2011年4月 

 
Popular ALBUM Review


「ライヴ・アット・シェイ・スタジアム/ビリー・ジョエル」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP3066〜69)*デラックス・エディション=4枚組(2CD + 2DVD)
 ビリー・ジョエルはこんなにグレイトなスーパースターだったのかと、
改めて再認識するのがこのライヴだ。ニューヨーク・メッツの本拠地シェイ・スタジアムが取り壊されるにあたって、2008年7月16、18日、最後となるコンサートが行われたが、その主役がビリーだった。155分、まさに全力投球で突っ走る。歯切れのいい「怒れる若者」「マイ・ライフ」に始まり「ニューヨークの想い」では、NY出身で80歳を超すトニー・ベネットを迎えて交互に歌う場面は、力とNYへの熱い愛情に満ちて、当夜の白眉となった。シェイ・スタジアムで最初のライヴを行ったのは1965年のビートルズ。ということで、ポール・マッカートニーが登場。大歓声の中で「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」と「レット・イット・ビー」を嬉しそうに一緒に歌ったのも印象深い。当夜はヒット曲ばかりでなく、実のある曲も加えていい構成なので、ビリーが実に多くの佳曲を残していることを強く感じる。また真のピアノマンであること。そしてこれだけ素晴らしい力唱を聴かせる魅力とスタミナ、スケールの大きさに感じ入る。ボーナス・トラックにはスティーヴン・タイラー、ロジャー・ダルトリー、ジョン・メレンキャンプも登場する。DISC3はメッツの歴史とビリーの歩んだ歴史をダブラせたドキュメンタリー映像。DISC1&2はDISC4と同じコンサートのCDとなっている。今年ビリーはソロ・デビュー40周年となる。(鈴木 道子)

Popular ALBUM Review



「ブギー・4・スチュ/ベン・ウォーターズ」(ワードレコーズ/VQCD-10270)
 6人目のストーン、イアン・スチュワートは1985年12月、ノッティンガム/オールド・ヴィック・タヴァーンでロケット88のステージを務めた翌日の12日、この世を去った。デビュー寸前にローリング・ストーンズのメンバーを外されたスチュだったがその後ずっとグループのキーボード奏者/ロード・マネージャーとして活動。彼の魂こそRSの基本であるということはキース・リチャ—ズはじめメンバーから何度も聞いた。そんなスチュのトリビュート・アルバムをブギ・ウギキーボード奏者で最近はチャーリー・ワッツとともにジャズ活動をしているベン・ウォーターズが完成させた。ミック・ジャガー、キース、チャーリー、ロニ—・ウッド、そしてビル・ワイマンらも参加している。ストーンズ・ファンならば絶対的に聴かなくてはならないと声を大にして言わせていただく。尚、この作品は限定2枚組LPでも登場する。
http://wardrecords.com/SHOP/WRDLP002.html  (Mike M. Koshitani)


Popular ALBUM Review

「ミシシッピー・マイル/ジョン・オーツ」(ビクターエンタテインメント/VICP-64942)
 ポップ・ミュージックを極め一昨年秋には集大成の4枚組BOXも出してひとまず終着駅に着いた感のあるホール&オーツからいったん下車したジョン・オーツが今度は逆方向に向かう列車に乗り込んで一気に始発駅に戻った、みたいなあれで。ソロ3作目はブルース、R&B、ロックン・ロールいった自身の'ルーツ'にどっぷり。とはいえインプレッションズやコースターズ、パーシー・メイフィールド、プレスリーらのカヴァーだけではなく筆者なんぞはザ・バーズ等で聴いてフォーク・ロックとしておなじみ「He Was A Friend Of Mine」や何とホール&オーツの「You Make My Dreams」(1981:No.5)までもそれ風に仕立て上げて♪(目から鱗がパラリンと)。ベッカ・ブラムレットらも参加したナッシュヴィル録音で非常に興味深い内容。H&Oファンも後学のために是非聴くように!(上柴 とおる)


Popular ALBUM Review


「ロング・プレイヤー・レイト・ブルーマー/ロン・セクスミス」(ヤマハミュージックアンドビジュアルズ/YMCP-10002)
 ロン・セクスミスはポール・マッカートニー、エルヴィス・コステロ、ジョン・ハイアットなどから高く評価されているカナダのシンガー/ソングライター。2年半ぶりの第11作は特にポップな佳曲が並んでいる。今回はボン・ジョヴィ、メタリカとの仕事で知られるボブ・ロックをプロデューサーに迎えている。タイトル曲「レイト・ブルーマー」は遅咲きの気概を歌っているが、彼はやや遅めに人気が出た。カントリー色もあるフォーキーな作りは人懐っこく、ポジティヴで若々しい詩情を素直に伝えている。のりのいい「ゲット・イン・ライン」。「ヘヴン」「ラヴ・シャイン」など、メロウなラヴ・ソングもいい。(鈴木 道子)

