2008年10月 

Popular ALBUM Review
「時の征者/ジャクソン・ブラウン」
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/SICP-2004)

 ジャクソン・ブラウンはこの10月、還暦を迎える(誕生日はジョン・レノンと同じ9日)。“ついに”という感じであり、ここ数年はソロ・アコースティック・ライヴ集などに取り組んできた彼が約6年ぶりに発表するこのオリジナル・アルバムは、やはり、それだけの歳月の重みを感じさせるものだった。髭をたくわえたジャケットの写真も、その事実を否応なく納得させるものである。とはいえ、声もオーガニックなサウンドも、そこにいるのはあの頃のままのジャクソン。自然体の視点を失うことなく、パーソナル・ライフから社会の諸問題までをよく練り上げられた言葉で歌いきっている。(大友 博)

Popular ALBUM Review

「デジャ・ヴ・ライヴ/クロスビー、スティルシュ、ナッシュ&ヤング」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13159)
 ニール・ヤングがバーナード・シェイキー名義で監督し、今年のサンダンス映画祭で絶賛を浴びたドキュメンタリー映画のサウンドトラック。CSN&Yのライヴ盤としては『4ウェイ・ストリート』以来じつに37年ぶりのもの、ということになる。プロデュースもニール、曲の大半は彼が具体的な言葉で痛烈にブッシュ政権を批判した『リヴィング・ウィズ・ザ・ウォー』からのもの、ギターはがんがん弾いているし、リズム隊はここ20年、彼がクレイジー・ホースとは別に重用しているユニットということもあり、極端にいうとまるでY&CSNだが、CSNの3人も、かつての名曲に新たな意義を持たせる形で健在ぶりを示している。それぞれの「既視感」といったところか。(大友 博


Popular ALBUM Review
「狂気の祭典〜ライヴ・イン・グダニスク/デヴィッド・ギルモア」(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/SICP2022〜6=スーパー・デラックス・エディション SICP2027〜9=通常仕様盤)
 フィル・マンザネラやリチャード・ライトらから成る素晴らしいバンドを率いて行なわれた06年の「オン・アン・アイランド・ツアー」からはすでにロイヤル・アルバート・ホールでのライヴがDVDで届けられている。というか、届けられたばかりという印象なのだが、さらにまた近年のギルモアの旺盛な創作意欲を伝えてくれるソフトがリリースされた。同ツアーの最終公演としてポーランドのグダニスクで行なわれたコンサートからのライヴ・アルバムだ(2CD+1DVDの通常盤のほか、3CD+2DVDの特別盤も出る)。数曲で40人編成の地元オーケストラが参加していて、とりわけ「コンフォタブリー・ナム」が強烈だった。結果的に、9月15日に他界したライトの、最後の本格的なライヴを収めた作品となっている。(大友 博)

Popular ALBUM Review
「スティル・アンフォゲタブル/ナタリー・コール」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13161)

 万全を期して出されたナタリー・コールの新作は、さすがに重みがある。近年はヨーロッパ物も含めてホワイティッシュなジャズ名曲集が多いが、ナタリーはR&Bで鍛えた表現。曲が1930〜40年代中心なのでノスタルジーも漂うが、独自の新しさもあり、メインストリームのよさを聴かせる。父ナットとのデュエット「歩いて帰ろう」は、91年度グラミー独占の「アンフォゲタブル」以来初めで、心温まる好唱。「君の面影」「雨の日に」ほかバラードに味わいがあり、余裕ある乗りのスウィングも快調。5曲のボーナス・トラックがよく、「打ちのめされて」の説得力あるR&Bは特に聴き応えがある。(鈴木 道子)

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「ザ・コスミック・ロック/クイーン+ポール・ロジャース」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70615)

 バンドには、メンバー・チェンジが許されるバンドと許されないバンドがある。正にクイーンというバンドは、良い意味で究極の後者である。バンド名をクイーンにこだわらず、ポール・ロジャース、ブライアン・メイ、ロジャー・テーラー3人によるQueen’s Companyとでもして、昔流行ったスーパーバンドとしてデビューする方が良かったのではないだろうか。確かに、ギター・コーラス・アレンジ等クイーンのテイストを残しているが、完全に別のバンドであり、ポール・ロジャースが際立つ新しいヴォーカル・バンドの誕生となっている。全て3人による楽曲も演奏も素晴らしい、これぞ落ち着いてゆったりと安心して聴くことの出来る大人のブリティッシュ・ロックだ。(上田 和秀)

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「ストーンズ・ワールド〜ザ・ローリング・ストーンズ・プロジェクトII/ティム・リース」(ワイワイ ミュージック/XNYY10004〜5)
 ストーンズのサポーティング・メンバーのティム・リースの新作。ミック・ジャガーの初参加を含めRSのメンバー全員がジョイント。前回のRSツアー中に世界各地で制作、06年3月には日本録音。日野皓正、渡辺香津美、吉田美奈子ほか錚々たるミュージシャンが参加。収録楽曲はRSナンバーで、1曲のみティムのオリジナル(日本録音の『ア・ファンキー・ナンバー』、日野皓正が参加しキース・リチャーズがオーバーダブでギター)。サルサの「アンダー・マイ・サム」、ファディスト/アナ・モウラの「ノー・エクスペクターションズ」、やはりストーンズのサポーティング・メンバーのバナード・ファーラーの「愚か者の涙」、フラメンコ版「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」ほかまさにストーンズ・ワールドが拡がる。日本盤ボーナス・トラック「ベイビー・ブレイク・イット・ダウン」では吉田美奈子が日本語歌詞(キースがギター!)。そして「ヘイ・ネグリータ」でのミックのハーモニカはストーンズ・ファン必聴なのだ。(Mike M. Koshitani)

