2010年3月 


Audio What’s New

T-2



T-3



T-3
「iPodと真空管アンプを匠の技が融合 デジタルソースに体温を吹き込む」
 CAVは上海に本拠地を置き、中国のシネコンで高いシェアを誇る業務用(劇場用)、家庭用スピーカーのリーディングメーカーである。元パイオニアの法月利彦氏を中心にCAVジャパンが発足、現在のCAV製品には、パイオニアの技術とノウハウが濃く注ぎ込まれている。そのCAVジャパンが、新ブランド“VAZIO”の名の下にiPod対応のフル真空管式オーディオシステムを三機種発売した。内容上はT-2とT-3の二種類だが、T-3は、ブラウン木調仕上げのT-3-BRと、ホワイト鏡面仕上げのT-3-WHの二種類の外装が用意される。CAVジャパンは昨年、人気の高いビーム管KT-88をプッシュプル構成で出力段に使った管球式ステレオプリメインアンプT-88を発売し管球アンプに進出した一方、得意とするスピーカー・システムの分野では、リボントゥイーター搭載のV-77で得意分野のスピーカー・システムに新境地を開いた。T-2とT-3は、CAVのアンプとスピーカー・システムの技術ノウハウをシステム製品として一体化し、さらにiPodのデジタル音楽再生との融合を図った意欲作である。
 それでは、両機(正確には3機種)の内容を見ていこう。完全な真空管式であることは共通だが、T-2は、初段に双3極管12AX7を2本、出力段に5極管EL-84を2本採用したシングル構成(定格出力3W+3W)。入力インピーダンスは100kΩ、負荷インピーダンスは6Ω、S/N比は80dB(IHF)、定格入力感度は400mV、消費電力は60W。筐体にiPodドックが装備されており、最短距離の接続で信号の劣化を抑えた設計である。リアパネルにはRCA入力を3系統装備、CDなどの外部入力に備えた設計。組み合せたスピーカー・システムは、25mmトゥイーターと114mmウーファーによる2ウェイリアバスレフである。
 上位機種のT-3は、ブラウン(T-3-BR)と、(T-3-WH)の2機種を用意。初段に12AX7を2本、出力段にビーム管6V6を4本使用したプッシュプル回路で構成される(定格出力10W+10W)。さらに、ヘッドホン出力専用に双3極管12AU7一本を奢っている。6V6には放熱効果を高めるカーボン・コートを施し、耐久性を得た。入力インピーダンスは100kΩ、負荷インピーダンスは6Ω、S/N比は84dB、定格入力感度は770mV、消費電力は105W。T-3の場合、同梱のiPodドックを本体に接続して使用する。スピーカー・システムは、2ウェイリアバスレフは変わらないが、30mmトゥイーター、114mmウーファーに大口径化。なお、CAVジャパンはT-3に組み合わせるCDプレーヤー(ソリッドステート)を企画中であり、システムとしての発展性をより重視した設計。T-2、T-3ともリモコンが付属し音量調整に加え、楽曲の再生/停止、巻き戻し/早送り、階層移動、リピート機能などiPodの操作が可能だ。
 CAVジャパンで両機の開発に携わった佐々木勝弘氏(元パイオニアでTAD-M600の開発に従事)は、両機の開発と音決めの狙いについて、「私たちはiPodを現代のデジタルソースの象徴として捉えた。現代の音楽のほとんどがオンマイクで収録しDSPで味付けした真空パックのような音になっていて、それを鼓膜に直接入力するのが主流のリスニングスタイル。VAZIOはそうしたデジタルソースを真空管というデバイスを一度通して出力することで、アコースティックで血の通った音に変え、演奏者の肉体や楽器の実在感、演奏会場の空気を感じることができるようにしたかった。」という。また、真空管というデバイスの使いこなしについては、「オーディオがHi-fiを追求すると得てして同じ方向へ行く。真空管の持つ楽器的な性格を引き出し、ストイックなHi-fi追及でなく、現代のリスナーに新鮮に響く音質を狙った。管球式の場合、ソリッドステートと出力インピーダンスが全く異なり、ダンピングの設定を筆頭にスピーカー・システムの再生特性が重要で、システムとしての一致を心がけた。」と語る。
 ちなみに使用されているユニットはCAVジャパンの日本市場向けスピーカー・システムとして初登場。真空管式と組み合わせる配慮は両機の筐体設計にも現れている。T-2の場合、出力パワーが小さいので、エンクロージャー筐体に硬いアルミ素材を使いエネルギーロスを減らし、ワイドレンジを欲張らずエネルギーを中低域の豊かさ、充実に向けている。一方のT-3は出力に余裕があり、逆にリアルウッドの前面パネルで響きの心地よさを重視した設計である。こうした入念な設計が再生音にそのまま表れて、T-2はiPodを再生すると、大らかでスケール感豊かなアナログ的なサウンド、CDを入力すると、中低域が厚くふくよかな色気が心地よく、真空管の一般的イメージを彷彿させる音質。一方のT-3は性格をかなり異にし、使用球の性格が素直に出たシャキッとした色付きの少ない音質。T-3の狙いについて、佐々木氏は、ボーカルが前に出て楽器が鮮明に分離する立体感、と表現するが、事実、決してソフトではなく奥行きのクッキリしたいかにも現代の管球式アンプと感じさせる音質である。
 T-2とT-3(BR,WH)どちらも、iPodという現代のゼネラルなソースを触媒に、経験厚いオーディオマンシップが注ぎ込まれた、手頃な価格に見合わないある意味贅沢なオーディオである。(大橋 伸太郎)