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「ケイシー・バタグリア/ブリング・イット・オン」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-14088)
 8年振りに来日を果たしたセクシー・ディーヴァことケイシー・バタグリアの全米ホット・ダンス・クラブ・プレイ・チャートNo.1シングル「クレイジー・ポゼッシヴ」と「ボディー・ショット・フィーチャリング・リュダクリス」を含む新作。どうしても過激なダンスやセクシーさが注目されてしまうケイシーだが、本作は彼女の知的な一面を垣間見ることが出来、大人のケイシーを堪能させてくれる。また、力強さと繊細さを併せ持つ「シーイング・ユー・トゥナイト」は、聴き応え充分なバラードの佳曲に仕上がった。様々なジャンルの音楽を吸収し、シンガー/ソングライターとして一段と成長したケイシー・バタグリアが、今後もダンス・チャートを牽引することだろう。(上田 和秀)

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「アイム・ヒア/リーナ・ダーリン」(プロダクション・デシネ/VSCD-9385)
 やっぱり北欧系は安心してお勧め出来ますな♪フィンランドはヘルシンキから届けられたこのアルバムはリーナ・ダーリンという女性シンガー/ソングライターのデビュー作。これはイケます♪ちょっとソウル色のある声でしっかりと歌いお初の盤とは思えないような安定感のある歌唱でいろいろなスタイルの楽曲を柔軟に。中でもポップ感覚100%の甘酸っぱい香りと懐かしさも漂う②「オール・アイ・ワナ・ノウ」はピカイチ♪(個人的にあまりにもど真ん中でビックリ!)。AORな⑦、ゴスペルな⑧、古式豊か?なオルガンの味わいも心地好いこれまたソウルな⑪。。。などツボの押さえも抜かりなし!?(上柴 とおる)

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「イン・ザ・モーニング・ウィル・ミート/ジョルジオ・トゥマ」(プロダクション・デシネ/VSCD-9386)
 
イタリアの男性シンガー/ソングライターの3作目、と紹介してもそれだけでは「ふ〜ん?」でパスされてしまいそうなのでとりあえず先に③と④を続けて聴いてもらいましょ。「え〜!?」と驚くこと受け合い(ってそれは私の第一印象でしたが)。いったいどうしたん?と。1960年代後期のキュートで繊細ないわゆるソフト・ロックそのもので。。。今の時代に、しかもイタリアにこんなミュージシャンが居たリアとは(苦しい。。。)。ロジャー・ニコルズとかあのあたりに関心ある人でこれをパスしてしまうようなら遠島を申しつける!ほんとメロディー作りや曲の持って行き方が何とも小憎らしい♪どんな才能かいなと。(上柴 とおる)

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「シングル・ボックス 1971-2006/ザ・ローリング・ストーンズ」(ユニバーサルミュージック/UICY-5011〜55)
 1970年代からのローリング・ストーンズ・レコーズでストーンズがUK/USコマーシャル・リリースした45枚のシングルをセットにした豪華ボックス。そのディスクには、オリジナル・アルバム未収録曲、オルタネイト・ヴァージョン、ライヴ・ヴァージョン、リミックス・ヴァージョンなど、当時UK/USでリリースされた各種形態のB面曲をほぼ漏らさず収録。 総トラック数=173曲(内23曲重複)、オリジナル・アルバム未収録曲/ヴァージョン=91曲、初CD化曲/ヴァージョン=12曲。英文ライナー訳、歌詞対訳に加え詳細なリリース・データ、全ての日本盤7"シングルのジャケットを掲載した、168Pダイカットカバー日本語ブックレットもしっかりチェックして欲しい。(Mike M. Koshitani)