 アメリカ出身のサックス奏者ティム・リースがローリング・ストーンズと世界をツアーしたとき、現地のミュージシャンとジャム・セッションを行った演奏を収めたもので、ストーンズの全メンバーも参加しており、ジャムなのでジャズ色が濃いのも聴きものだ。東京録音には日野皓正なども参加するなど、それぞれの国のカラーを出しているのも魅力だ。またティム・リースのサックスはジョン・コルトレーンを尊敬してきただけに抜群の表現力をもっている。本作はロック・ファンだけでなく、ジャズ・ファンも見逃せない演奏だ。(岩浪 洋三)

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「ゲット・ウェイ・バック/エイモス・ギャレット」(ウエスレコーズ/WHCY-3
 
エイモス・ギャレットは流麗なギター・プレイで知られ、マリア・マルダーの「真夜中のオアシス」のギター・ソロでも有名。この新作はパーシー・メイフィールドの作品集。パーシーは1950〜60年代のR&Bに多くのヒット曲を提供している。こんな説明は全く不要なほど両者は熱心なファンは多いが、それ以外の人にも聴いてほしいジャジーなR&Bをじっくり聴かせている。60代後半とは思えないほど艶やかなバリトン・ヴォイスで、ビッグ・バンド風の好サポートを得て、どの曲も心にしみいる。「MY JAG AND I」「TO CLAIM IT'S LOVE」「GET WAY BACK」はじめ聴き応えがある。ギター・ソロをもう少し聴きたいファンもいるかも・・。カナダ録音。来日の噂もある。(鈴木 道子)

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「サウンズ・ライク・ディス/エリック・ハッチンソン」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13164)

 年輩の方にもお薦めしたいシンガー/ソングライターのデビュー作。どこか懐かしさを漂わせているがそれはエリックが慣れ親しんで来たさまざまなグッド・ミュージックのエッセンスが自然に曲作りの中に染み込んでいるからだろう。アイドルというビリー・ジョエル、スティーヴィー・ワンダー、ポール・サイモン、エルヴィス・コステロ。。。といった才人たちを向こうに回しても存在感を示せるような音楽的センス。新入幕力士がいきなり大関と対戦して金星を上げたようなものか。にしてもエリック・ハッチンソンという名前の響きからして70年代っぽいと感じるのは筆者だけかしらん?女性ファンにはルックスも大いに気になるところ♪(上柴 とおる)

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「ロックン・ロール・ジーザス/キッド・ロック」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13162)
 もともとはミエミエなロックのフレーズを下世話にネタとして使ったサウンドとキレのいいラップで一世を風靡したキッド・ロック。本来的にはヒップホップ的感性を充分に持っているアーティストなのだが、ここ数作は迷走中で、クラシック・ロック・コピー路線を闇雲に突き進んでいる感があり、今作も残念ながら同じ仕上がりとなってしまった。腰の据わったラップを聴かせてくれるのは1、2曲だけで、アルバムの中軸にもなっていないので、彼本来の魅力が伝わらずに残念だ。(高見 展)

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「ピースフル・クリスマス/ケニー・ランキン」
(ビデオアーツ・ミュージック/VACM-1360)
 早クリスマス・アルバム。この様に新鮮なクリスマス物はちょっとない。自作1曲を除いて全曲が耳ずれするほどおなじみのキャロルや名曲ばかり。それが全然違った趣のおしゃれな曲になっている。歌っているのはニューヨークのジャズ・シンガー/ソングライター、ケニー・ランキン。70年代に「シルヴァー・モーニング」ほかでAORの人気者になって久しい。今も熱心なファンに囲まれているが、ジャズ、ボサノヴァ感覚を身につけ、洗練された爽やかな歌声を聴かせる。ギター中心のアクースティック・サウンドで、「ジングル・ベル」も「リトル・ドラマー・ボーイ」も洒落た佳曲に。自作もほのぼのとした暖かさ。今年のクリスマスこれでいこう。(鈴木 道子)

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「サージェント・へットフィールズ・モーターブレス・パブ・バンド/ビータリカ」
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/SICP1945) 
「オール・ユー・ニード・イズ・ブラッド(血こそすべて)/ビータリカ」
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/SICP1973〜4)

 ビートルズの曲をメタリカ風にカバーするトリビュートバンド、ビータリカのファースト・アルバム。ビートルズのパロディ盤はこれまでにも秀逸なものがいくつかある。○○風と銘打ったアルバムにも名作と呼ばれるものが数多く存在する。このアルバムを一度聴いて笑い転げるのはたやすいが、それだけではもったいない。このアルバムが冒_なのか、奇蹟なのか、トコトン追求してみるのもおもしろいかもしれない。そんな気にさせる出来上りだ。日本盤には3曲のライヴ・ヴァージョンがボーナス・トラックで収録されている。
 最新作として「オール・ユー・ニード・イズ・ブラッド(血こそすべて)」も発売。日本盤は日本語ヴァージョンも含めた全15カ国語ヴァージョンを収録。初回盤はインタビューやライヴ映像などが収録されたボーナスDVD付。(広田 寛治)


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「デフィニティヴ・ボックスセット/レッド・ツェッペリン」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13142〜53)