T-2の主な仕様
■アンプ定格出力:3W+3W
■再生周波数帯域:20〜20000Hz
■入力インピータンス:100KΩ
■負荷インピータンス:6Ω
■S/N比:80dB(IHF)
■定格入力感度:400mV
■歪率:≦2%(THD)
■電源:AC100V(50/60Hz)
■消費電力:≦60W
■外形寸法:W260×D236×H165(mm)
■質量:8.5kg
■使用真空管:EL84×2、12AX7×2
■スピーカーユニット:ツィーター/25mm×1、ウーファー/114mm×1
■インピータンス:6Ω
■再生周波数帯域:60〜20000Hz
■最大入力:20W
■出力音圧レベル:84dB
■外形寸法:W138×D268×H228(mm)
■質量:8.04kg(ペア)
■【再生可能なiPod】2009年9月に発売されたiPod nano(第5世代)、iPod touch(第3世代)にも対応。 iPod(オリジナル〜第5世代)、iPod mini、iPod photo、iPod with color display、iPod nano(第1世代〜第5世代) *2009 秋モデル対応、iPod classic、iPod touch(第1世代〜第3世代) *2009 秋モデル対応
■価格:¥81,900(税込)

T-3主な仕様
■アンプ定格出力:10W+10W
■再生周波数帯域:15〜35000Hz
■入力インピータンス:100KΩ
■負荷インピータンス:6Ω
■S/N比:84dB(IHF)
■定格入力感度:770mV
■歪率:≦2%(THD)
■電源:AC100V(50/60Hz)
■消費電力:≦105W
■外形寸法:W213×D286×H166(mm)
■質量:10.5kg
■使用真空管:6V6×4、12AX7×2、12AU7×1
■スピーカーユニット:ツィーター/30mm×1、ウーファー/114mm×1
インピータンス:6Ω
■再生周波数帯域:60〜30000Hz
■最大入力:20W
■出力音圧レベル:85dB
■外形寸法:W158×D309×H259(mm)
■質量:8.9kg(ペア)
【再生可能なiPod】2009年9月に発売されたiPod nano(第5世代)、iPod touch(第3世代)にも対応。 iPod(オリジナル〜第5世代)、iPod mini、iPod photo、iPod with color display、iPod nano(第1世代〜第5世代) *2009 秋モデル対応、iPod classic、iPod touch(第1世代〜第3世代) *2009 秋モデル対応