Popular ALBUM Review

通常盤


初回限定盤

「明日に架ける橋(40周年記念盤)/サイモン&ガーファンクル」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3043〜44=CD+DVD通常盤 SICP-3040〜42=2CD+DVD初回限定盤)
 名盤『明日に架ける橋』から40周年となるのを記念して、サイモン&ガーファンクルの3枚組特別盤が出る。DISC1は『明日に架ける橋』、DISC2は彼らの最盛期でありラスト・ツアーとなった『Live1969』、若さが輝いている。そしてDISC3は『ソングズ・フォー・アメリカ』と『ハーモニー・ゲーム』からなるDVDで、前者はS&G初のTVスペシャル。69年秋放映で彼らの思考を明快に表した幻のドキュメンタリーだ。普通の歌番組を望んだスポンサーと真っ向から対立しながら、社会に対する思いをたっぷり盛り込んだ作品で、実に見応えがある。暗殺されたケネディ兄弟、キング牧師はじめ、ベトナム反戦、自由民権運動等のドキュメンタリーやアメリカを象徴するイメージなどを、S&Gの魅力的な歌声と重ね合わせた力作だ。若い日の彼らがいかに充実した日々を生きていたかが生き生きと伝わってくる。『ハーモニー・ゲーム』は新たに制作されたインタビュー・フィルム。『明日架け』のメイキングや関係者の証言を加え、貴重な映像とともに内容の濃い作品となっている。(鈴木 道子)

 “70歳になるなんて、とても考えられない”アルバム「ブックエンド」からの1曲「旧友」の中でこう歌っていたサイモン&ガーファンクル。その彼等がまさに70歳を迎えようという今年、今なお共に現役アーティストとして活躍し続けているとは本人達も想像していなかったのではないか。それを思うととても感慨深いものがあるが、そんな中で陽の目を見ることになった「ソングズ・オブ・アメリカ」。40年たった今もそのメッセージが十分通用することに、変わったようで変わらないアメリカの素顔が透けて見える。そして彼等の歌声の何と瑞々しいことか。一番いい時期のライヴ映像は勿論、ふたりでベッドに腰掛け、口ずさんでいる歌声でさえ心に響く。「ザ・ハーモニー・ゲーム」もファンには必携もので、当時の珍しい映像も僅かではあるが含まれており、アルバムについて素直に語られるコメントの数々も貴重で、且つ大変興味深い。(滝上 よう子)

Popular ALBUM Review

「HITS & RARITIES/LESLEY GORE」(Teensville:tv as 1003)*輸入盤
 
1960年代の'ガール・ポップ'を代表するレスリー・ゴーアの'マニアック'な編集盤!ゆえに「It's My Party」も「You Don't Own Me」も、そして「California Nights」(一番好きな曲♪)も収録なし!中〜小ヒット+100位以下曲+未発表4曲=全18曲。クインシー・ジョーンズが制作を手掛けていた初期だけではなく、それ以降のシェルビー・シングルトンやボブ・クリュー、ハーブ・バーンスタイン、ポール・レカらが制作にタッチした魅力的な楽曲の数々にスポットを当てたいという思いからの企画ならばそれは筆者も同様♪ちなみにこTeensvilleというのはシドニーのRare Rockin Recordsのレーベル(昨今ここは要注目!)。
 未発表音源は「恋と涙の17才」「ジュディの涙」のイタリア語版と1978年、1989年の楽曲。すでに2枚組のベスト盤(1996年)を持ってたけど意気に感じてこれも即購入〜♪(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review

「リベロ/ファブリッツィオ・ボッソ」(ポニーキャニオン/MYCJ-30586)
 ファブリッツィオ・ボッソはイタリアを代表するモダン・ジャズ・トランペッターだが、その実力はアメリカを含めてもトップのひとりにランクされると思う。彼はグループ・ハイ・ファイブのリーダー的存在でもあるが、本作はソロ・アルバム。共演はロベルト・セチェート(g)、ルカ・マヌッツァ(p)、ルカ・ブルガレッリ(b)、ロレンツォ・ツウッチ(ds)で、みんなレベルが高い。ボッソのトランペットはブリリアントで力強く、フィーリング的にも新しい。ウェイン・ショーターの「フット・プリンツ」、ファッツ・ウォーラーの「ジタバグ・ワルツ」、ジョン・コルトレーンの「インプレッションズ」も新感覚で演奏されていて、楽しい。またボッソは自作を5曲演奏しているが、これも悪くない。いまボッソはイタリアン・ジャズのリーダー格だ。(岩浪 洋三)

Popular ALBUM Review

「私の時間/ベスト・オブ・ホリー・コール」(EMIミュージック・ジャパン TOCP-71060)
 3月に来日し、再注目されている女性ジャズ・ポップス歌手、ホリー・コールのベスト盤。数多い彼女のアルバムからポップな曲を中心にピック・アップされており、これ1枚で彼女の魅力がよくわかる。16曲入りで、「テネシー・ワルツ」「シャレード」「ケ・セラ・セラ」「イフ・アイ・ワー・ア・ベル」「マイ・フーリッシュ・ハート」「コーリング・ユー」などはとくに聴きもの。原曲をあまり崩さずに素直に、ストレートに歌っているのがいい。このベスト盤を聴き、彼女のよさを再発見した。(岩浪 洋三)