 ツェッペリン・ファンやディクク・コレクターの方には見逃せないのがこのボックス・セット。『レッド・ツェッペリン』『レッド・ツェッペリン?』『レッド・ツェッペリン?』『レッド・ツェッペリン?』『聖なる館』『フィジカル・グラフィティ』『プレゼンス』『永遠の歌(狂熱のライブ』『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』『コーダ(最終楽章)』が紙ジャケ、SHM-CD(UK盤仕様)で登場である。デビュー作の『レッド・ツェッペリン』のジャケットを眺めながら、そして初来日の日本武道館のステージを思い出しながら、じっくりとZEPP世界を味わいたい!(Mike M. Koshitani)


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「ゼイア・オフ・アンド・ローリング・セイズ・アーチー/エヴァリー・ブラザーズ」
(ビクターエンタテインメント/VICP-64554)

 ビートルズやサイモン&ガーファンクルなどにも大きな影響を与えた米ロックン・ロール・デュオの記念すべきデビュー作(1958年)が本編12曲にボーナスとしてシングル曲&別ヴァージョンなど8曲+2作目(彼らのルーツともいえるトラディショナルな作品集)からの抜粋6曲を加えた計26曲というヴォリュームで紙ジャケ復刻♪純粋なカントリー・ミュージシャンだった父親のルーツを受け継いだエヴァリー兄弟が時流のロックン・ロールやR&Bと出会い先進的な音楽性を身に付けて後年のカントリー・ロックの礎ともなる過程がこの1枚で実感出来る。1960年の「ファビュラス・スタイル・オブ・エヴァリー・ブラザーズ」も同時発売。ちなみに今も現役で活躍中♪(上柴 とおる)


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「地獄烈伝/KISS」(デフスターレコーズ/DFCP 56〜7)
 KISS最新アルバムは、彼らのベスト選曲を現在のメンバーで再録音したニュー・レコーディング・ベストである。このアルバムは、どうしても上手いコピーバンドの域を超えられないが、KISS入門という意味では最高のベスト盤である。嬉しいことに初回プレス盤には、77年日本武道館でのライヴDVD付きが発売されているので、是非ともそちらを購入して貰いたい。何と言ってもKISSはライヴ・バンドなので、KISSが最もノッテいた時期のパワーとエネルギーを感じさせてくれるこのDVDを全てのロック・ファンに見て欲しい。ロック史上最高のライヴ・バンドによる、最高にカッコイイ、エンターテイメントを見逃すな!!!もうKISS未経験ではすまされない。(上田 和秀)


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「ザ・ベスト・オブ・ベット・ミドラー/ベット・ミドラー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13107)

 ラスヴェガスのショーの高い評価が伝えられるオールタイムのスーパー・ディーヴァの最新ベスト。もちろん、収録されている全米No.1ヒット「ローズ」は名曲だが、これ以降の曲は彼女のイメージを決定付けたきらいもあった。初期の「イン・ザ・ムード」「ブギ・ウギ・ビューグル・ボーイ」のような、キャバレー・シンガー的な毒も捨て難く、改めてこの人のパフォーマーとしての存在感に感動する。「男が女を愛する時」のようなドラマティックな熱唱も素晴らしい。ベガスに行きたくなった。(村岡 裕司)


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「アピアリング・ナイトリー/カーラ・ブレイ」(ユニバーサルミュージック/UCCE7003)
 女性の作曲家、ピアニストのカーラ・ブレイが5年ぶりに発表したビッグ・バンド・アルバム。カーラはかつてN.Y.のジャズ・クラブでシガレット・ガールをしていたことがあり、その頃聴いたゴージャスなビッグ・バンドの楽しさを再現しようとした演奏で、エンタテインメントとユーモアにあふれている。「サムワン・トウ・ウォッチ」や「アイ・ハドント・エニワン・ティル・ユー」などスタンダードをもじった曲も興味ぶかい。メンバーにはルー・ソロフ(tp)、スティーヴ・スワロウ(b)らが参加。(岩浪 洋三


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「ニューヨーク・シティ・セレナーデ/敦賀明子」(モジョ・レコーズ/XQCM-1313)
 目下ニューヨークで大活躍中のハモンド・オルガン奏者、敦賀明子のMOJOに移籍しての第二作。ますますのってきた感があり、グルーヴィーなオルガンの魅力を存分に味わせてくれる。今回は彼女が共演したいと願っていた大ベテランの名ドラマー、ジミー・コブが参加しているのもききものだし、注目すべきテナー、ウエイン・エスコフェリー、ギターのエリック・ジョンソンも加わり、最高にファンキーな演奏を展開する。「シスター・セイディ」、ハンコックの「ドリフティン」、「イージー・ウォーカー」も聴きものだし、自作の「ゲイターズ・タイム」も佳曲だ。敦賀のオルガンはますます力強く、ダイナミックになり、華麗さを加えてきた。(岩浪 洋三)

 オルガン奏者、敦賀明子の「セントルイス・ブルース」に続く通算4作目。ハモンド・オルガンは独特のグルーヴ感を持つ楽器であるのに対して、彼女は丁寧で繊細な奏法によってそれに応えている。黒人教会音楽には欠かせないハモンド・オルガン。日曜の朝ともなればバプティスト教会に礼拝に訪れるニューヨーク・ハーレムの住人たちや音楽家たちの耳にとまったことが本物の証し。ベテラン・ドラム奏者、ジミー・コブのサポートを得て、心置きなくスイングする演奏に拍手を送りたい。エリック・ジョンソン(g)、ウェイン・エスコフェリー(ts)が実によく溶け込んでいる。「星に願いを」「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」といった曲も魅力だが、アップ・テンポの「ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト」や「シスター・セイディ」に彼女の真骨頂がある。(三塚 博)