¥106,050(T-3-BR 税込)/ ¥111,300(T-3-WH税込)
■問合せ先:CAVジャパン 0120-232-765
http://www.cav-japan.co.jp/

Audio DVD/Blu-ray Review

「パーセル 歌劇ダイドーとエネアス/コヴェント・ガーデン王立歌劇場2009」(コロムビアミュージックエンタテインメン/OABD7049D)*輸入盤
 このディスクは「ダイドー」だが、従来の慣例は「ディドー」である。ヘンリー・パーセルの代表的なバロック・オペラをコヴェント・ガーデンで上演したライヴ。注目したいのは通常のロイヤル・オペラのオケでなく、クリストファー・ホグウッド率いるエイジ・オブ・エンライトメント・オーケストラによるピリオド楽器(現代の楽器でなく、作曲された時代のものを復元した楽器と様式で演奏する)による演奏と上演であることだ。リニアPCMステレオ/5.1chが選べるが、音質が優秀でピリオド演奏の鋭利な響きが楽しめる。舞台演出は対照的に現代的で、ディドー役サラ・コノリーのシックな淡い色彩の衣装、バレエシーン(同オペラハウス舞踊団)のモノトーンのコスチュームの対比が美しい。日本語字幕無し。(大橋 伸太郎)

Audio DVD/Blu-ray Review

「ドキュメンタリー・ドラマ  ツイン・スピリッツ―歌と朗読で綴るロベルト&クララ・シューマンの愛の軌跡」(コロムビアミュージックエンタテインメント/OABD7043D)*輸入盤
 2010年はロベルト・シューマンの生誕200年である。レコード店頭で同年(1810年)生まれのフレデリック・ショパンのそれが盛んに喧伝されているが、シューマンのそれはとんと見かけない。ショパンが一般に売りやすいのは分かるが、ロマン派音楽の真髄を聴かせるシューマンの偉大さを忘れてはいけない。本作は英ロイヤル・オペラ制作だが、シューマン夫妻の愛の生涯を現存する手紙の朗読と演奏で綴った一種の音楽イベントで、ロベルトを、何とロック・スターのスティングが、妻クララをベテラン女優、トルーディ・スタイラーが演じている。といってもスティングが歌うのでなく、メトロポリタン歌劇場で活躍するサイモン・キーンリーサイド初めロイヤル・オペラの名手が歌と演奏面を担当、代表曲を丁寧に演奏し聴かせる。ナレーションは映画『アンダーワールド』等でお馴染みの名優デレク・ジャコビ。テレビオンエア用映像と思われる。青少年への教育的配慮? からか、シューマン夫妻をやや美化し過ぎているが、春の宵向きの心温まるディスクである。音声はリニアPCMステレオ/5.0。日本語字幕無し。(大橋 伸太郎)

Audio DVD/Blu-ray Review

「アース・ウィンド&ファイアー/ライヴ・アット・モントルー1997」(ヤマハミュージックアンドビジュアルズYMXB-10060)
 EW&Fが1997年のモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演した時の演奏記録で米イーグル・ビジョンの制作、ヤマハミュージックアンドビジュアルズからのブルーレイフォーマット(ハイビジョン)による再発売である。EW&Fの代表曲20曲のほか、ボーナス・トラックとして翌年(1998~パケ表記は間違い)に再出演した際の7曲が追加されている。この数年後にEW&Fはロックの殿堂入りする。私はその直後2002年にラスベガスのシーザース・パレスで彼らのステージを見たが、エンターテインメントとしての充実度もクロスオーバーな演奏の迫力もこのディスクの演奏は本気度が違い、非常に楽しめる。音声はリニアPCMステレオ、DTS-HDマスターオーディオ、ドルデジ5.1chの三種。(大橋 伸太郎)