2017年9月 

  

Classic CONCERT Review

深貝里紗子ピアノリサイタル(8月5日 東京文化会館小ホール)

ドビュッシー:<アナカプリの丘>、映像第2集、<喜びの島>他
ショパン:3つのマズルカ作品56、幻想曲へ短調作品49、バラード第4番へ短調作品52他


 深貝は2011年の第9回東京音楽コンクールピアノ部門第2位だった。その「東京音楽コンクール入賞者リサイタル」を聴いた。冒頭、音量が豊かだった。そしてタッチがしっかり、テクニックも十分である印象を持った。深貝自身が書いたプログラム・ノートは人柄が出ていて好感が持てた。ドビュッシー、ショパン、ともに好きな作曲家とのことだが、音楽的にはまるで違う。ドビュッシーは標題音楽で、印象派の絵画的な作品だ。景色が目に見えるように、空気や自然の音が感じられるように演奏して欲しいが、その点少し不満が残った。また、一通り聴いた後、ppを聴かせるところや叙情的な表現がもう少しあればと思った。しかし、後半のショパンはよかった。こちらはむしろ絶対音楽的要素が強い。特に深貝がもっとも得意とする最後の2曲、幻想曲とバラード第4番は非常に説得力があった。それぞれ10分以上かかる大曲であるが、劇的なパワーで聴衆の心を掴む力量に感動をもらった。作品を知り尽くし、よく勉強している成果が演奏に表れていたと思う。このショパンを礎に今後さらに伸びていってほしいピアニストだ。(石多正男)