Popular ALBUM Review

「ブラヴォーグ/山中千尋」(ユニバーサルミュージック/UCCJ2071)
 次から次へと新作を出す山中だが、それは好調でCDがよく売れるからだろう。今年2枚目の本作は肩の力を抜き、のびのびと楽しげに弾いているところがいい。一段と成長し、大人になった感がある。ヴィンセンテ・アーチャー(b)、ジーン・ジャクソン(ds)を従えてのトリオで、ジーンの強力なドラミングにも負けない山中のパワフルなピアノには快感を覚えるが、自作「ユニ」のようなアフター・ビートを強調したドライヴィングでグルーヴィーな演奏に彼女の進境がみられる。自作が多いが「タイム・フォー・ラブ」「星に願いを」なども演奏しており、変幻自在のプレイには彼女ならではの才気がみなぎっている。(岩浪 洋三)


Popular ALBUM Review

「For Jazz Audio Fan Only Vol.1(寺島靖国プレゼンス)/VA」
(寺島レコード/TYR-1004)

 ジャズは音で聴け!と題された、ジャズ、オーディオをこよなく愛する寺島靖国プレゼンスのマニア向けともいうべきジャズ・ベスト盤だ。ジョルジュ・パッチンスキ・トリオの「パッチワーク」、デヴィッド・ゴードン・トリオの「スイングしなけりゃ意味がない」ほか収録。オーディオ・ファンを意識した高音質の演奏を選りすぐり、特にベースとドラムへのこだわりを強調しているが、ピアノもヴォーカルも素晴らしい演奏だ。音質の良さは演奏の良さを表現し、全てのジャズ・ファンを魅了するだろう。今後シリーズ化され、Vol.2、3そして数量限定アナログ・レコード(2枚組)も発売が予定されている。ジャズ/オーディオ・ファン共にまた楽しみが増えた。(上田 和秀)


Popular ALBUM Review

「VSOD/ゴンチチ」(エピックレコードジャパン/ESCL-2552)
 アコースティック・ギター・デュオ、ゴンチチの結成30周年、デビュー25周年にちなんだ作品。タイトルの「VSOD」とはVery Special Ordinary Daysの略語。「とても特別な、けれど何気ない日々の軌跡」、30年という歳月を経たふたりのメッセージだ。日常生活の中にさりげなく溶け込んでくるような旋律は、変わることがない。何気なさの中に、そして一曲一曲に強い生命力がある。13曲がふたりの共作。ボーナス・トラックの2曲はTVコマーシャルでもおなじみの「スカボロー・フェア」(民謡)「課外授業」(ゴンザレス三上・作曲)。5人の編曲家の仕事も見逃せない。弦や管をたくみに編み上げながらアコースティック・ギターの味を引き立てている。(三塚 博)


Popular DVD Review

「ファミリー・ミーティング/ウェントス・ブルース・バンド」
(BSMF RECORDS/BSDV-3009)

 北欧にブルースなんてあるの?と友人に聞かれたことがある。長い冬、白夜、オーロラとかブルースとはほど遠いイメージからそう思うのだろう。ところが実は、北欧はヨーロッパで最もブルースの熱い土地なのだ。僕がココ・テイラーとのツアーで一番多く訪れるのも北欧だ。ここで紹介するDVD『ファミリー・ミーティング/ウェントス・ブルース・バンド』を見れば、僕が言っている事が納得してもらえるだろう。フィンランドを代表するウェントス・ブルース・バンドが結成20周年を迎え、ミック・テイラーはじめ、ケニー・カークランド、エリック・ビブ、キム・ウィルソン、ルイジアナ・レッドら英米のブルース・グレイト達、さらにスウェーデンのスヴェン・ゼッターバーグらをゲストに迎え、ホットで味のあるブルース・ライヴを収めたのがこの1枚だ。演奏クオリティが高いのはもちろん、構成も素晴らしく、音楽ドキュメンタリー映画としても上質の出来になっている。見ながら思わずギターを取り出してバンドに合わせてジャムしている自分がいた。見る者を引き込まずにはいられない、ブルースの魅力が満載したブルース・ドキュメンタリー・ライヴ。あるようで、なかなかない作品だ。ブルース好きは見逃せない一枚。(菊田 俊介)


Popular DVD Review

「ディラン・スピークス/ボブ・ディラン」(ビデオ・パック・ニッポン/SSBX-2341)
 ディランは物議をかもしたニューポート・フォーク・フェスティヴァル出演のあと、1965年9月24日にバック・バンドをしたがえた本格的ワールド・ツアーをはじめたが、行く先々で熱狂的歓声と罵声の両方を浴びる混乱のステージが続いた。そしてツアー中の12月3日、サンフランシスコで記者会見が開かれ、その模様は数時間後に編集されることなくすべてテレビで放送された。65年5月に撮影された映画『ドント・ルック・バック』には、記者会見で記者をからかったり、やり込めたりするディランが写っていたが、このDVDで見るディランは、質問にも誠実に対応している。24歳の若いディラン、アイドル的存在でもあった時代のディランの貴重な50分が鮮明なモノクロ映像で楽しめる。(菅野 ヘッケル)


Popular DVD Review


「ヤマハ・アトスDVDブック・シリーズ レジェンド・オブ・ロック」
(ヤマハ・アトス・ミュージック・アンド・ビジュアルズ)