Popular ALBUM Review

「Harmonia & Vozes / Toninho Horta」(Minas Records MR010/10) *輸入盤
 トニーニョ・オルタの新作はイヴァン・リンス、ジャヴァン、エラスモ・カルロス、セルジオ・メンデスら、かねてから親交の深いアーティストたちをゲストに迎えた豪華盤。「Harmonia & Vozes」のタイトルどおり、ふくよかなギターの音色と、平和への願いを込めた澄んだ歌声が見事に調和している。自身、26のリーダー作を持ち、多くのミュージシャンをサポートし、共演してきたトニーニョならではの作品といえよう。40年を超える音楽活動から醸成された芳醇な香りが漂ってくる逸品だ。ボーナス・トラック2曲を含めた16曲はいずれも彼のオリジナル楽曲。2010ラテン・グラミー賞ベストMPB部門にもノミネートされた。(三塚 博)

Popular DVD Review

「TROUBADOURS /THE RISE OF SINGER SONGWRITER」(CONCORD/HRM-32078-00) DVD + CD *輸入盤
 キャロル・キングとジェイムス・テイラー、セクション組のリユニオン(2007年)を記録したライヴDVDと同じティームによって制作された映像作品。日本公演を含む世界ツアーのきっかけともなった「再会」の舞台、トルバドールと、その伝説的なクラブがシンガー/ソングライター・ムーヴメントにはたした役割をテーマにしたドキュメンタリーで、キャロル、ジェイムス、ジャクソン・ブラウン、エルトン・ジョン、デイヴィッド・クロスビー、ボニー・レイット、ピーター・アッシャー、ロジャー・マッギン、チーチ&チョンらの証言とともに貴重なライヴ映像が紹介されている。とくに興味深かったのはスティーヴ・マーティンの証言。別の立場から眺めていた彼をフィーチュアすることによって、時代の変化やうねりをより明確に描くことができたようだ。CD版はキャロルやジェイムスら常連アーティスト10組の代表曲をオリジナル・テイクで収めたもの。(大友 博)

Popular BOOK Review

「ロング・グッバイのあとで〜ザ・タイガースでピーと呼ばれた男—〜/瞳みのる・著」(集英社)
 本書著者の瞳みのるは、1960年代後半にグループサウンズ・ブームの頂点に君臨した“ザ・タイガース”でドラマーとして活躍。“ピー”の愛称で人気者だったが、71年1月の解散コンサートを最後に芸能界から引退。ファンの前から姿を消し、メンバーの誰とも顔を合わせることなく学業に専念。大学院終了後は母校にて教鞭を執っている、とファンの間で知られていた。2008年後半、ザ・タイガース時代の仲間である沢田研二、岸部一徳、森本タローの3人が瞳みのるに贈った「Long Good-by」(本書のタイトルにもなっている)という曲を耳にしたことが転機となり、メンバーと元マネージャーの中井國二との実に37年振りとなる再会が実現。ファンが待ち望んだこの瞬間の模様は本書にて詳しく述べられている。本書では“GSスターから中国語教師(現在は退職)への転進”という他に類を見ない著者の半生が、彼自身の飾りのない言葉で、ありのままに綴られている。個人的にはやはりザ・タイガース時代の話題に惹かれたが、料理の話など中国の文化に関する興味深い記述も多い。また著者の手による詞も掲載されており、すでに曲も付けられているという。そのひとつが「老虎再来」というタイトル。今後の活動への期待が膨らむ。(町井 ハジメ)

