The John Hartford String Band
MEMORIES OF JOHN(Red Clay/Compass Records RC 7-4539 2)・・・島田耕
快挙である。なんと、日本制作のブルーグラス、オールド・タイム・ミュージック、それもメジャー・レーベルとは縁もゆかりもない関西は宝塚のマイナー・レーベルの自主制作アルバム『THE JOHN HARTFORD STRINGBAND MEMORIES OF JOHN』が2010年第53回グラミー賞ノミ二ー、ベスト・トラディショナル・アルバム部門のトップ5の1枚に選ばれたのである。
この『MEMORIES OF JOHN』は、そのジョンの最晩年を共に過ごしたバンド・メンバーによる追悼盤なのだが、ジョン・ハートフォード・ファンをこれほど悩ましい思いに誘うアルバムも昨今、珍しい。オールド・タイム・ストリング・バンドの演奏から、ブルーグラス、シンガー・ソング・ライターのどちらかと言えば地味な作品まで、その聞きどころの数々を縦横に語り、歌い、演じるストリング・バンドのメンバーとベラ・フレック達ゲスト・ミュージシャンの演奏に煽られて、いますぐジョン本人の歌と演奏を聞き、確認したくてたまらなくなる。ジョンで聞き直したい気持ちと、先を聞きたい気持ちが胸の内でつば競り合いを演じて、なんとも懊悩するほかない快いトリビュート・アルバムなのだ。しかし、なんといっても悪戯心とユーモアにあふれたジョンの世界に対する無条件の敬愛の念が、参加ミュージシャン全員のパフォーマンスに滲み出ているのが素晴らしい。