 ロック史に輝く名盤の制作ドキュメンタリーDVDと、活動歴やサウンドの特徴に迫った解説本をひとつにした、画期的なDVDブック。第1回発売タイトルは、ジミ・ヘンドリックス(ドキュメンタリーDVD:『エレクトリック・レディランド』)、クイーン(『オペラ座の夜』)、ディープ・パープル(『マシン・ヘッド』)。ドキュメンタリー映像は以前にも別の形態で発売されていたことがあったが、アーティスト本人や関係者の証言で綴るアルバム制作秘話は非常に興味深い。そこに、資料としても読み物としても充実した解説本が付くことで、魅力が倍増している。10月にはジョン・レノン(『ジョンの魂』)、11月にはザ・フー(『フーズ・ネクスト』)と、今後も月1点ずつのリリースを予定している。(細川 真平)


Popular BOOK Review

「ブラック・ミュージック入門/泉山真奈美 河地依子 高見展:著 ロック・クラシック研究会:編」(河出書房新社)
 1960年代、僕はリズム&ブルースやブルースの魅力をローリング・ストーンズやエルヴィス・プレスリーから伝授してもらった。ブラック・ミュージックはロックのルーツ、そして時代とともに大きく進化している。本書はそんなブラック・ミュージックを、代表的アーティストを中心にして歴史的に判りやすく教えてくれる。ここから出発して徐々にその魅力に浸り、ぜひディープな世界に向かって欲しい。そこにはO.V.ライトやタイロン・デイヴィスほか多くのアーティストが待っている!ライド・オン!!(Mike M. Koshitani)


Popular BOOK Review

「パティ・ボイド自伝 ワンダフル・トゥデイ/パティ・ボイド ペニー・ジュノー著 前むつみ 訳」(シンコーミュジック・エンターテイメント)
 ジョージ・ハリスンが「サムシング」で歌い、エリック・クラプトンが「愛しのレイラ」を捧げた女性、パティ・ボイド。たがいに無二の親友と認めあうふたりのロック・ヒーローから愛され、結ばれ、振りまわされた女性の半生記だ。彼女はほんとうは幸せだったのか不幸せだったのか…。常にスキャンダラスな眼でみられるなか、彼女はなにを思いなにを信じて生きてきたのか…。自伝の類いをこれほど好奇心いっぱいで読み進めることは個人的にも稀な体験だが、それが現実にあった物語であることを知らなければ、まるで小説を読んでいるかのようである。『ジョージ・ハリスン自伝/I ME MINE』、『エリック・クラプトン自伝』と併読すれば、3人の複雑で微妙な関係により深くせまることができるだろう。(広田 寛治)


Popular BOOK Review

「ボブ・ディラン写真集:時代が変る瞬間/バリー・ファインスタイン」
(ブルース・インターアクションズ)

 ディランの友人のファインスタインは、オフィシャル・フォトグラファーとして1966年5月のイギリス・ツアーに同行し、コンサートだけでなく、一緒に旅をしたり、オフのときもほとんどの時間をともに過ごしたりした。もちろん、いつもカメラは持って、現実の一瞬を写真に写していた。まさに、ディランがフォークからロックへ移行した瞬間、時代が変った瞬間が白黒写真に残された。8年後、ザ・バンドとの全米ツアーにも、ファインスタインは公式写真家として同行し、さまざまなディランを写真に記録した。ファインスタインは「それぞれの写真がすべてを語っているので、私が説明を加える必要はあまりないと感じている」と書いているが、何枚かの写真には興味深いキャプションもつけられている。この写真集を見ながら、66年のライヴ『ロイヤル・アルバート・ホール』、74年のライヴ『偉大なる復活』を聴くといいだろう。(菅野 ヘッケル)


Popular CONCERT Review

「カラパナ」 7月23日 COTTON CLUB
 再来年にデビュー35周年を迎える“ハワイ・ロックの宝”がまたまた日本に戻ってきた。フュージョン調のインストゥルメンタル「ブラック・サンド」から始まり、定番「ジュリエット」(これだけは、どうしても元メンバーである故マッキー・フェアリーの印象が強いのだが・・・・)をはさみながら進むプログラムは、まさに磐石。うだるような夏の夜にこれほどふさわしい音は、そうそうあるものではないだろう。かつてマッキーと黄金の2トップを聴かせたマラニ・ビリューも、見かけこそすっかりオヤジだが、つやのあるハイ・トーンは往時とちっとも変わらない。83年にRCサクセションと共演したことのあるゲイロード・ホロマリアの、生き生きとしたキーボード・プレイにも大いに楽しませてもらった。 (原田 和典)


Popular CONCERT Review

「サンバスンダ」 8月21日 渋谷/O-EAST
 そんなグループ、ブラジルにいたかなあと思ってしまったが、この“サンバスンダ”はインドネシアのバンドなのだった。鬼才イスメット・ルヒマットを音楽監督に、サンバやサルサと、母国スンダ地方のガムラン“ドゥグン”、ジャカルタのクロンチョン等を融合し、これまでにないエキサイティングかつ野心的な音作りを目指そうという精鋭集団である。だが演奏自体は尖りよりもなごみが優先し、僕は非常に心地よく彼らのサウンドに親しんだ。笛、ヴァイオリン、金物系の打楽器が主にメロディを演じ、皮物系のさまざまな打楽器がそこに彩りを加える。曲によっては女性ダンサー兼シンガーのリタ・ティラも加わり、ステージはいっそう華やいだ。彼らの初来日は大成功だったといっていいだろう。(原田 和典)
写真:(c)Miha Podlogar