Popular CONCERT Review

「二葉百合子 さよなら公演」 2月10日 大宮ソニックシティ
 文字通りの引退ステージとなったNHKホール公演のチケットがとれなかったので、大宮まで聴きにいった。二葉百合子は今年で80歳。「声の出るうちに引退したい」ということだそうだ。約2時間のライヴのうち、二葉が歌うのは半分に満たないが(あとは愛弟子である石原詢子のオンステージ)、確かに声はとてもよく伸び、声量もたっぷり。最後は20分以上かけて、フルコーラスで「岸壁の母」を歌った。御存知かと思うがこの曲、もともとは菊池章子の持ち歌で二葉が創唱したわけではない。しかし「マイ・ウェイ」とフランク・シナトラが切り離せないように、「ヘイ・ジョー」とジミ・ヘンドリクスが切り離せないように、「岸壁の母」は二葉百合子のショウケースなのだ。濃厚なエモーション、静かに煮えたぎるプロテスト精神に、改めてこの曲が“反戦歌”であることを認識させられた。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「ヘイリー・ロレン」 2月15日 COTTON CLUB
 昨年、ビクターエンタテインメントから発売されたアルバム『青い影』で一躍人気がでたアラスカ生まれの新星、ヘイリー・ロレン。昨年の9月と11月に続いてはやくも3回目の来日だ。今回は、前回一緒だったマット・トレダー(p)の他、初来日の口笛も上手いモー・シュナイダー(b)とブライアン・ウェスト(ds)のトリオに昨年の銀座ジャズで共演した太田剣(sax)が客演。黒いミニのワンピースで登場した彼女は、若々しく飾り気がなく親しみ易い感じだ。お目当ての「青い影」から、ジャズ・スタンダード、ラテン物、シャンソン、自作曲と幅広い持ち歌を両手をくねらせ膝で拍子をとり全身を使って表現する。感極まったように声が裏返ってしまうような所もなかなか色っぽい。この人は、CDで聴くよりライヴの方が魅力が増すタイプの楽しい歌手だ。アンコールでサザン・オールスターズの「いとしのエリー」を歌ったが、アレンジも歌唱も平凡でもっと工夫すればインパクトが違ったのにと残念に思った。(高田 敬三)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久

Popular CONCERT Review
「アル・ジャーディン and ヒズ・エンドレス・サマー・バンド/パフォーミング・ザ・ヒッツ・オブ・ザ・ビーチ・ボーイズ」 2月18日 Billboard Live TOKYO
 ザ・ビーチ・ボーイズで白いストラトを弾いていたアル・ジャーディンが、2人の息子と6人のバンド・メンバーを従えステージに登場。オープニングはおなじみの「カリフォルニア・ガール」でスタート。ノリの良いサーフィン・サウンドから、ホット・ロッド・サウンドへと続き客席はヒートアップしていく。アル・ジャーディンは、ザ・ビーチ・ボーイズでもリード・ヴォーカルを取っていただけあり、声量も十分でギターだけでなくヴォーカルでもしっかり楽しませてくれた。2010年に発売されたソロ・アルバム『ア・ポストカード・フロム・カリフォルニア』からも4曲を披露。ファミリー・バンドの和やかな雰囲気がMCなどでも伝わってくる。そして、終盤は「ココモ」「サーフィンUSA」「ファン・ファン・ファン」とザ・ビーチ・ボーイズの代表曲で盛り上げてくれた。再結成、ぜひともお願いしたい。(鈴木 修一)
写真:acane

Popular CONCERT Review

「加藤登紀子 Live in STB139〜Song For Love〜」  2月19日  STB139
 シャルル・アズナヴールもジャック・ブレルもエディット・ピアフもみんな加藤登紀子になった。パリの思い出を語り、シャンソン歌手について話しながらのステージは、自宅の客間に招かれた暖かさがあり、どんな歌も自分のものにしてしまう彼女に、さすが登紀子と感心する。第1部はシャンソンの名曲が中心で、尾崎豊の「I Love You」もいい味わいのシャンソンにしていた。第2部は島健(p)、納浩一(b)に加え、バンドネオンのてい鵬が入ってピアソラの「忘却」でカラーを変え、未発表の新作も加えて客席を巻きこむ。自分を重ね合わせて歌う登紀子には、年輪から溢れ出る魅力がいっぱいだった。(鈴木 道子)
写真:Machiko Tsuchimoto(Tokiko Planning)

Popular CONCERT Review

「永井隆雄」 2月22日 西荻アケタの店
 13歳のときにジャズに開眼、70年代からプロ活動を続け、バック・バンドの一員として映画「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾」にも出演しているピアニストが永井隆雄だ。新作『Midnight Voyage』リリースをこの春に控えた彼が、畠山芳幸(b)、金井塚秀洋(ds)と共にホームグラウンド「アケタの店」に登場した。普段はサックス奏者のCDを愛聴していることが多いというだけあって、この日もマイケル・ブレッカーで有名な「エル・ニーニョ」、ウェイン・ショーター作「ブラック・ナイル」、ジェリー・バーガンジの知られざる「ラウド・ジー」などをとりあげ、ピアノ・トリオ編成で鮮やかに再生した。永井のタッチは実に力強く、アドリブ・フレーズは明快でスピード感がある。叙情的なピアノ・トリオが多い昨今、ガッツを感じさせてくれる貴重な存在だ。(原田 和典)

