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シューベルト:八重奏曲 ベルリン・フィル八重奏団(Wisteria Project/BPOC-0001 販売:ソニー・ミュージックマーケティング)
音楽と録音が一体となった理想的なCD。ホールのベストポジションで生演奏を聴いているよう。レコーディング・プロデューサーのクリストフ・フランケは、ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの立ち上げと運営責任者。彼が最も重視するのは、サウンドそのものではなく、音楽だと言う。技術を忘れて、音楽がもつ感情、美しさ、悲しみをいかに伝えるかに重点を置く。その言葉通りだと思う。
ベルリン・フィル八重奏団の演奏は、シューベルトの長大な音楽を、第1楽章から第6楽章まで、ひとつの物語のように聴かせる。演奏が始まるとすぐに、その心地よい流れに惹きこまれる。次々に披露される各奏者のソロを味わいつつ、楽章ごとに展開されるドラマを楽しむことができる。奏者全員が緻密なやりとりを交わすが、堅苦しさは全くなく、自然な呼吸に聞こえる。これだけのアンサンブルを作ることができるのも、ベルリン・フィルという母体で、日ごろからコミュニケーションができているからだと思うが、レコーディングに際して、完璧を期すため徹底的な議論を交わし、妥協は一切なかったということも大きい。繰り返し聴くにふさわしいCD(フランケ自身それを目的に制作した)と言えるだろう。(長谷川京介)
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