロスミスのエンターテイメントなライヴは、「ドリーム・オン」、「ウォーク・ディス・ウェイ」、「ミス・ア・シング」等のヒット曲で観客を魅了し、大迫力で迫ってくる。ロック・ファンのみならず音楽ファン待望のライヴは、今年のハイライトを飾ることだろう(UK)
*11月22日 いしかわ総合スポーツセンター メインアリーナ
*11月 25日 広島グリーンアリーナ
*11月28日、30日 東京ドーム
*12月 2日 マリンメッセ福岡
*12月 6日 京セラドーム大阪
*12月 8日 愛知県体育館
*12月10日 札幌ドーム
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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