Popular CONCERT Review

「ザ・サースト」 9月18日 渋谷/クワトロ
 ローリング・ストーンズのロン・ウッドが設立したレーベル、ウドゥン・レコーズの第1弾アーティストとして契約し、元リバティーンズのピート・ドハーティが新作のレコーディングに起用して注目を浴びた噂の黒人ロック・バンド、ザ・サーストが初来日した。ロンドンはカリブ系移民(主にジャマイカン)が多く住むブリクストン出身で、メンバーは4人全員移民の子供達。それだけにレゲエやスカが無理なく融合したシャープなビートのロックンロールは、他のイギリスの新人とは比較にならないほど骨太なダイナミズムに溢れているのに驚かさ
れた。曲は決してポップ・チャート向きではないもののレベルは高く、英国ロックの伝統に則ったオーセンティックなもので、ロックを良く知る中年以上の音楽ファンほど彼らの良さを理解できるに違いないと思わせるサウンドは、今後に期待できる本物感が漂っていた。但しまだデビュー作を出したばかりのバンドゆえ、演奏時間は本編が45分、アンコールも2曲と短く、ようやく会場も彼らのビートに馴染んで熱く反応し始めた頃に終了時間となってしまったため少し物足りなかった。もしオリジナル曲が足りないのなら、彼らほどの演奏力があれば自らの音楽的ルーツや好み、音楽に向かう姿勢を示す意味でも、センスの良いカヴァーを1〜2曲演奏して欲しかったし、それを聴いてみたかった。 (保科 好宏)


Popular INFORMATION

「ジェッフ・ベック日本公演」
 待ちに待ったジェフ・ベックの3年振りの単独来日公演が、遂に決定した。若き女性ベーシストを引き連れて出演した2007年のクロスロード・ライヴの映像には、本当に驚かされた。エリック・クラプトンもそうだが、最近のライヴは若手育成の場となっているようで、今回のメンバーもどんなサプライズがあるのか楽しみだ。いくつになってもギターへの追求を怠らない孤高のギタリスト、ストイックなまでにギターテクを追い続ける彼の姿勢にはいつも脱帽だ。世代やジャンルを越えて全てのギター小僧達、ジェフ・ベックの神業ギターテクを見逃すな!!!死ぬまでに絶対に経験しなければいけないライヴなんて、そんなには無いと思う。(U)
2009年2月6日 東京国際フォーラムホールA
    2月7日 同
    2月9日 NHKホール
    2月11日 パシフィコ横浜 
    2月12日 愛知県芸術劇場 
    2月13日 金沢/石川厚生年金会館
    2月16日 福岡/Zepp Fukuoka
    2月18日 大阪厚生年金会館 
    2月19日 同
お問合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999  http://udo.jp/    
写真:Masayuki Noda


Classic ALBUM Review

「ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調Op.10、フォーレ:弦楽四重奏曲ホ短調Op.121、ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調/エベーヌ四重奏団」(EMIミュージック・ジャパン/VC-5190452)
 このところフランス生まれエベーヌ四重奏団の人気が急上昇している。若くてイケメンのこのクァルテットは素晴らしいセンスの持ち主である。3曲に共通してテクニックの素晴らしさ、音楽の緻密さ、精神力、アンサンブルの見事さを併せ持っており、新時代の寵児と言うべき存在感を感じさせる。最初のドビュッシーでは若さの中にフランスのエスプリが溢れんばかり、そして繊細さの中にも一瞬粗野が入り込む。2曲目のフォーレは彼の最後の作品で、余分なものが何一つ無いフォーレの高雅な幽玄の境地へと誘われる。この若いクァルテットの表現力の深さには驚く。最後のラヴェルでは一人一人が自由に弾いているのだが、いささかの乱れも感じさせない。特に第2楽章では冒頭ピッツィカートの躍動感が得も言われぬムードを作り上げている。彼らに対しての期待は大きい。(廣兼 正明)

Classic ALBUM Review

「ショパン:ピアノ・ソナタ第2番、バラード第2番、即興曲第2番、マズルカ第22〜25番、ワルツ第2〜4番/マウリツィオ・ポリーニ(Pf)」(ユニバーサル ミュージック/UCCG-1427)
 ポリーニも今年66歳、18歳でショパン・コンクールに優勝して以来ショパン弾きとしての名声は当然だが、今回の新録音はポリーニ・ファンにとっては待望の新譜と言うことが出来よう。最初のバラード第2番のアンダンティーノを聴いただけでポリーニの精神的に完成された音楽を感じることができる。そしてプレスト・コン・フォコに入ったときの対比が見事という他ない。次の4曲のマズルカでは成熟した大人が顔を現す。3曲の作品34の「華麗なるワルツ」はポリーニの思うがままの演奏によく聴くこの作品の全く異なる側面を発見する。即興曲第2番でショパンは長い時間を費やして作り上げたが、ポリーニはそれを即興で弾いているようなムードを醸し出す。そして最後の大曲ソナタ第2番ではさすがのポリーニも身構える。最初の2つの楽章では強い緊張感を持続させ、有名な第3楽章の「葬送行進曲」では悲しみの緊張と回想の対比を上手く表現し、最終楽章のオクターヴで奏でるプレストの流れの中に身を委ねる。(廣兼 正明)