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「クール&ザ・ギャング」 2月25日 Billboard Live TOKYO
 オリジナル・メンバーのジョージ・ブラウンが、急遽、体調不良で入院し来日できなくなったのは残念。しかし、一発目のドラムが鳴った瞬間から客席はディスコ状態。オーディエンスは完全に踊りに来ている。9人のメンバーがのせまくる。マイケルの「今夜はドント・ストップ」も登場。ヴォーカルはジェイムス・JT・テイラーがいて欲しいところだが、若いショーン・マッキラーとラベル・エバンスが、魅力的な歌声を聴かせてくれ満足。ロバート・クール・ベル、デニス・トーマスの御大も華麗にステップを踏んでくれた。身体が勝手に動き出す。「ジョアンナ」「ハリウッド・スウィンギン」「ジャングル・ブギー」「チェリッシュ」の4連発にはノックアウトされた。最後は「セレブレーション」で会場大盛り上がり。いつまでも余韻が残る、ファンキーなライヴだった。(鈴木 修一)

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「ダリル・ホール & ジョン・オーツ DO WHAT YOU WANT BE WHAT YOU ARE Japan Tour 2011」 2月28日 東京国際フォーラム ホールA
 1980年代前半のセンスの良いプロモーション・ビデオのイメージではなく、元来のR&Bを主体としたロック・バンド・スタイルで登場したダリル・ホール&ジョン・オーツの6年振りとなる来日公演は、大ヒット曲「マンイーター」で幕を開け、70年代中盤から80年代中盤にかけての彼らのベスト選曲が続き、この日集まったファンを大いに喜ばせた。唯、ダリル・ホールがヴォーカル/ギター/キーボードと張り切っているにも拘らず、ジョン・オーツが「ラスベガス・ターンアランド」のみリード・ヴォーカルをとり、ギターも余り弾かずに元気が無かったのが気になった。それでも2度のアンコールでファンの期待に応え、「プライベート・アイズ」でラストを飾るところはさすがであった。(上田 和秀)
写真:田浦薫

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「ジョージ・デューク」 3月2日 Billboard Live TOKYO
 ちょうど1年ぶりの来日公演。前回よりもメンバーが少なくなった4人編成だ。レパートリーに大きな変化はないと予想したのだが、それは嬉しく裏切られた。1曲目の「6オクロック・イン・ザ・モーニング」はソロ・リレーで楽曲を発展させる、即興性の高い内容。80年代のマイルス・デイヴィス提供曲をメドレー仕立てにし、前半はフュージョンというよりもジャズ色の濃い演奏となった。中盤ではアコースティック・ピアノに向かって「スウィート・ベイビー」と『ブラジリアン・ラヴ・アフェア』収録曲で、長年のファンを喜ばせた。さらにアンコールでは「高音が出ない」と断りながらも、大ヒット曲「シャイン・オン」を熱唱。その心意気を含めて、デュークのサービス精神が光った。(杉田 宏樹)
写真:acane

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「リクライニング・コンサート・シリーズ リクライニング・クラシック 第76回 ギターの日」 3月2日 Hakuju Hall 
 好評のリクライニング・コンサート・シリーズも第76回を迎えた。この日の登場はギタリスト、エマヌエーレ・セグレ。1965年イタリア出身、ジュリアン・ブリームやジョン・ウィリアムズに師事したこともある。愛器片手に世界各地を飛び回っているセグレだが、日本でのソロ・リサイタルは今回が初めて。いわゆる狭い意味でのクラシック音楽にとどまらない、“土の香りのするギター・ミュージック”を演奏する奏者という印象を個人的には受けた。演目はヴィラ=ロボスの「前奏曲 第1番」、「ショーロス 第1番」、「練習曲 第11番」、ジュリアーニの「ロッシニアーナ 第1番 op.119」等。一部演目に巨匠カルロス・バルボサ=リマのアレンジが使われていたのも印象に残った。セグレもカルロス同様、ジャンルを超えたギター弾きとして認められることだろう。(原田 和典)


