ヘルバシオ・タラゴナ・ヴァリ
荒井里桜
アレッサンドロ・
ベヴェラリ
ノ・ヒソン
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第15回東京音楽コンクール 優勝者コンサート(1月8日、東京文化会館大ホール)
このコンクールは東京文化会館、読売新聞、花王(株)、東京都の4者が主催。新人演奏家の発掘、育成・支援を目的としている。今回の優勝者と、演奏曲目は下記のとおり。
ヘルバシオ・タラゴナ・ヴァリ(クラリネット)*木管部門第1位及び聴衆賞
荒井里桜(あらいりお)(ヴァイオリン)*弦楽部門第1位及び聴衆賞
アレッサンドロ・ベヴェラリ(クラリネット)*木管部門第1位
ノ・ヒソン(ピアノ)*ピアノ部門第1位及び聴衆賞
曲目:
ウェーバー:クラリネット協奏曲第2番 (ヴァリ)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 (荒井)
コープランド:クラリネット協奏曲(アレッサンドロ)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ノ・ヒソン)
指揮は、円光寺雅彦。管弦楽は新日本フィルハーモニー交響楽団。
司会は朝岡聡。
クラリネット第1位を二人で分け合ったことは珍しい。
ウルグアイ出身のヴァリは、完璧なテクニック。力強い音から繊細な弱音まで、表現の幅が大きい。ウェーバーの第3楽章の音の跳躍、超絶技巧は聴きものだった。
ヴァリの切れ味鋭い音に対し、イタリア出身のアレッサンドロのクラリネットは、やわらかく、聴く者を包み込むような温かな響きがある。
アレッサンドロは、ベニー・グッドマンに献呈されたコープランドの協奏曲が大好きと言うだけあり、ジャズの要素が使われた第2楽章は堂に入っていた。
荒井里桜は東京芸術大学音楽学部1年生。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲でのテクニックは安定しており、音程も正確。線がやや細く、表現はまだそれほど多様ではない。ただ、第1楽章カデンツァは堂々とした強さがあり、まだこの先伸びていくのでは、と思った。
最後に登場したピアノのノ・ヒソンは韓国出身。ソウル大学校1年生。テクニックがあり、音の立ち上がりが明快。チョ・ソンジンに似た印象。音楽全体のつかみ方が確固としており、一本筋が通っている。細かな表現の詰めなど課題はあるが、伸びしろは大きい。
クラリネットの二人はすでにプロとして活動している。その差は演奏に歴然と現れていた。荒井里桜とノ・ヒソンも今後演奏機会が増すごとに成熟していくことだろう。期待しよう。(長谷川京介)
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