Classic ALBUM Review

「ヘンデル:ディキシット・ドミヌス&カルダーラ:悲しみのミサ曲、クルチフィクスス《十字架につけられ》 /トーマス・ヘンゲルブロック指揮、バルタザール=ノイマン合唱団、バルタザール=ノイマン=アンサンブル」(BMG JAPAN/BVCC-31018)
 それにしてもまれに見る素晴らしいCDの出現である。バロック音楽の権威ヘンゲルブロックは彼が目指した音楽とその他の芸術の統合に目標を置き、彼が設立した合唱団(1991年設立)と古楽器アンサンブル(1995年設立)に同様な考え方を持っていたドイツ・バロック時代の建築家バルタザール・ノイマンの名を冠した。
 合唱団はソプラノ10(2)、アルト6(3)、テナー6(2)、そしてバス5(2)の27人で括弧内の9人はソロも歌う。一方器楽アンサンブルはVn?=6、Vn?=5、Va=4、Vc=2、CB=1、その他Org=1、Tiorba=2、Tb=2の23人だが、これらの一人一人が驚くべき技術の持ち主なのだ。特に合唱団は恐らく誰もがソロを歌える技量があるのだろう。どんなに難しいパッセージでも完璧である。特に最後に入っているカルダーラのクルチフィクススでは聴く者を唖然とさせるハーモニーが天空にこだまする。この素晴らしい演奏者たちを支えるヘンゲルブロックの演奏は鋭いリズムを全面に出し、透明な音色を持った爽やかな音を聴かせてくれる。
 またこのCDでは、ほぼ同時代に活躍したヘンデルとカルダーラの曲が比較できるのだが、その結果はヘンデルの音楽が如何に偉大であるかということだった。 (廣兼 正明)

Classic CONCERT Review

「プラハ放送交響楽団」 7月5日 ザ・シンフォニーホール
 チェコは長年にわたりオーストリア、ロシアなど外国支配に苦しんできた。苦難の歴史が音楽にも刻み込まれて、自由と独立への希求が隅々にまで浸透している。チェコのオーケストラが祖国愛を歌い上げる時は、たくましい息吹を感じさせる。それを痛感したのがウラディミール・ヴァーレクの指揮するスメタナの連作交響詩「わが祖国」全曲演奏。
全6曲の中で「モルダウ」が最もよく知られ、ボヘミアの雄大な自然への限りなきオマージュとなっている。「ボヘミアの森と草原より」も緑の大地を彷彿とさせて、ヴァーレクは悠揚迫らざるタクトでオーケストラをまとめあげた。一転して、宗教改革をテーマにした「ターボル」や外敵と死闘を繰り広げた「ブラニーク」では、部厚い響きで高揚感をもたらし、民族の不屈の魂を巧みに表現した。(椨 泰幸)
〈写真提供:ザ・シンフォニーホール〉

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「小沢征爾音楽塾 喜歌劇《こうもり》」7月27日 アクトシティ浜松
 ヨハン・シュトラウス?の人気オペレッタ「こうもり」は、夫の浮気を縦糸に社交界のドタバタを絡ませて展開する。出演者は主要な歌劇場で活躍する実力派が起用されて、「セカイの小沢」の面目や躍如たるものがある。機転をきかせて、最後に夫をやりこめる妻のロザリンデには、ブダペスト出身のアンドレア・ロストが充てられて、茶目っ気たっぷりに、自慢の美声を聴かせた。ふるさとを偲んで歌うチャールダーシュは哀調をたたえて、ほろりとさせた。これに対して、召使のアデーレを演じたアンナ・クリスティは、溌剌とした動きと若々しい歌声で、ソプラノの魅力を発散した。「こうもり」とからかわれた意趣返しを果たしたアイゼンシュタイン役のボー・スコウフス(テノール)も健闘した。ユーモラスなラストシーンも、役者ぞろいで盛り上がった。
国内で選抜された塾生(オーケストラの団員と合唱団)には幾分硬さも残ったものの、小沢の指揮に懸命についていく姿勢には好感がもてた。デイヴィッド・ニースの演出は簡明で、音楽の妙味をうまく引き出した。(椨 泰幸)
〈写真提供:小沢音楽塾/ヴェローザ・ジャパン 撮影:大窪達治〉

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「Hakuju ギター・フェスタ」8月24日 富ヶ谷Hakuju Hall
 ジャンルを越えて生ギターの魅力を伝えるイヴェント、Hakuju ギター・フェスタ。第3回目は「ラテンアメリカの熱い風」というサブタイトルのもと、8月22日から24日まで開催され、荘村清志、福田進一、池田慎司、ウルグアイ出身のエドゥアルド・フェルナンデス、フルート奏者の中川昌三、弦楽四重奏のクァルテット・エクセルシオ等が登場した。僕が出かけた24日はあいにくの雨で外は寒いほどだったが、パフォーマンスは熱演の連続。なかでも福田とエクセルシオが共演した「ギター五重奏曲」(キューバの作曲家、レオ・ブローウェル作)の荒々しさ、土臭さは圧巻だった。70年代のマッコイ・タイナー(ジャズ・ピアニスト)を思わせる重厚長大な音作りに満腹感を味わった。(原田 和典)
〈写真:三好英輔〉

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「日本フィルハーモニー交響楽団アフタヌーン・シリーズ第6回/ウェルナー・ヒンク(Vn)」9月3日 杉並公会堂大ホール
 この8月に定年でウィーン・フィルを引退したコンサートマスター、ウェルナー・ヒンクをゲスト・コンサートマスターに迎えてのコンサート。最初のレスピーギ:「リュートのための古代舞曲とアリア第3番」ではヒンクが考えた演奏上の演出がこの曲の趣を変えた。次のモーツァルト:「音楽の冗談」では村の楽士の間違った音を楽しげに強調し、休憩を挟んでのモーツァルト:「ヴァイオリン協奏曲第3番」の弾き振りでは、極く繊細なヒンクのソロを、オケ、特に木管の大きすぎる音量が音楽のバランスを大きく崩していたのが残念だった。しかし最後の「ピツィカート・ポルカ」とワルツ「ウィーン気質」、そしてアンコールの2曲でヒンクは身体全体を使い、ウィーン・フィルの音楽する楽しさを日フィルの若い人を中心とした楽員たちに上手く伝授したと言ってもよいだろう。(廣兼 正明)
〈写真提供:財団法人日本フィルハーモニー交響楽団〉