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「EXPERIENCE PRS in JAPAN」 3月5日 渋谷DUO MUSIC EXCHANGE
 アメリカのギター・メーカー、ポール・リード・スミスのイベント。PRSは1985年に設立され、現在ではサンタナをはじめとする世界の一流ギタリストに使用される高品質・高音質のギターを作っている。“EXPERIENCE PRS”は米メリーランド州アナポリスにある広大な敷地を有する同社工場で毎年行われているが、今回初めて日本での開催となった。ポール・リード・スミス氏本人によるセミナーからイベントは始まり、そのあとは内外のアーティストによるライヴが行われた。まずはトニー・マクマナスによるアコースティック・セット。PRSのアコースティック・ギターへの参入をアピールした。続いてガールズ・バンド、ガチャリックスピンの登場。ここには鮫島巧がゲスト・ギタリストとして参加した。そして、注目のポール・リード・スミス・バンドには、マーティー・フリードマン、浅野孝乙己、鈴木健治、デイヴィ・ノウルズが、またキーボーディストとして谷口喜男が参加。ここでは、PRS独特の甘くて太いトーンは同じながら、それぞれの持ち味の出たサウンドとプレイを聴かせてくれた。同じことは、ichiroをゲストに迎えた住友俊洋スペシャル・バンドにも言える。ichiroの使用ギターが日本未発売のシングル・コイルのモデルだったこともあるが、PRSらしいトーンの上に、住友とichiroそれぞれの個性がしっかりと乗っていた。やはりギターとその使い手の味が融合することによって、トーンというものは生まれるのだと実感させられた。そして、再度ポール・リード・スミス・バンドの登場。ここには、山本恭司、Toshi Hiketa、安達久美、住友俊洋、ichiro、デヴィッド・グリッソムが順次ゲストとして加わった。通常のライヴではないので、どうしてもリハーサル不足な部分もある。しかし、だからこそ一期一会の素晴らしいケミストリーが生じる瞬間もあって、目と耳を離せない演奏が繰り広げられた。そのあとは、PRSギターが当たる抽選会が行われ、2人の若い男性にPRSギターがプレゼントされた。そのうちの1本はオリアンティ・モデルで、この日のシークレット・ゲストだったオリアンティ本人からギターが手渡された。締めくくりはそのオリアンティによるスペシャル・ライヴ。サンタナ直伝と言ってもいい、艶かしいPRSサウンドを存分に響かせてくれた。最後には、全出演者がステージに上がる。感謝の言葉を述べるポール・リード・スミスの目には、涙が光っていた。単なるプロモーション・イベントを超えた、ギターとミュージシャンの絆、そしてミュージシャン同士の絆を感じさせてくれる素晴らしい時間が、そこには流れていた。(細川 真平)


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「イーグルス」 3月6日 東京ドーム
 通算5回目の来日公演を、最終日、東京ドームで観た。ドン、ジョー、ティモシーが63歳、グレン62歳。高度な演奏をこなしながら全員で鉄壁のハーモニーを聞かせるという、彼らがずっと維持してきた姿勢を考えると、さすがにこの年齢はきついかなと思ったのだが、若干の衰えは感じさせながらも、3時間にわたって、「セヴン・ブリッジズ・ロード」から「デスペラード」まで、幅広い年齢層のファンを満足させるプログラムを楽しませてくれた。ホーンを含めるとサポート・メンバーが8人もいて、彼らに任せる場面が目立ったものの、たとえば「ホテル・カリフォルニア」や「呪われた夜」など重要な曲ではドンがしっかりと、あの独特の叩き語りを聞かせている。個人的にとても嬉しく思ったのは、2007年の作品で、イーグルスの音楽の重要な要素である文明批評的スタンスの健在ぶりを示した『ロング・ロード・アウト・オブ・エデン』がきちんとクローズアップされていたこと。ラヴ・ソングの形をとりながら、深い部分に強烈な皮肉や時代へのメッセージが込められた「ウェイティング・イン・ザ・ウィーズ」(「夏の約束」という不気味な邦題がなんとも辛い)には、とりわけ感動した。客の入りがよくなかったことは残念だったが、間違いなく、「これが最後」ということではないはずだ。(大友 博)
写真:(c)TAULab


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「ティアニー・サットン」 3月8日  COTTON CLUB
 ティアニー・サットンは、グラミー賞に3度もノミネートされた実力派のジャズ・ボーカリストだが、来日は、今回が初めてだ。クリスチャン・ジェイコブ(p)ケヴィン・アクスト(b)レイ・ブリンカ—(ds)とのユニットは、ザ・ティアニー・サットン・バンドとして(ベース奏者は、一度変わったが)過去18年間一緒にやって来ている。音楽的なデシジョンもビジネスのデシジョンも全て4人の合議で決めているという固い結束のグループだ。それを表すようにステージのセッティングも椅子に座る彼女を囲むミュージッシャンの距離も通常より近いようだ。オープニングの「Fly Me To The Moon」からアンコールの「Something Cool」まで12曲、練り上げられたアレンジによる見事な歌と演奏で始終ステージに惹きつけられた。こういうグループが初来日とは何か不思議な感じだった。(高田 敬三)
写真提供:COTTON CLUB 
撮影:米田泰久