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「マンデルリング・クァルテット/アリオン・アフターヌーン・コンサート」9月13日 武蔵野市民文化会館小ホール
 ドイツ中堅の弦楽四重奏団、「マンデルリング・クァルテット」が2008年日本・韓国コンサートツアーの一環として初来日。この日のプログラムは、シューベルトの「ロザムンデ」とドヴォルザークの「アメリカ」、そしてこの2曲に挟まれてフランスの新進女流オルガニスト、モード・グラットンとの協演によるヘンデルの「オルガン協奏曲第4番ヘ長調Op.4の4」と、一般的には殆ど聴く機会のないモーツァルトの「オルガンと弦楽三重奏のための教会ソナタ第17番ハ長調K.336」の2曲。最初の「ロザムンデ」はドイツのクァルテットにしては歌心に満ちた佳演、そして「アメリカ」ではボヘミアの郷愁を深く感じさせる見事な演奏を聴かせてくれた。しかし中の2曲、とくに通常オーケストラ伴奏のヘンデルの協奏曲ではパイプオルガンという巨大な音にクァルテットの音が埋没してしまったのは残念。(廣兼 正明)

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「新国立劇場公演《リゴレット》」10月25日〜11月3日(4回公演)新国立劇場オペラ劇場
 新国立劇場のオペラ、今シーズン第2弾は、ヴェルディの名作「リゴレット」。2000年に制作された、故アルベルト・ファッシーニのプロダクションによる上演だ。イタリアならではの伝統美を生かした舞台は、「リゴレット」ファンならずとも楽しめる。マルセロ・アルバレスら名歌手が歌ってきたプロダクションに今回登場するのは、抜群の美声と完璧なテクニックを誇るアニック・マッシス(ソプラノ、ジルダ役)、ヴェルディ・バリトンとして世界中で活躍しているラード・アタネッリ(バリトン、リゴレット役)、ウィーンを中心に旋風を巻き起こしているシャルヴァ・ムケリア(テノール、マントヴァ公役)などそうそうたる顔ぶれ。活気あふれるイタリア・オペラには定評のある、ダニエレ・カッレガーリの指揮も大いに楽しみだ。
問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
URL:http://www.nnt.jac.go.jp/ (K)
〈写真:三枝近志、提供:新国立劇場〉


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「エルヴェ・ニケ指揮、ル・コンセール・スピリテュエル/ヘンデル「水上の音楽」ほか
10月28日 東京オペラシティ・コンサートホール

 来年は、ヘンデル没後250年のヘンデル・イヤー。それに先駆けて、ヘンデル当時の楽器をすべて再現した楽団が、「水上の音楽」をはじめとするオーケストラ名曲を上演する。楽団は、フランス生まれの古楽指揮者、エルヴェ・ニケと、彼が創設したフランスでも有数のバロック・オーケストラ、「ル・コンセール・スピリテュエル」。およそ100人の大オーケストラが、当時そのままに、音律の調整を行わずに音の塊を叩きつける。人によっては顔をしかめるかもしれないこの音響こそ、ヘンデルの考えた音響だったそう。ぜひ生で体験してみたい。
問い合わせ:東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999
URL:http://www.operacity.jp/ (K)

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「サンクトペテルブルクフィルハーモニー交響楽団」 11月1、2日午後2時 ザ・シンフォニーホール
 同フィル音楽監督ユーリ・テミルカーノフの指揮、デニス・マツーエフのピアノでチャイコフスキー作品を2日間にわたり演奏する。初日は交響曲第4番、同5番、2日目はピアノ協奏曲第1番、交響曲第6番「悲愴」。同フィルは1802年設立され、ロシアで古い歴史を誇る。ムラビンスキーが50年間君臨した後を受けて、1988年からテミルカーノフが指揮者に就任した。マツーエフは第11回チャイコフスキー国際コンクールの覇者。料金は1回券9,000〜18,000円、2回セット券B28,000円、A34,000円。
お問い合わせはザ・シンフォニーホール(06−6453−6000)へ。(T)
〈写真提供;ザ・シンフォニーホール〉

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「ヘンデル・フェスティバル・ジャパン オペラ《タメルラーノ》日本初演」12月6日
浜離宮朝日ホール

 ヘンデル研究家の三澤寿喜氏の主宰のもと、日本におけるヘンデル・ルネッサンスの震源地となっている「ヘンデル・フェスティバル・ジャパン」。上演の機会の少ない大曲を積極的に取り上げているが、今年はヘンデルのイタリア・オペラ絶頂期の傑作《タメルラーノ》が日本初演される。18世紀のオペラ・セリアにしては珍しく、主役のひとりが幕切れで自殺するドラマティックな作品だ。山下牧子、波多野睦美、佐竹由美、牧野正人、辻裕久など、この分野の第一線で活躍する歌手たちが予定されており、ヘンデルの真髄が味わえることだろう。11月15日には、三澤氏らによるプレ・レクチャーも行われる。
問い合わせは朝日ホールチケットセンター 03-3267-9990、ヘンデル・フェスティバル・ジャパン公式HP http://handel-f-j.org/ (K)
〈写真:アンドローニコ役の波多野睦美〉