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「シンディ・ローパー  メンフィス・ブルース・ジャパン ツアー 2011」 3月16日 Bunkamura オーチャードホール
 こんな時だからこそミュージック・パワー!シンディ・ローパーのジャパン・ツアーは各地で大旋風を巻き起こした。最新作『メンフィス・ブルース』をひっさげての実に力強いLIVEに感動。ロックのルーツとして決して通り過ごすことが出来ないブルースに真摯に取り組んだその姿勢が東京初日のステージからも実にダイレクトにうかがえた。アルバム同様にリトル・ウォルター作品の「ジャスト・ユア・フール」でスタート(歌詞にはジャッキー・チェン)、『メンフィス〜』からは6曲も登場。中でも2曲目のローウェル・フルスンの名作「シャッタード・ドリームズ」はドラマティックな出来映え。そしてもちろん「シー・バップ」「グーニーズはグッドイナフ」「チェンジ・オブ・ハート」「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」「タイム・アフター・タイム」のヒット作でも観客の大きな声援が飛んだ。そして、ファイナルは「トゥルー・カラーズ」。『メンフィス〜』にも参加のTOKUの熱演もシンディをより盛り上げていた。大震災支援活動を積極的に行い、みんなで頑張ろうと22日@大阪NHKホールでの最終公演はニコニコ動画で生中継配信されアクセス数は13万を超えた。ありがとう、シンディ・ローパー。(Mike M. Koshitani)
写真:畔柳ユキ


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「菊田俊介」 3月19日 四ツ谷BLUE HEAT
 3月初旬からジャパン・ツアーを行っている誌がご在住のブルース・ギタリスト、菊田俊介のライヴ。音楽で日本にパワーを!そうした意気込みで3.11以降、出来る限りライヴを敢行している。この日も予想を上回るブルース・ファンで開場は大盛況。まず東日本大震災で亡くなられた方々への黙とう、そしてステージがスタートを切った。「Everyday I Have The Blues」「Superstition」「Little By Little」「I Play The Blues For You」「Mustang Sally」「Sweet Home Chicago」といったブルース/R&Bのカヴァーに菊田オリジナルの「Chicago Midnight」等を鏤め、圧巻なギター&ヴォーカルを披露したのだ。2部構成で後半には菊田を慕う多くのプロ&アマ・ミュージシャンがジョイントしてのセッションも繰り広げられた。会場では東北地方太平洋沖地震被災者義援金募金も・・・。(Mike M. Koshitani)
写真:石橋素幸


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「ヘレン・メリル
 昨年4月以来、1年振りのヘレン・メリルのBlue Note出演。彼女の音楽の最大の理解者で最愛の夫、作編曲家、ピアニストのトリー・ジトーを失った痛手から立ち直り、彼女は、音楽活動を精力的に再開している。この1月には自己のトリオと共にイスラエルへ渡りテル・アヴィヴで大コンサートを成功させた。3月にはギル・エヴァンスの生誕100年を祝うコンサートに多くのジャズ・メンと共に出演してギル・エヴァンスのアレンジによる「サマータイム」を歌う予定だ。ギル・エヴァンスの本を書いたステファニー・クリ—ズの司会で、マリア・シュナイダー、フィル・ウッズ等とギルの音楽に関するパネル・ディスカッションも計画されている。4月の来日公演の後は、6月に両親の故郷のクロアチアからイタリア、英国と廻る予定だ。やる気が充ち満ちてきた感じのヘレン・メリルの今回の公演は、本当に楽しみだ。(KT)
*4月24日 25日 27日 Blue Note TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/
*4月30日 Motion Blue YOKOHAMA  2回公演
お問い合わせ:(045)226-1919
http://www.motionblue.co.jp/
*5月1日 NAGOYA Blue Note 2回公演
お問い合わせ:(052)961-6311
http://www.nagoya-bluenote.com/


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「STAX! フィーチャリング・スティーヴ・クロッパー ドナルド“ダック”ダン&エディ・フロイド
 フロム・メンフィス・テネシ—、スタックス・レコードからは1960年代にオーティス・レディングはじめ多くのヒット作が僕らに届けられた。FENで楽しみジ・アザーで踊り、YAMAHA経由やホントはいけないんだけど立川や福生の基地内でUSLPをゲットしてSATAX/VOLTを堪能した。そんな時代に「ノック・オン・ウッド」をヒットさせたエディ・フロイド、そしてブッカー・T&ジ・MGsのスティーヴ・クロッパ—&ドナルド・ダック・ダン。この3人をフィーチャーしてのスタック・レビュー。エディは久しぶりだ!もう思いっきりライド・オンとシャウトしながらファンキー・ブロードウェイ。ですよネ、達郎さん・・・。(MK)
*5月3日 4日 7日 8日 Blue Note TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/
*5月6日 COTTON CLUB 2回公演
お問い合わせ:(03)3215-1555  
http://www.cottonclubjapan.co.jp/


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